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勇者の名前は『魔王』でよろしいですか?▼  作者: 毒の徒華
第4章 裏ストーリーをクリアしてください。▼
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容疑者1:ライリー。▼




【メギド 魔王城 食堂】


 私は地下牢から出ると、裏切り者を見つけるために再び動き出した。


 昨日の疲労は取れたものの、頭の中は様々な情報で整理しきれていなかった。


 外にいるであろう白羽根どもを一刻も早く魔王城から追い出したいが、時期魔王の件の話をしたいのであろうし簡単には追い出せそうにない。

 目下は母上の遺体の件だ。


 三神の件も詳細を聞かなければ釈然としない。


 まずは昨日からずっと眠っている蓮花が起きているかどうか確認するため、蓮花の部屋に向かうことにした。


 もし蓮花が起きていれば能力で佐藤の記憶を読み取ることができる。

 そうすれば謎の協力者や母の遺体の行方、そしてダチュラを捕らえたという組織の正体もある程度明らかになるだろう。


 蓮花が駄目ならエレモフィラでもできるだろうか?

 以前、ウツギの件で失敗していたのを考えると蓮花の方が信頼性がある。


 蓮花の部屋の扉を開けると、ゴルゴタが蓮花の隣で眠っているようだった。

 私が扉を開ける音にゴルゴタはすぐに目を覚ましてこちらを見た。

 不機嫌そうに私の方を睨む。


「合図くらいしろ」


 文句を言いながらゴルゴタはゆっくりと身体を起こした。

 まだ眠いのか、ゴルゴタは目を軽くこすっている。

 ゴルゴタはあまり眠らずに過ごしている事が多いが、蓮花が眠っているのを見て自分もたまには寝ようと思ったのかもしれない。


 蓮花はまだ起きておらず、丸まったまま眠っていた。

 ゴルゴタのように音がしたらすぐに起きそうなものだが、蓮花は目覚めない。


「いい加減起こしてもいいだろう。もう十分眠ったはずだ」


 私はゴルゴタに蓮花を起こすように促した。


「…………」


 ゴルゴタは、蓮花にかぶせてあった布団をゆっくりと剥がして、蓮花の顔をのぞき込んだ。

 蓮花の目の周りには、しっかりとクマができていて疲れ切って眠っているのが見えた。


「おーい……蓮花ちゃーん……?」


 ゴルゴタは声をかけながら蓮花を軽く揺すってみたが、蓮花は更に身体を丸めて起きようとしない。

 蓮花は深い眠りの中に落ちていて全く浮上してくる気配がなかった。


「こりゃ無理だな」


 ゴルゴタはそう言って諦めたように布団をかけ直した。


「甘やかしすぎだ」

「たまには休ませてやれよ」

「……昔のお前だったら絶対にそんなことは言わなかった。変わったな、お前」


 以前のゴルゴタであれば蓮花の体調など全く無視して自分の思い通りにさせていただろう。

 ゴルゴタが誰かを思いやるということが未だに信じられない気持ちだ。


 蓮花の記憶のない世界線のゴルゴタを知っている私としては、蓮花がいるだけでこんなに温厚になる事があるだろうか。


「まぁ……ずっと穏やかな気持ちになる事なんざ全くなかったけどよ……三神をぶち殺して今は肩の荷が下りたって感じだぜ。俺様の『死神の咎』もこいつなら剥がせるしなぁ……」


 そうなれば、ゴルゴタも不死ではなくなる。

 ゴルゴタの狂気も『死神の咎』と共に取り去ることができるのだろうか。


 蓮花を起こしたいが、ゴルゴタが蓮花につききりで動けないのは逆に好機かもしれない。


 もし、佐藤の件を知ったらゴルゴタは今度こそ佐藤を殺すだろう。

 もう人間を殺したら面倒になるという制約が、三神が消えたことで一切なくなった。

 ゴルゴタを止めることができないかもしれない。

 佐藤はどうしようもないが、貴重な情報源が消えるのは困る。


 蓮花が起きない以上、ゴルゴタはここから動かない。


 それを好機と考えて私は他の連中を調べることにした。


「他の者を調べる。蓮花が起きたら私に言え」

「はいはい……」

「私は別の者を調べる」


 私は再び、ライリーのことを調べることにした。

 やはりライリーは怪しい。

 『真紅のドレス』の話を切り出したのもライリーだ。


 私は蓮花の部屋を後にして、ライリーの居場所を気配察知で探した。

 ライリーは食堂で何か作っているようだったので、私はそこに向かった。




 ***




 食堂につくと、そこで見たのは2人分の食事を作っているライリーだった。

 料理の腕はそれなりのようで、美味しそうな匂いや見た目をしている。


 私に気づいたライリーは調理を続けながら投げやりに声をかけてきた。


「魔王か、何か分かったのかな?」


 その態度に私は苛立った。

 ライリーはこの状況を他人事のように捉えているかのようだった。


「本当にお前が誰かに手引きして遺体を動かしたのではないだろうな」


 私が疑いを向けると、ライリーは嫌そうな顔をして返事をする。


「私じゃないって言ってるだろう。まだ頭が冴えないようだね」

「お前じゃないにしても、知っている事を全部話せ」

「『真紅のドレス』のことは大したことは知らないよ」


 ライリーは食事の盛り付けられた皿を持って、食堂を出ようとした。


「どこにいくつもりだ」

「蓮花の部屋に食事を運ぶんだよ」

「まだ起きていないぞ」

「起きたらすぐに食事ができるようにしてあげるんだよ。相当疲れてたみたいだから」

「……」


 私は、ライリーを少し泳がせて観察することにした。


 魔道具のピアスも反応していないし、嘘をついていないことだけは分かる。

 だが、どうにも疑いは晴れない。

 何か違和感があれば蓮花の方が気づくだろう。


 ――人間で他に怪しいのは蓮花を除いて、カナン、地下の人間たち、ノエルとその伴侶、アザレアらか……


 ウツギも途中から現れた者であるし、その可能性は十分にある。


 私はまず可能性の低い方のノエルらの話を聞こうとノエルらの部屋に向かった。




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