神父の本気! ゴウエンジャーあらわる!
「私が兎渡さんを救います。少しの間よろしくお願いいたします皆様」
神父が見せた表情は、何時もの緩くニコニコとした顔ではなく、まるで血に飢えた獣のような鋭い眼に固く閉ざした口元、誰が見てもただ事では済まないと即座に理解できる程であった。
落ち込むクルノに閻魔天とコガノエが声をかける。
「妾のせいで済まぬな、クルノよ。しかし、神父が怒らなかった訳を理解するのじゃ」
閻魔天は、兎渡の運命が神父を認めなかったが故に起きたことをクルノに伝えると、直ぐにクルノを連れてコガノエと供に地獄に戻っていった。
「西東よ、すまなかったのぉ、あと、此から神として頑張るのじゃぞ」
其から直ぐに兎渡は意識を取り戻し、一月程で退院する事が決まった。
その間の看病は、白衣の天使よつ葉さんと、うっかり天使の小野君が担当してくれることになった。
実際は小野君が変な気を起こさないようによつ葉さんが見張り役兼、指導と言う形である。
そんな一ヶ月の間に事件は起こった。
次々に十二支が天界送りにされていたのだ。
犯人は神父であり、神の中でも最高ランクの力を余すことなく使い、龍神、白虎王、牛神、蛇王と次々に十二支の元に出向いては戦いを挑み、滅多討ちにして行ったのだ。
天界に送られてきた十二支は皆が、神の逆鱗に触れたと口にした。
そんな神父が兎耳姫を捕まえるのに時間は掛からなかった。
鬱蒼と生い茂る草木に覆われた山の中を必死に逃げる兎耳姫と鶏王。
「なんなのよ! なんなのよ! 何で天獣の私達が神に追われてるのよ!」
「知るか! いいから逃げるぞ! 兎!」
ひたすら、山道を走る二人を神速の足で追う神父。
事実、十二支は、今二人しかいない。
そんな二人の前に真っ赤な瞳が月光に照らされ暗闇の中に立つ神父の姿が眼に入る。
「な、なんでよ! さっきまで後ろに居たじゃないのよ……」
余りの恐怖に腰を抜かす兎耳姫。
「鶏に用はありません……今なら唐揚げにしないであげます……消えてください」
それを聞き一目散に走り出す鶏王。
「薄情ものぉぉぉ!」と叫ぶ兎耳姫。
そんな兎耳姫の耳をぐっと掴む神父。
血走った、真っ赤な瞳が兎耳姫を更に恐怖に陥れる。
「キサマ……十二支にこんな事して只で済むと思うなよ……」
震える声でそう口にする兎耳姫の姿を鼻で笑う神父。
「どうなるか知りたいですね? 誰が相手でも構いません……私は私の好きなモノの為に殺る事を懺悔する気はありませんので!」
更に鋭く冷たい眼を向ける神父の表情と言葉に兎耳姫は絶句した。
「貴女には、今からやって貰いたい事があります……逆らわないで下さいね、逆らうなら他の十二支と違い、魂まで粉々にしますから、そのつもりで」
神父は其から兎耳姫に、干支転生の理と輪廻の契約を破棄させたのだ。
それは兎耳姫を西東同様に不死にする代わりに死ぬことが赦されなくなった瞬間であった。
「この先、貴女は死にません殺されても無理矢理、私に甦生されて、十二支を無限に続ける事になります」
そして、全てが終わると神父が兎耳姫を斬ったのだ。
斬られた兎耳姫が甦生出来るのを確認すると神父は、そのまま天界に帰っていった。
天界に神父が帰り最初にしたのは十二支との話し合いと言う名の脅迫であった。
神父を訴えない代わりに今後、お互いに一切の手出しをしない事で話がまとまる。
それにより神父は無罪となり、一ヶ月間、十二支を切り刻んだ事実は全てなかった事になったのだ。
兎渡は、十二支の転生の輪から解放され、晴れて自由のみになり、神父はその事実に安堵の表情を浮かべた。
退院した兎渡に西東は、神父が兎渡の為に必死に動き回り、寝ている間に御見舞いに来ていた事実を日を見て伝えたのであった。
「西東さん! 御礼を言いたいので神父さんに会わせてもらえませんか」
神父の話をした二日後の事であった。
兎渡がどうしても、神父に御礼がしたいと西東とアコの元を訪ねて来たのだ。
西東とアコが悩んでいると下から笑い声が聞こえてきたのだ。
「アハハ! その悩み、我等、ゴウエンジャーが叶えてしんぜようではないか」
「天がどんなに悪さをしても! 豪快、豪炎、焼きまくり!」
「す、全ての……困った人の為に……我等、燃え上がる豪炎のように……」
「熱い気持ちで人助けをする、人呼んで、ゴウエンジャー! なのじゃ!」
そこには、明らかに分かる仮装にマスクを着けた閻魔天とノリノリのコガノエ、真っ赤な顔をするクルノがポーズをきめて立っていた。
「えっと……皆何してるの……」
西東の質問に変装したクルノが地面に膝を付きながら、頭を抱えて苦悩した。
そんな三人は、取り合えず二回目の決めポーズを取ると西東の質問を無理矢理誤魔化すのであった。




