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新キャラは、即座に斬られる!

 阿部南荘での生活初日の事であった。

 西東とアコは、一番隅の部屋を使うことに決めると、挨拶周りをする事にしたのだ。


 アパートの部屋は全部で八室、二階建てのボロアパートだ。


 挨拶周りをしようとしたの1階に降りて行く。すると凄まじい怒鳴り声が西東とアコの耳に入ってきた。


「アンタ何か大嫌い! 死んじゃえ! この最低男!」


「はいはい、俺に引っ掛かったお前がマヌケなんだよ! じゃあな」


 西東達を横目に一人の男が、アパートの敷地内から出ていった。


 玄関の扉を開けたままに大泣きする女性。


「あの、大丈夫ですか……?」


 西東とアコの存在に気付くとすぐに涙を拭き泣き止んだ女性。


「すみません、大丈夫です。貴方は?」


 そう聞かれ、アパートの所有者と言うのもややこしいので新しい住人だと答え、挨拶をする。


ーー女性の名前は兎渡(とど) 七生(ななみ)年齢は24才。


 兎渡は、男運が全く無い悲劇のヒロインみたいな存在であった。


「私……男運が悪くて、優しそうな人だなって思って付き合っても、直ぐに浮気されちゃうんです……」


 話を聞けば聞くほど、ドン引きしてしまうような男運に苦笑いしか出来ない西東とアコ。


「あ、すみません……初対面の人にこんな話してしまい、本当にすみません」


 名前に偽りなしの小動物の様なしぐさ、西東の目のやり場に困る程の見事な二つの柔らかそうな胸。


 西東がうんうんと頷いている。

 アコは自分の体を見て負けたと自覚する程に見事な者であり、男達が優しくする理由も理解できた。


 他の部屋は留守だったので、挨拶が出来たのは兎渡の部屋のみとなった。


 部屋に戻るなり、アコが西東に包丁を向けた。


「西東……さっき! 兎渡さんの何処をマジマジと見てたの」


「あ、アコ! 誤解だから、うわぁぁぁ!」


「待ちなさい逃げるな! 西東」


 アコの妬きもちに危うく、神様になって初死しそうになる西東。


 そんな時、西東とアコの部屋の扉が叩かれた。


「西東さん。アコ。引っ越し祝いに来ましたよ……」


 それは、神父にケルルロッテ、ダンバル、閻魔天にコガノエとクルノ達であった。


「相変わらず賑やかじゃなぁ? 何を騒いどるのかぇ」


 皆が慌ただしく騒ぐ最中、二階に上がってくる足音。


「あの、さっきは失礼しました!」


…………!


「あの? ええっと……ハロウィンの続きですか?」


 兎渡の目の前には、全身白服のコガノエや、まさに神父と言った格好の神父にチャイナ服に御団子の閻魔天、猫丸出しのダンバルと仮装にしか見えない一団が扉の前に集まっていたからだ。


 そんな驚く姿を見た神父が一言。


「なんて美味しそうなんだ!」


 その一言に一同が固まる。


「こら、神父! キサマそれでも神かぇ! なんと言う、その破廉恥(ハレンチ)な!」


 閻魔天の言葉にケルルロッテが頷く。


「神父様、不潔です! なんと汚らわしい! 聖職者でありながら! 人間をそのような目で見るなんて!」


 神父は、兎渡の手を取り、見つめていた。

 兎渡も、イケメンの神父に見詰められてうっとりとしている。


「いきなりで、すみません。味見しても構いませんか?」

 そう口にする神父に兎渡が目を少しそらしながら、ゆっくりと頷いた。


 神父の手がゆっくりと兎渡の手から下に移動する。


 そして、兎渡の手に下げられていたバスケットに手が伸びる。


「最高です! こんなに甘くて美味しいチョコラケーキは食べた事ありません!」


 神父のややこしい発言と行動に我慢の限界だった閻魔天がクルノに一言。


「神父にお仕置きじゃ!」その途端容赦なく神父に斬りかかるクルノ。


 しかし、予想外の展開が起きたのだ。

 激甘チョコラを食べている隙だらけの神父を庇い兎渡が神父を庇ったのだ。


 一同が騒然とする。

 クルノの一撃が兎渡に当たり、その場に倒れたのだ。


「な、なんだと!」クルノは驚いていた。

 兎渡が神父を庇ったことではなく、クルノの攻撃が人間に当たった事実に驚いたのだ。


 本来ならば、生ある者にクルノの攻撃は当たらないように力を調整されている。


「なんと? クルノの攻撃が当たると言うことは其奴、只の人間ではないな?」


 直ぐに天界の病院に運ばれた兎渡の検査結果は驚くべきものであった。


 兎渡は、十二支の後がまだったのだ。


 十二支も天獣とされ、無くてはならない存在であり、その兎の後がまこそ、兎渡であった。


 兎渡の家は没落した旧家であった。

 元来、兎さ渡りとして、十二支の生まれ変わりが産まれるとされた一族であった。

 その為、血統は天に定められ、好きな者ではなく、血が優秀な者と添い遂げねばならなくなっていたのだ。其れこそが兎渡の男運の悪さの原因であった。


 予想外の事実に皆が驚くも、神父は冷静だった。


 そして、更なる予想外の展開を引き起こそうとしていた。

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