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出雲で探す!マイホーム?

「有り得ないよなぁ……」

「有り得ないですよね……」


 そう言いながらため息混じり話す天界人の姿が天界の至る所で目撃されるようになっていた。


 原因は、西東の存在であった。

 西東は一年足らずであっという間に神になった異端の神として天界中にその名を轟かせる事となっていた。


 西東の存在は天界人の中でカリスマに成っていたのだ。


「きっと、神様になったら、幸せなんだろうなぁ、ハァ……なんかズルいよな、俺なんて天鬼をもう10年はしてるのにさ」


「いやいや、だって西東さんてさ? いきなり試験で合格者ゼロのダンジョンクリアしたんだろ? レベルが違うから」


「だよなぁ……やっぱり神様になる人は違うんだよなぁ……」


「「ハァ……いいなぁ」」といった具合に若き神を目指す天界人の憧れとなっていた。


 しかし、現実は違っていた……


 西東は神になり、出雲の地に縛られたが自宅に空間を繋ぐ事で家の外には出れないが、自宅を手放さなくてよくなっていた。

 そんな西東は、アコと毎日買い物や散歩などを楽しんでいた。


「まさか……毎日、神社四ヶ所に町を一周しないといけないなんて、意外にハードだなぁ」


 西東はスサノヲの名を継いだ後、五智如来の元に呼び出されていたのだ。


 五智如来は、西東に一定の地域を毎日歩く事で町に繁栄をもたらすと言い、その範囲を歩くように天命を出したのだ。


「いいじゃない、歩くだけでお仕置きは無しなのよ? しかも! 今までより給金がグッと上がってるし! このブラックな時代に、こんなにホワイトな仕事ないわよ」


 アコは出雲に来てから少し性格が穏やかになった。

 毎日返り血を浴びて真っ赤な姿だったアコは見る影もなかった。そんなアコは毎日笑っていた。


 幾ら空間を繋ぐと言っても、此方でも家は必要になる。

 草むらに空間を繋ぐ訳にはいかないからだ。


 出雲で最初にした事それは、不動産屋に行くことであった。


「いらっしゃいませ。本日は出雲不動産にようこそいらっしゃいました。どの様な物件をお探しですか?」


 クルクルひげが印象的なスーツの店員が西東とアコの担当になり、次々に物件を紹介していく。


「此方のアパートでしたら、駅から近いですし便利ですよ!」


 西東は少し悩んだが、オススメだとクルクル髭が言うので其処に決める事にした。


「少し待ってて貰えますか?」


 西東は直ぐに天界の給金所に向かうとお金をおろして不動産屋に舞い戻った。


「御待たせしました」と西東が言うとクルクル髭が契約書を作成し待っていた。


 アコはクルクル髭が出したゴーラを丁度飲み干し終わった様子だった。


「御待ちしておりました! 早速説明をさせていただきます」とクルクル髭が上機嫌に話始める。


「あ、大丈夫です。それより? いくらですかね?」


 西東の言葉にクルクル髭が少しムッとする。


「いえ、御客様、説明を聞いていただかないとトラブルなどがあっては不味いので」


「あ、管理は不動産屋さんに任せますよ。僕も余り知識がある訳じゃないので」


 更にムッとするクルクル髭。


「取り合えず、今、五千万この中にあるので確認してください。あと、やはり値段を先に知りたいのですが?」


「ひぇぇぇぇ!」と口に出し目が飛び出しそうになるクルクル髭。


 西東はアパートを借りるのではなく、買うと言ったのだ。


 アパートの持ち主の老夫婦に直ぐにクルクル髭が電話をすると、20分もしないうちに老夫婦が不動産屋に現れた。


 話は直ぐにまとまり、西東はアパートのオーナーになったのだ。


 アパートの名前は『阿部南荘(あべみなみそう)』である。


「西東……これって? 『あぶなそう』に読めないかな?」


「アコ、そんな事、言ったらダメだよ」


 老夫婦の名前は『阿部』そして、他に『東』『西』『北』と幾つかの物件を持っていたのだ。


 西東達の出雲でのスタートは、『あぶなそう』から始まるのであった。

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