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新たなる新天地へ。

「お前が輝王千帝(きおうせんてい)だな?」


 西東に向かってそう訪ねるその人物にアコが怒鳴り声をあげる。


「いきなり何なのよ! 大体、西東は西東よ、ワケわからない名前で勘違いして可笑しいんじゃないの!」


 アコは西東が天仙界にて、齊天大聖孫悟空から、輝王千帝の名を与えられた事実を知らないでいた。


「お前が、輝王千帝の(つが)いか」


「アンタ、人をバカにしてるでしょ! 番いってのは動物に使う言葉なんだからね!」


 激怒するアコを見て笑うその人物。


「悪かったね。言葉を言い間違えたよ、君が輝王千帝の妻の前切アコだね?」


「な、ななな!」


 妻と言う言葉に動揺するアコを見て更に笑う。


「僕は、 月読命ツクヨミだよ。宜しくね。早速だがテストを受けてもらうよ……輝王千帝」


「テスト?」と西東が口にすると月読命は、月を指差した。


「簡単さ、月よりも君が輝ければテストは合格。もしダメなら、神殺しで捕まえちゃいます」


 そう言うと西東とアコを見て目を細めニヤリと微笑む月読命。


「わかった、でも、出来たなら本当に手を出さないんだな!」


「ええ、僕の父と母に誓いましょう」


 西東は月読命の言葉を聞き頷くと、全身の気の流れを掌に集中させていく、更に仙力と天気を掛け合わせて体内でそれを圧縮させ、掌にそれを留めさせる為に小さな四角い結界を造り出すとその中に一気に力を流し込んでいく。


 次第に輝きが増していく、その光景に月読命は、納得したかのように見詰め、輝きが頂点に達した瞬間に西東の手の上から結界を自身の元に移動させたのだ。


「見事と認めますよ。輝王千帝」


 そう言うと西東の結界の中に溜められた輝きを一つの勾玉に封じ込めたのであった。


「これをその首にかけてる数珠に着けなさい輝王千帝」


 西東は渡された勾玉を手にするとその言葉に逆らうことが出来なくなっていた。


『月夜の月読命の言葉に逆らえる者無し』月を読むとされる月読命の言葉のままに首の数珠に勾玉を着けた西東の体が輝き光の衣が全身を包み込むと其れは神服になり、その姿はスサノヲの物そっくりに変わっていた。


「これは、いったい」


 驚く西東は自分の姿を隅々まで確りと確認する。


「元来、神は朽ちれば新な神として転生する、しかし、僕の弟スサノヲは荒神になり、更に復活すら赦されなくなった。そんなスサノヲの最後の頼みは、輝王千帝西東大輝のスサノヲへの転神だったのさ、おめでとう輝王千帝、君に天命が下ったんだ」


 西東への五智如来からの天命、それこそが、スサノヲの願いであったスサノヲを継ぐ事であり、五智如来はそのスサノヲの最後の願いを慈悲の心で受け入れたのだ。


西東(せいとう)輝王千帝乃(きおうせんていの)大須佐之男命(だいスサノヲのみこと)』となるのであった。


「今より、出雲の地に集まるスサノヲへの想いは貴方が受け継ぐのです。確りと頼みましたよ。義理とは言え、僕の弟になったんだからね。西東輝王千帝乃大須佐之男命。あと、名前が長すぎて笑いそうだよ、アハハ」


 そう言い残し、月明かりに姿を消した月読命。


「嘘でしょ……なんで! なんで西東だけ神様になるのよ。私は!」


 アコは納得いかない様子であった。

 そんなアコを連れて家に帰ろうとすると、西東の体が急に重くなり、出雲の地から一歩も外に出れなくなっていたのだ。


 西東は、出雲の地に神として縛られた事が原因であり、その瞬間にスサノヲが語っていた言葉の意味を理解した。


 クシナダ姫は、出雲にはいないのだ、関東地方に奉られており、スサノヲは逢うことすら叶わなかったのだ。


 その事実に気づいた瞬間、西東はアコの口を塞いだ。


「んんん?んーーー!」


 アコが落ち着くと手を離した西東、そんな西東の頭をポカポカと叩くアコ。


「なにするのよ! 酷いじゃない」


「アコ……ごめん、一つお願いがあるんだ……」


 真剣な表情でそう口にする西東の顔をじっと見詰めるアコ。


「お願いってなによ?」


 西東は、悩んでいた……アコの神になると言う夢を諦めてほしいと口にするべきなのか……寧ろ黙っていた方がアコの為なのではないかとすら考えていた。


「いや、アコ……神様になりたいかい?」


「なによ、当然じゃない? 神様になるのは天使全員の目標よ」


 そう楽しそうに話すアコに西東はそれ以上を語ることが出来なかった。


「でもね、今は神様より、成りたいものがあるんだ」


 その言葉は西東の心を打ち抜いた。

「其れは……西東のお嫁さん……なんちゃって、神様になった西東には今の私じゃ不釣り合いだよね、一気に遠くに行っちゃうんだもん……困っちゃうよなぁ」


「アコ! 神に成らないでくれ……側にずっと居て欲しいんだ!」


 西東は、出雲の地に自分が縛られた事実とアコが神に成れば離れ離れになる事実を伝えたのだ。


「なら……仕方ないね……さよならしないとね……」


 アコは下を向きながらそう呟いた。


 ゆっくりと上を向くアコ。


「瓶ゴーラともあの家とも御別れなのは寂しいけど、西東と居るって決めたから」


 アコはそう言うとニッコリと西東に笑みを浮かべる。


 西東とアコは、出雲での新しい生活を開始する。其れは二人にとって本当の意味で新天地での生活を歩むと言うことであった。

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