出雲にて1
天照大神の元にひた走る西東。
そんな西東目掛け射ち放たれた矢が次々に西東に襲い掛かる。
西東を襲ったのは、サトリ三姉妹であった。
「お前を、此処より先には行かせぬ! 我らが主の命に背くことを許したまえ、神名の名の元に力を開眼せり」
三姉妹が光に包まれると見た目から姿がかわり、着物を羽織った三人の美女が西東の前に姿を現した。
「我が本当の名は、田心姫」
「我、湍津姫」
「我は、市杵嶋姫」
本来の姿を現した三姉妹は、全身に神々しいオーラを纏い、更に冷たき深海のような眼で西東を睨み付けた。
「やはり、天照大神とスサノヲはぐるなんだな!」
その言葉に呆れた表情を浮かべる三姉妹。
「天照大神様は、確かにスサノヲ様の御姉様にあらせられます。しかし、此度の一件には無関係に御座います。お忘れなきよう」
そう語る田心姫。
そんな時、天から大声が鳴り響いた。
「やいやいやいやい! 天下にアザなす、齊天の誰が呼んだか、大! 大聖。天が御免と頭をたれる大仙人! 齊天大聖孫悟空! 此処に推参!」
天から降り立ったのは、孫悟空、猪八戒、沙悟浄の三人であった。
「西東大輝は我らが大切で弟子でな! そんな弟子に手を出す悪い虫を排除しに来てやった!」
そう語る孫悟空を睨み付ける三姉妹、そんな最中、玉龍が西東を背に乗せると猛スピードで飛び立っていく。
西東を追いかけようとする三姉妹を囲むようにして、孫悟空達が武器を構える。
「貴様ら! 神に勝てると思うてか!」
「何せ、釈迦にすら無礼を働く悪仙な者でな! 神だか紙だか知らねえが、臼ぺらい御託並べてねえで、掛かってきな」
三姉妹と孫悟空とが睨み合う中、西東と玉龍は、天照大神のいる神殿にたどり着いていた。
中に入ると天照大神が西東を待ち構えていた。
「来るのはわかっていました。西東よ、ソナタの知りたいことも理解している。此度の一件に私の力が用いられた事実深く詫びねばならない」
天照大神は、自身が操られてしまっていた事、更にスサノヲに二人の場所を操られている中で語った事を謝罪したのだ。
そして、天照大神はスサノヲがアコと西東の両名を求めていると語ったのだ。
西東は天照大神から、スサノヲの居場所の大体の位置を聞くと直ぐに飛び出していった。
西東が向かう先は出雲、つまりは下界であり、スサノヲが追放されたて初めて降り立った地でもある。
スサノヲは山の上にある巨大な樹木の上に座り酒を飲んでいた。
「待ちくたびれたぞ。西東大輝よ、貴様は酒は飲めるのか?」
「そんな事はどうでもいい! アコは何処だ!」
スサノヲは笑みを浮かべながら酒を飲み干すと西東をグッと睨み付けた。
「やはり、大蛇のようには、いかぬか、西東よ! 惚れた女の為に命をかける覚悟はあるか!」
そう語るとスサノヲの目は、闇夜に輝く獣のようであった。
其処からは互いに無言のままであり、西東はスサノヲの動作一つ一つに集中していた。
スサノヲを知る者ならば、誰もが真っ向勝負は避けたいと思うであろう、実際に西東の前に立つスサノヲは、体格がよく、腕は西東の太股よりも大きく逞しい。
そんな沈黙を破ったのはスサノヲであった。
「お前は、あの女を抱いたのか?」
いきなりの質問に西東が動揺する。
「どうなんだ? まさかもう、世継ぎが生まれているのか?」
「そんな、子供なんて! それにお前にそんな事関係ないだろ!」
西東は質問に動揺する余り次第に近づくスサノヲに間合いをゆるしてしまっていたのだ。
「確かに、俺には関係ないかもな! だが、子がいないならよかった。親と子が離れるほど辛く悲しい事はないからな!」
スサノヲの豪快な剣が西東に襲い掛かり、咄嗟に造った結界を易々と切り裂き、西東の片腕を剣が掠めた。
「今のは危なかったな? 危うく腕が無くなってしまうぞ、西東よ」
まるで遊んでいるように西東に剣を連打するスサノヲ。
西東の結界を次々に切り裂く様はまさに英雄スサノヲと認めざる終えない状況であった。




