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約束と大切な思い

 西東の結界を破ろうと薙刀を振るうケルルロッテ。


 そんなケルルロッテを嘲笑うように簡単に薙刀をガードする西東。

 西東は、結界を自身の手に造り出すと其れを盾のように使い、更に片手に握ったサバイバルナイフにも結界を使い刃先を長剣程の長さにする。


 結界師がお仕置き人を前に圧倒するなど有り得ないと考えていたケルルロッテの奢りは簡単に打ち砕かれた。


「西東さん、貴方は誰の為に戦ってるかわかってますの!」


「僕は、アコ(・・・)の為に戦ってるんだ」


 真実の見えていない西東との会話が無駄で有ることを悟るとケルルロッテが薙刀の持ち方を替えた。

 真っ直ぐに握られていた薙刀の刃先が地面に向けられ斜めの状態になる。


「もう、手加減は致しません。西東大輝、貴方を切り刻み、天界に強制転送致します!」


 ケルルロッテは、西東に向けて一気に切りつけようと走り込む。


 西東の結界の盾が攻撃をガードする為に動いた瞬間、ケルルロッテが更に地面を踏みしめる。

 薙刀の刃先が西東の盾を交わし、真っ直ぐに西東の心臓目掛けて突き出される。


「獲ったぁぁぁ!」


 ケルルロッテの叫び声、しかし、薙刀の刃先が突き刺さる事無く停止する。


「な、何故!」

 ケルルロッテは薙刀を全力で突き出したにも関わらず、その刃は西東に傷一つ付けられなかった。


「危ないなぁ、ケルルロッテ……僕が結界師じゃなかったら死んでたよ」


 そう言い笑う西東。


 サトラセの相手をしていた、風伯と鳴神も驚く程に西東は強くなっていたのだ。


「さあ、もう終わりにしようか? 僕は今忙しいんだ」


 西東のナイフがケルルロッテの方に向けて突き立てられようとしていた。


「く……っ無念だわ」


「またね……ケルルロッテ」


 西東の冷たい言葉がケルルロッテの耳に響いた。


「待ちなさい西東大輝ぃぃいいい!!」


 天高くから響く声、その瞬間ケルルロッテが薙刀の柄を西東の胸に着けたまま天に向けた。


「眼を覚ませ! この浮気者ガァァァ!」


 天高くから現れたのは、前切アコであり、ケルルロッテの薙刀の柄を目掛けて飛んでいくとそのまま、薙刀の柄を蹴り西東の心臓を貫いたのだ。


「ガハッ……!」


 心臓に突き刺さる薙刀、更に着地したアコがチェーンソーで西東の両足を叩ききる。


「うわあぁぁぁ!!」


「西東は、足に結界を貼り忘れる癖があるのは私が一番知ってるんだから!」


 そこからは一方的であった。

 痛みで結界が解け、動く事も儘ならない西東をゆっくりと切断し始めるアコ。

 その光景にサトラセを含めて全員の背筋に悪寒が走る。


 西東だった物は、天界に転移させられ、アコの怒りの矛先がサトラセへと移動する。


「よくも西東を殺ってくれたわね! 絶対に赦さないから」


「いや、殺ったのアンタだし……!」


 そんなサトラセの言葉に耳を貸さないアコがチェーンソー片手にサトラセに襲い掛かる逃げようと焦ったサトラセの両手を風伯と鳴神が左右に掴み引っ張る。


「ちょっとマジに卑怯じゃない! 天使がそれでいいわけ!」


「無知な貴女に一つ教えてあげるわ! いつだって正義の味方は5体1なのよぉぉぉ!!」


「そんなのって! いじめよぉぉぉ!」


 サトラセの体を縦に切り裂いたアコが笑う。


「正義は勝つ!」


 天界に送られた西東は、直ぐに精密検査を受ける事になった。


 実際に西東の記憶は錯乱しており、最初に目覚めた際に、アコの存在すら認識できないほど、精神に異常をきたしていた。


 アコは、西東の記憶が、戻るまで悪い部分をチェーンソーを使い何度も切断し続けた。


 チェーンソーの体を切り裂く感覚とチェーンソーの音が西東の中にあった記憶を呼び覚ましたのだ。


「目が覚めた、西東、私がわかる?」


「アコ?」


「良かった、西東のバカ……浮気者……」


「なんの話? 僕にはアコしかいないよ……」


「知ってるわよ……西東、手を出して……」


「うん?」


 西東の手を握るアコ。


「約束だもんね……指切り……大好きよ西東」


「へ?……アコ……僕は何も! 『バチンッ』ギャアアアア」


 アコは約束を守り通したのだった。


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