西東の目に写る偽り
西東の異変に天界が気づいたのは、十日程が過ぎて天界に餓死したお仕置きリスト者が届いたことから、調査が開始された。
割り振られたお仕置きリストの中から該当者を探し、お仕置きリストの送り先を調べる天界人は直ぐに『西東 大輝』の名前に辿り着いた。
天界側は直ぐに西東を天界に呼び話を聞こうと試みたが既に西東は家から姿を消していた。
家の中にはまるで生活感がなく、一週間以上、西東が帰っていない事は、食べ掛けのまま放置されたコンビニ弁当の期限から推測された。
天界の天御中主神は、西東の調査を担当するように風伯と鳴神に指示をだした。
そんな二人のサポート役として、ケルルロッテが同伴してた。
「変ですね、いくら何でも、西東さんらしくありません」
ケルルロッテは西東の行動に不信感を抱いていた。
アコが消えてからの三日程は、間違いなく生活感があったからである。
ケルルロッテが冷蔵庫を開くと期限切れの弁当が丸々残されていた。
「一旦、コンビニに向かいましょう、西東さんがいつから来てないのか、わかるかも知れません」
その言葉に風伯と鳴神が頷いた。
ケルルロッテ達がコンビニに到着した時、反対側に向かって歩く西東の姿があった。
「あれは西東さん……追います!」
ケルルロッテが一人走りだし、その後を風伯と鳴神が追いかける。
西東が角を曲がった直ぐ後に同じように角を曲がったケルルロッテは、自分の目の前の光景に動揺した。
そこには、西東と薄紫の髪の女が一緒にいた。
「やあ、ケルルロッテ……どうしたの?」
「西東さん! 貴方に天界が話を聞きたいと言っています! 直ぐに天界に来てください」
ケルルロッテがそう口にすると薄紫の女の方が口を開いた。
「西東、早く行こうよ、アンナ娘ほっといて、私といようよ」
薄紫の女が西東にそう口にすると、西東の目が虚ろになり、次第に雰囲気が変わっていく。
「そうだね、アコ。ケルルロッテ! 今度にしてくれ今はいけないんだ」
西東は、女をアコと呼んでいる事実に、ケルルロッテが薙刀を取りだし女に向けて刃を向けた。
それと同時に姿を後ろから姿を現した風伯と鳴神は状況が理解できずに困惑した。
「貴女は誰ですか? 大人しく答えて下さい!」
ケルルロッテの言葉に薄紫の女が西東の耳元で何かを呟いた。
西東が下を向いたまま動きを止める。
「まったくお邪魔だね? 私の計画に邪魔が入るのマジに勘弁なんですけどぉ?」
「質問に答えなさい! 貴女は何者ですか」
薄紫の女が西東を見て笑って見せる。
「私は、西東ちゃんと前では、前切アコなんだよ、わかるかいケルルロッテちゃん?」
「どういう事だ!」
ケルルロッテの質問にタメ息を吐きながら、首を左右にふる薄紫の女がケルルロッテに向けて喋り出した。
「私は『サトラセ』。私の思うままに相手の心も思考も好きな姿に見せられるのさ! 今の西東ちゃんは、私の為なら神も殺す最高の殺神鬼ちゃんになったのよ」
そう語るサトラセを前に薙刀を構えたケルルロッテ。
「つまり、西東さんを操って、何かを仕様としてる訳ですね!」
「はぁ、あんたさ? マジに友達いないでしょ? 敵なんだからグダグダ言ってないで殺り合おうよ!」
ケルルロッテの薙刀がサトラセに襲い掛かろうとした瞬間、西東の結界がサトラセを防御した。
「な、西東……さん、邪魔はしないで下さい!」
「ケルルロッテ……アコに手を出すな……」
ケルルロッテの前に立ちはだかる西東の目は既に現実が見えているようにはケルルロッテには見えず、更にサトラセをアコと呼ぶ西東への怒りがケルルロッテの中に沸き上がるのであった。




