ズレて回る歯車
試験官も終わり、西東とアコは、またお仕置き人の仕事に戻り平穏な生活を送っていた。
「ギャアァァァイダイ! 腕が俺の腕が」
「西東、最近さぁ、平和すぎない!」
街の不良にチェーンソーを斬りつけながら呟くアコ。
「平和が一番だと思うけどな?」
最近のアコは危険に身を置きすぎていて感覚が麻痺していた。
その為、お仕置きを幾ら行ってもアコは満足しなくなっていた。
そんな拓武とアコの元にケルルロッテが訪ねて来た。
ケルルロッテは天界からの手紙を西東とアコに届けに来たのだった。
手紙には、新武大帝の処分が書かれていた。
新武大帝は、天界から地上に追放となり、更に力の一部を天神界へと返上することに決まったと言う内容であった。
更にアコ宛にもう一通手紙が渡される。
アコに天命が下ったのだ。
内容は『前切アコを神軍において、神兵の部隊長に任命する。天命であり心するべし、五智如来』と書かれた、一方的な命令であった。
「はぁ! 何で私なのよ!」
怒りの矛先を向けるアコに困るケルルロッテ。
「知らないわよ! 其れに私だって手紙の内容は知らなかったんだから! 八つ当たりはやめて」
ケルルロッテはそう言うと天界へと引き上げていった。
手元に残された手紙を握り潰すアコ。
「私は行かないからね! 西東なんとかしてよ」
いきなりのアコの泣き出しそうな顔に困り果てる西東。
「取り合えず、天界に行こうよ、神父さんと天御中主神さんに相談してみよ?」
「何とかなるかな……」
「何もしないよりは、ましかな?」
落ち込むアコを連れて西東は天界へと向かうのであった。
天界に着いた二人は、慌ただしく動き回る天界人の姿を見て唖然とした。
天界は、新たな神軍の完成と人事異動の連続で猫の手も借りたいような忙しさになっていた。
そんな状況に現れた西東とアコの相手を出来る人員は居なかったのである。
状況を理解しつつ、神父の元に向かう西東とアコ。
しかし、神父も五智如来の命令には逆らえないと口にしたのだ。
「申し訳ないです、アコの力になりたいですが、五智如来様の天命をどうにかする力は私にはありません」
分かっていた事であったが、神父の口から聞かされた事実に愕然とするアコ。
そのまま、神父に挨拶を済ませ、天御中主神の元に足を運んだが、答えは一緒であった。
一度下界に戻った西東とアコ。
そして、アコが顔をあげた。
「西東、私、行くよ。仕方無いよね……天命だし、天神界からなんて寧ろ有り難い事だよね……」
アコの言葉に西東の心が潰されるように痛くなる。
「アコ、僕は!」
「駄目よ、天界において、天命から逃れる術はないわ……」
悲しそうに語るアコ。
それから二日して、アコが神軍からの迎え人に連れられて西東に見送られる事なく、西東の元を後にした。
アコは西東との別れを哀しまないように西東の飲物に薬を入れていたのだ。
ただ、優しく暖かい夢が見られるようにと泣きながらグラスに入れた一粒の丸薬、西東が薬の効力が切れ、目覚めたのは日が傾きかけた夕方の事であり、テーブルには、二人の御揃いのグラスとアコの手作りのご飯と、手紙が残されていた。
慌てて手紙を読む西東の目には涙が浮かんでいた。
『西東へ。
勝手に居なくなってごめんなさい。
やっぱり、泣いちゃうと思うんだよね。
だからズルいけど手紙にしました。
私は西東をいっぱい傷つけたと今になって反省してます。
もっと色んな事がしたかったし、クリスマスとかも西東と過ごしたかった。
私ね、今凄く幸せなんだよ。
西東と私なら何でもやれるって感じたから、だから離れたくない、泣かせたくない、笑いたい。
私は頑張って西東と一緒にいる日常を取り戻すからね。
浮気とかしたら、千回切り刻むから、浮気はダメだよ。
大輝ずっと愛してます。前切 アコ』
「ばか……勝手に行くなよ……僕にもなんか言わせてよ、アコ……」
西東とアコの新たな歯車が動き出し始めたのであった。




