西東とアコが試験官4
アコの試験会場は直ぐ側にあった。
大型の試験をやる際には、試験官同士の連携も大切に為るためだとダンバルには、説明された。
「アコのやつ上手くやってるかな?」
心配する西東に、ダンバルが「寧ろ大丈夫だろ?」と口にする。
「それもそうだね、アコだからね」
西東が笑みを浮かべてアコの試験会場に入っていく。
其処には、真っ赤に染まったアコの姿があり、西東とダンバルは、驚愕する事となった。
「さ、西東……何これ?」
焦るダンバルの声が震える。
「地獄絵図……」
悩みながらも西東がそう口にした。
アコの手に握られた普段より遥かに巨大なチェーンソー、更に周りに切り刻まれた受験者達が転がる光景は地獄絵図としか言えなかった。
「あ、西東ーー! 見に来てくれたの」
真っ赤に染まったアコが嬉しそうに手を振っている。
「どうやら、アコは無事みたいだな、西東」
「うん、アコは無事みたいだね」
そんな、隙の出来たアコに向かって攻撃を仕掛けにいく受験者達。
アコは既にチェーンソーの持ち方を変えていることに受験者は気づいていない。
「ああぁ、可愛そうに、あれ凄くいたいんだよね」
西東がそう口にした瞬間、アコが振り向き様に受験者を叩ききった。
「ギャアァァァ」
「グワァァァ」
「ひぎゃぁぁぁ」
まるで相手にならない受験者達、アコに飛び散る血が更にアコを真っ赤にしていく。
「アコォォォ! やりすぎだよ」
西東が声をあらげる。
「大丈夫よ! 試験前に「海神様からの許可とってあるから」
アコは更に激しくチェーンソーを振り回し、受験者達を凪ぎ払っていく。
ーー海神綿津見
海の神霊であり日本史における神。
怒れば嵐を巻き起こし笑えば嵐を打ち消すとされる、祭り事が好きな神霊である。
ーー
「何でそんな神様が……」
西東は、悩んだが答えがでない。
そんな西東の頭には、天御中主神の姿が浮かんでいたが繋がりがまったくよめなかった。
そんな西東に御構い無く斬り続けるアコの試験が終了した。
アコに真っ向うから向かっていった者が合格となり、蘇生が間に合わず、試験終了と同時に神父が会場に駆け付ける事態にまで、発展していた。
西東の試験合格者は、百人弱という結果にになり、アコの方は切った者全員が合格という結果になった。
『スマイルスプラッターのアコ』と言う呼び名受験者達に広まり、この日を境に定着した。
全力スマイルからは想像できない、容赦のない攻撃と其れに加わるチェーンソーの重圧なモーター音。
助けを求めても笑いながら相手を磨り潰すように戦うその姿を見た目の当たりにした全員にトラウマを植え付ける結果となった。
最後に西東がアコに質問をする。
「アコ? 海の神霊の綿津見様とは、どういう関係なんだ、やっぱり天御中主神の繋がり?」
「ああ、海神様は、チェーンソー愛好会の同志だけど?」
西東は自分がまだ知らない世界がある事を知るのであった。




