西東とアコが試験官3
西東のダンジョンには、敵は居ない。
簡単な落とし穴や、滑り台のような罠ばかりをあえて配置していた。
ランダムに罠ばかりの部屋と何もない部屋を造り、上がる部屋と下がる部屋を交互に創られたダンジョンは、平衡感覚を失うように出来ていた。
ダンバルの力で創られたダンジョンに西東の知恵が加わり、簡単な物ほど人を惑わせると言う心理をついたダンジョンが出来上がっていた。
ーー
「西東? ゴール出来るのは何れくらいの予想なんだ」
そうダンバルに聞かれてダンジョン内を見る西東。
「今のままなら? いないかな」
「はぁ! お前また最悪記録を塗り替える気か」
西東の言葉に取り乱すダンバル。
「違うから、僕は、あくまでゴール出来るのはいないって行ったのさ」
西東はダンジョンの全体図を取り出した。
「皆、上に向かうように移動してるから、入り口に戻らない限りゴールは、無理だと思う、その為に落とし穴と滑り台の到着点を入り口にしたけど、寧ろ心は折れるだろうね?」
涼しい顔でそう語る西東にダンバルは、驚愕した。
「こんな奴に、試験官をさせるなんて、無茶苦茶だ」
ーー
ダンジョン内では、既に簡単な歪み合いが始まっていた。
「何処まで居きゃあ出口があんだよ!」
「落ち着いて、今考えてるから、それにこの試験は、ダンジョンマスターの西東さんが考えたのよ? 闇雲に進めば更に迷うわ」
「それは、わかってんだ。だが同じ部屋をぐるぐる回ってるようで気分が悪いんだ。ダンジョンマスター西東を甘く見てたぜ」
ダンジョン内の男女の会話に西東が驚いた。
西東は、ダンバルのダンジョンをクリアした唯一の存在であり、『ダンジョンマスター』と呼ばれていたのだ。
今回の試験を受けに来た者達も其なりの実力者だが、西東の仕掛けた心理を理解するか否かが試験の分かれ目になる。
受験者達もそれに気付き始めたのだ。
たが、最後まで合格者は出ないままに試験時間が終了した。
試験終了後に西東が全員を集めると合格者はの発表がされた。
皆が下を向き頭の中で『合格者0』の言葉を想像しているであろう事は西東とダンバルにも予想が出来ていた。
「合格者は、最後までダンジョン内にいた者全員とする! 不合格者は直ぐに前切アコ試験官の会場に急いで欲しい。アコ試験官が実力テストをしてくれる。其処で合格すれば合格だ、以上」
西東の言葉な会場がざわついた。
試験を不合になった者は僅かであり、殆んどの受験者が最後までダンジョンの中に居たからであった。
合格者はダンバルに誘導されて会場内に創られたホールに移動する。
不合格者達も直ぐにアコの元に向かっていく。
「皆さんお疲れ様でした。誰もゴール出来なかったのは残念ですが、皆さん合格です」
西東は、合格者達に何故不合に為らなかったかを話した。
不合格者は、仲間割れをした者、自分一人で勝手に行動したもの、何もしなかった者と理由は様々であった。
「最後に、此処に居る皆さんは、その場で組むことになった者と向き合い助け合う事の出来る人達です。その事を忘れないでください」
全てが終わると、受験者達が西東の元に集まりダンジョンの質問をした。
西東が笑いながら種明かしを含めてダンジョンの全体図を見せると皆が驚いていた。
「ただ真っ直ぐ進めば罠も無いまま、クリア出来たんだよ」
西東の笑顔にダンバルは溜め息をついた。
「さあ、西東、合格者の報告にいこう。
「その前にアコの様子を見ていくよ」
西東とダンバルは、アコの試験会場に向かうのであった。




