西東とアコが試験官1
試験前日の朝、西東は、ケルルロッテのバイト先である、駄菓子屋『あまなか」に足を運んでいた。
試験官を何度も経験してきたケルルロッテに話をして聞くために来たのだ。
アコも西東と一瞬だった。
「アコ、今日は話を聞きに来たんだからね?」
「わかってるわよ、西東? 最近私に対して冷たいわよ、私がこんなに健気に尽くしてるのに、まったく信用してよね!」
アコは、そう言うと西東に笑いながら舌を出して「あっかんべー」をしたあとに笑いながら西東の手を引き、駄菓子屋に向かって二人は走り出していた。
「頼もうォォォ!」
勢いよく扉を開くアコ。
「いや、違うからね、アコ」
「もう、西東? アメリカンジョークよ、まったく」
何故か勝ち誇ったかのように西東に、どや顔を見せ付けるアコ。
「いや、アメリカンジョークじゃなくて、ギャグだよね? しかも、ベタなやつ」
「西東は私に優しくない、私が必死に西東を笑わせようとしてるのに、アコ悲しい!」
「それ、この前のテレビのネタだよね?」
西東からの突っ込みに、膝から崩れ落ちるアコ。
そんな、二人のやり取りをみて、言葉を失うケルルロッテは、突っ込むべきか、我慢するべきかで少し悩んだようだが、突っ込まない事を思い止まり、必死に何かを堪えていた。
「二人とも、何を買いに来たんですの?」
「あ、いや、買い物じゃないんです」
「あ、私は、瓶ゴーラと激辛チョップスのハバネロ味X」
アコがお金を払い、瓶ゴーラをイッキ飲みする。
「さあ、西東! 気合い入れて試験の話をケルケルに聞きましょう」
西東とケルルロッテの溜め息が同時に吐き出されるとアコが不思議そうに二人を見つめた。
「と言うことで、ケルルロッテさん、話を聞きたいんだけど言いかな?」
「そうなのよ、うっかりしてたけど、話を聞きに来たんだったわ、私を惑わす、瓶ゴーラ、まさに強敵だわ」
西東とアコの今までのやり取りにケルルロッテの怒りが爆発した。
「何イチャついてんのよ! しかも夫婦漫才か位にふざけるなんて! 本気で試験官をする気あるの!」
余りに怒り狂うケルルロッテに、西東と流石のアコも驚愕させられた後、話し合いが始まる。
ケルルロッテに聞いたのは判定基準と難易度によってかわる個々のボーダーラインについてである。
試験官の感覚や思い一つで変わる事のある試験では、曖昧さを捨てて、試験官の決めたルールを徹底しなければ為らない。
しかし、厳しすぎても甘すぎても駄目である。その事実を踏まえ、西東はケルルロッテに質問に来たのだ。
「簡単ですわ、最低ラインだけを決めて徹底する事、此処に合わせるのではなく、全員に同じ課題を出してしまえば良いだけですわ」
アッサリとそう答えるケルルロッテの話を聞き、西東とアコの試験内容が決まった。
西東の直ぐにダンバルの元に足を運んだ。ダンバルは神兵と共に行動していた為、天界に拘束されていたのだ。
西東は神父に掛け合い、天御中主神に話を通して貰い、「ダンバルが協力するならば、構わない」と言われたのだ。
そんなダンバルは、牢屋の中で一人悩んでいた。
何故、自分がこんな目にあっているのか、何故、出世コースから外れた等悩みの種は尽きることはなかった。
「全部、全部、アイツの憎き西東のせいだぁぁぁ!」
そんな、怒り狂うダンバルの元に西東が現れたのだ。
「お久しぶりです。ダンバルさん、お話があるんですが?」
普通に挨拶をする西東に対して、激怒するダンバルであったが、内容を聞くと態度が一変した。
「つまり、敵だった私を味方にすると言うのか?」
驚くダンバルは、西東の顔を二度見する
「僕の試験には、ダンバルさんの力が必要なんです!」
ダンバルは、その言葉に頭を下げた。
「天鬼の中になったが元神官だ、力にならせてもらうよ、何がしたいんだ?」
ダンバルに考えを話すとダンバルは呆れていた。
「本気でこんな試験をするつもりなのか?」
ダンバルの質問に西東は笑って頷いた。




