決戦は三日後になりました!
西東が目を覚ますと横に居た筈のアコの姿は無かった。
慌てる西東がベットから飛び起きると部屋の扉が開いた。
そこには湯気のたったマグカップをトレイに乗せて部屋に入ってくるアコの姿があった。
アコは慌てた様子の西東を見て笑った。
「西東、やっぱり変わったよね、初めの頃は、私が居ても居なくても構わないって感じだったのにね」
アコの言う通りだと西東も感じた、そんな西東の側に歩いていくアコ。
「はい、これ飲んで天御中主神様のところに急ごう」
アコは西東に珈琲の入ったマグカップを手渡した。
「話し合い前に珈琲を飲ませてあげたくて、鳴神さんに御願いして珈琲を入れさせてもらったの」
「美味しいよ。アコありがとう」
そんな、西東とアコは気持ちを引き締めて天御中主神の前へと向かうのであった。
ーー
「おはよう、西東さん、アコさん。返事は決まりましたか?」
神々に見つめられながら、緊迫する空気の中、西東とアコが選んだ答えは協力であった。
「後悔は無いですね、もし、失敗すれば貴方達、二人も罪人として処刑されるかも知れないのです、本当に宜しいのですね?」
天御中主神が西東とアコの覚悟を確めるようにそう口にする。
「僕は神父を助けます、神父にはいろいろ世話になりましたから」
「私は元々助けにいく予定ですから、それに神父様、糖分切れると危ないから急がないと」
話が終わりいよいよ、神父救出となった時西東はある疑問にぶつかった。
それはケルルロッテが風伯と鳴神と共に脱獄させたと言われている。
禍津日神と悪樓の存在であった。
しかし、ケルルロッテは、風伯と鳴神、それと風伯の部下しか助けてないと言ったのだ。
「すみませんが、私にはわかりかねます、それにワザワザ、罪を犯す神を連れ出そうとは思いませんわ」
そんなケルルロッテの反応とは違い、天御中主神は、真剣な表情で西東を見ている。
「奴じゃな、スサノヲの奴、どさくさに紛れて罪神を解放しおったな!」
天御中主神の言葉にざわめく神々。
それに対して冷静な物言いで、天御中主神が、その場を一括する。
「静まれ、何を狼狽える必要があろうか? 封印する罪神が増えただけぞ、我らが動揺すれば喜ぶは、罪神のみじゃ」
皆が天御中主神の言葉に静まると直ぐに本題の話が再開された。
「神父を救出するにあたり、神兵と天兵の両方、更には、神官から天使と言った者達も神父奪還を邪魔をする事だろう」
それに対して、不思議そうな顔を浮かべるアコ。
「話せば、大丈夫じゃないですか?」
皆が再度ざわめく。
「どういう事じゃ? 解るように説明してくれないかのぉ?」
天御中主神がそう言うとアコが説明をする。
「神父様が居なくなると天界人の生活が成り立たないんですよね」
「神父一人居なくても天界はまわるだろう? 何故そう言いきれるんじゃ?」
不思議そうな物言いでアコに尋ねる天御中主神。
「簡単です、神父様は日々の御菓子を買う為に仕事を全て自分で片付ける御方なのです」
アコのカミングアウトは、衝撃的であった。
神父は全ての仕事をチェックすると言う代わりに大量の激甘スイーツを手にしていた。
そんな神父は『チェックするのは面倒だから、私がやるよ』と言い、全ての仕事を一から自身でやっていた。
その為、給金事務所以外の仕事は、お仕置きモニターの確認と書類の為の簡単な資料を集めるのみとなり、それらが主な天界人の仕事になっていたのだ。
「しかも!神父が暗号化した給金事務所の個人情報も神父無しには開けないんです。凄く天界は、神父様の復活を望むと思いませんか? つまり、神父様を助ける為に天界人を使って神兵と真武大帝を倒せばいいんです!」
「ふふふ、面白い発想じゃな、じゃが気に入った、今の話が本当ならば攻めるは、三日後じゃ! 皆久々の戦じゃ、私も久々にやる気になったわ」
三日後の出陣が決まり、それまで待機の西東とアコ。
そして、天界人達の決断が勝敗を分けることになる戦、複雑になる状況の中、西東とアコは静かに三日間を過ごすのであった。




