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西東が泣いた夜……

 西東と風伯の話が終わり、反省するアコを隣においたまま、話し合いは続いていた。


「あのさ、アコ? 起きたことは仕方ないよ」


 本気で自分のせいだと感じてしまったアコの表情は暗く、西東の言葉にも俯いたまま首を横に振っている。


 そんな西東とアコを交えて話し合いは続いていた。

 話の内容は、神父救出後の流れについてである。


 天御中主神(アメノミナカヌシノカミ)は、真武大帝しんぶたいていの後ろにいる黒幕に対して話している。


「私達の本当の敵は『荒神スサノヲ(スサノオノミコト)』である、スサノヲは、暴風の神であり、風伯と鳴神両方の力を有している! 皆、英雄に成ろうと思うでないぞ、此度の敵は、その英雄が相手なのだからな」


ーースサノヲ。


 スサノオノミコトは高天原では凶暴な一面を見せ、また、出雲へ降りると一転して英雄のように、その性格を多彩に使い分けている。

 スサノオノミコトの下界での伝説、八岐大蛇ヤマタノオロチ退治は、スサノオノミコトを一気に英雄へと変化させた。

 嵐の神を意味する『スサ』の文字をつけられる程の神である


ーー


 スサノオノミコトは、英雄に成りたかったわけではなかった。

 力が有り余るが故に敵を求め、酒と肉を食らい、女を抱く、天界においてのタブーである、下界への過度な干渉行為など、あげればキリが無いほどの悪行を犯した神でもあった。


 其れを怒った最古の神は、スサノオノミコトの魂と体を分離させたのだ。

 魂は天界の万年石まんねんせきに封印し、体は天冷山てんれいざんの奥深くに封印したと天界では言われていた。


 しかし、封印から千年程の時が流れた時に、スサノオノミコトの魂が封印から抜け出したのだ。

 あろう事か魂は真武大帝しんぶたいていの体に憑依し、スサノオノミコトは真武大帝に更なる力を与えた。


 そして、スサノオノミコトを封印した最古の神こそ、天御中主神(アメノミナカヌシノカミ)であった。


 天御中主神派と呼ばれる者達は、荒神スサノヲを封印するべく集う神の集団だったのだ。


 そんな、天御中主神が立ち上がり、西東に頭を下げたのである。


「人の子よ、天界の勝手に巻き込んでしまいすまない、スサノヲ復活を知り、私は一人の人間の女の体内に天冷山を封じ込めたのだ、それこそ、貴方の祖母であった、そして、母から子である西東大輝、貴方の体内に今も天冷山は受け継がれているのです」


 西東は、その事実に困惑した。


 神父が西東の元にアコを送った理由と天界に西東が来ないように自己再生と言う完全不死にした理由が明らかになり、その事実にアコもショックを隠せなかった。


 アコが西東の顔を見つめるが、西東はアコが見たことも無い程に動揺を必死に隠しているのがアコにはわかった。


 その日の話し合いが終わり、西東の協力するか否かは、次の日の朝まで悩む時間を与えられた。


 用意された部屋の中、西東はただ、考えていた。


「いきなり過ぎるよな…… まぁ、いきなり天界人とかになったのに今更か、父さん、母さん…… 」


 そんな西東の元にアコが訪ねてきた。


「はいるよ、西東…… あのさ、ちょっといいかな?」


「あ…… うん、いいよ、アコどうしたの?」


 無言のまま、西東の前まで歩いていくアコ。

 西東の前にまで行くと西東を自分の胸元に引き寄せた。


「一人じゃない。ちゃんと私がいるからね、だから大丈夫だからね」


 アコは、西東が両親の死についても以前悩んでいたことを理解していた。

 今回の話で西東が両親の事を思い出していると感じ直ぐにやって来たのだった。


 アコの胸元に数滴の涙が溢れるとそれは一気に流れ出した。


「泣いていいんだよ、全部私が受け止めるから、西東は、普段頑張りすぎだから、少し甘えてもいいんだよ」


「ごめん…… アコ、ごめん……」


 優しく西東の頭を擦るアコ。


 その日、アコは西東と同じ部屋の同じベットで一夜を共にした。

 西東が居なくならないように、そして、西東が迷わないように確りとアコの手が西東の手を握っていた。

いつもありがとうございます。


皆様に感謝です。(*^^*)

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