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危うし西東、嘘の無い裁判

西東は今、天界の中に作られた会議室で秘密利に行われている危険人物特定委員会に呼び出されていた。


何故こんな事になったかと言うと彼らの会議の中で「やはり、西東と言う男の存在が目立ちますね」っと言う話になり、委員会の男達が「異議無し」「異議無し」っと次々に声をあげたからであった。

彼らこそ、天界人を対象にした、法の執行人、いわば天界人用のお仕置き人である。

そんな彼らは、西東の目立ちすぎる行動を危険と判断したのだ。


「ならば!お仕置きあるのみ」

「「お仕置きあるのみ!」」


こうして、西東は訳を説明される事もなく、朝早くから連行されたのだ。

流石のアコも、天界からの召喚状を見せられ大人しく西東を見送る事を余儀無くされたのだ。


「西東、絶対に助けるからね」

「大丈夫だよ、多分誤解だから?それに先ずは話を聞いてくるよ」


冷静に受け答えする西東を委員会の男達が連れていく姿をアコは寂しそうな見ていた。

そんな西東への尋問は朝から昼迄、休む事なく続いていた。


「いい加減認めろ!西東 大輝、お前は天界にとっては、危険な存在なのだ」

顔を隠した男が西東に怒鳴り散らす。


「あの、天界にも弁護士制度はありますか?」


「ああ?弁護士だぁ、ふざけるな!罪人に弁護士なんか呼んでやる義理はない」


その言葉に西東は、強気に反論した。

「いいですか!正式な裁判が行われない以上、僕は、罪人では在りません。それに罪状も言われてない」


余りの正論に顔を見合わせる、委員会の男達。

「罪状は、天界転覆罪だ!お前はテロリストだから!裁判無しで有罪確定だ」


「つまり、力付くで罪をでっち上げるって事ですね!」


西東はそれを聞いた途端立ち上がった。


「抵抗すると罪が重くなるぞ!西東」


しかし、西東は男達の言い分を無視してスマホを取り出す。

電波があるのを確認すると直ぐに短縮で電話をかけ始めたのだ。


「もしもし、この前はありがとうございました。実は裁判をして欲しくてね、急なんだけど大丈夫かな?湯卯覇・・・・ちゃん。うんうん、場所はGPSで分かるんだ?便利だね。なら直ぐにお願いするよ。ありがとう」


そう言うと西東が通話を終了させた。


「何をした!いったい誰に電話した?」

「気にすることはない、天界裁判はする必要はない。こいつは罪人として連れてくのみだ!それに女に電話したみたいだが、女に何が出来る」


その時、会議室を地震の様な震動が襲った。

「なんだ、天界に地震?」

予期せぬ揺れに慌てる男達。


「随分な、いいようじゃのぉ、妾が何も出来ぬかどうか、その眼で特と見るがよい、うぬらの事を裁いてくれよう」


そう言い天上を破り現れたのは、閻魔天 湯卯覇であった。


「なんで、地獄の閻魔が……」


「言葉を慎め!目の前に居られる御方は地獄の支配者、閻魔天 湯卯覇様なるぞ」


そう口にしたのは、巨大化したコガノエであり、会議室その物を異空間に移動させた張本人だ。

門鬼であるコガノエの力はダイダラボッチと同等であり、普段の礼儀正しい姿からは想像できない程の迫力であった。


慌てて会議室の扉に向かい走る男達を止めたのは地獄の兵であり、その筆頭には、散鬼のクルノの姿があった。


「話は最後まで聞きな! 今は、閻魔天の御前だ!許可なく動く者は地獄の支配者、閻魔天 湯卯覇様の名において切り捨てる!動くな」


普段の二人からは想像できない光景であったが、西東は此れが本来のコガノエとクルノの姿なのだと自覚した。

そして、裁判が開始されたのだ。


「先ずは、そちらの話から聞こうかのぉ?話すがよい」


代表の男が話始めた。

「西東は、天界にとって危険なのです、いきなり現れて、一気に天鬼に成るなど、天界のパワーバランスを崩しかねない存在であり、見過ごす訳にはいかないのです!」


其方そちの言葉に嘘偽りが無いとこの閻魔天に誓えるな?」


そう言い放つ閻魔天の眼は恐ろしくとても冷たい物であった。

その問いに、男が少し臆したように見えたが間違いなく頷いた。


「西東よ、次は其方の番じゃ、天界の事をどう考える?」


「正直、あまり興味ありません。神になれるならなってみたいですが、これと言って、天界を変えたいとは思いません」


両方への質問が終わると閻魔天が二枚の鏡を取り出した。


「其方らの言葉は鏡に刻まれた。鏡は嘘を暴き妾に真実を語る、逃げることは赦さぬ故、其所にいるがよい」


鏡は真実を語る。


『裁判だ!ふざけやがって、西東の奴を有罪にして、泣きを入れさせてやる。閻魔天だか、海老天だか知らないが天界で偉い顔をさせて堪るか』


「此は面白いのぉ…… 」


閻魔天の表情が変わり、男に鋭い眼光が向けられると男の顔が青ざめる。


「嘘つきは舌を抜き二度と嘘をつけなくするのみじゃ!」


そう言うと男の口がひとりでに開く、閻魔天の手に握られた釘抜き(ヤットコ)が男の舌を掴むと閻魔天は問答無用に引っこ抜く。

激しい激痛に悶える男は叫び声すらあげられず、のたうち回っていた。


抜苦与楽ばっくよらく、嘘の無い世の中に幸福あれ」


そう口にした閻魔天は西東の鏡を見るが鏡は喋る事はなく、その場で砕け散った。

「まさか、嘘偽りが真に無いとは、鏡よ、永き怨みと嘘から解放されたか、ほんに西東には驚かされるのぉ」


そして、他の男達は地獄の裁判を受けるために地獄へと連れていかれた。


後日、神父に西東が報告書をあげることになるがその際に神父が西東に頭を下げた。

神父にすら知らされていない事であった事を改めて知った西東は、天界が一枚岩で無い事実を知るのであった。

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