西東が格好いい!デートは、思い出の場所にて
昇格式が終わり、正式に天鬼の上になった西東とアコは街に買い物に来ていた。
普段コンビニばかりだったがアコが料理をするようになり、コンビニを卒業する事を決めたのだ。
そんな二人は、デパートへとやって来ていた。
アコが「お揃いの…… 箸とか、コップが欲しいかな、なんて……」っと言ったので、お仕置きを前日に一気に済ませた二人は、この日を休日にしたのだ。
楽しそうに雑貨や食器を見ていくアコ。そんなアコの手に持たれた巨大なジョッキ。
「西東、西東もゴーラジョッキ必要だよね!お揃いの第一歩だよ」
「いや、流石に…… ジョッキのペアって?」
「え!変かな…… よし!ならこの二つ入りのグラスはどうかな?」
アコの選んだグラスは、赤ずきんと狼が描かれたグラスであった。
「あはは、可愛い。赤ずきんと狼か」
「うん、因みに赤ずきんは西東ね。私が狼よ!」
ーー反対のような気がするんだけどな?
グラスを購入したあと、二人で料理用のエプロンを見に行く。
今使っているのは、西東の母の物だった。
アコなりにその事を気にしていたのと、二人で料理をしたいと言う思いから、エプロンを買おうと言う事になった。
アコの選んだエプロンは、アコが魚釣りをする女の子が描かれたピンクの柄、西東のエプロンは魚が描かれた水色の物だった。
満足そうに包み紙を握りしめるアコはまるで小さな子供の様であった。
御昼になり、デパートのレストラン街に向かう。
ファミレスと違い、少しお洒落な雰囲気を楽しむアコを横目に笑みを浮かべる西東。
二人は意識してなかったが紛れもないデートであった。
西東はアコが現れてから自分がよく笑うようになったと感じていた。
そんな黄昏た顔をする西東をみて、アコも楽しそうに笑っていた。
そんな二人は、楽しく料理を口にする。
在り来たりなハンバーグと海老フライののったグリルとジャンバラヤ、それにサラダとコーンスープ。
ーーしかし、不思議と懐かしい味に感じるからハンバーグとは、不思議だよなぁ
「西東? 少し私のジャンバラヤ分けてあげる。美味しいわよ」
そう言いアコが取り皿にジャンバラヤをよそい西東に渡す。
「ありがとう。アコ、そうだ。ハンバーグも美味しいよ」
『はい』っと西東がアコにハンバーグを切って渡たそうとする。
『あーん』っと口をあけるアコ。
西東は真っ赤になったアコにハンバーグを食べさせた。
「あはは、まさかアコが『あーん』って口をあけると思わなかったよ」
「うるさい言わね…… やってみたかったのよ、西東が嫌ならもうしてあげない」
「すごく可愛かったよ?」
ーー「…… バカ」っと言いながら真っ赤になるアコはとても可愛かった。
二人は食事を済ませるとデパートの屋上に移動していた。
屋上は少し寂しげで、子供も殆どいない。
「懐かしいな、昔はよく来たんだよなぁ」
「誰と来たのよ」
少し強めの口調になるアコ。
「母さんとだよ?まだ僕が小さい頃の話だから、屋上にも、その頃は子供がいっぱい来てたし、楽しかったなぁ」
「あのさ、ごめんね、勘違いしたわ」
その言葉に西東は笑ってしまった。
アコは西東が他の女の子とデートした場所に来たと勘違いしていたのだ。
「僕は、デートとかしたこと無いよ。アコが初めての彼女だからね」
アコが恥ずかしそうに口元を手で隠す。
「西東…… 声、でかいよ」
そう小声で言うアコ。
そんなアコと手を繋ぎながら、ゲームコーナーに行き、クレーンゲーム等をする。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
そんな時、ゲームコーナーに学生が数人現れるとコインゲームを蹴り始めたのがわかった。
蹴られたゲームからはコインが落ちてくる。
それを我が物顔で掴み遊び始める学生。
アコが注意しようとすると、西東がアコを止めた。
「おい、メダルを置いて直ぐに出てけ!」
西東がそう怒鳴ったるとゲームをしていた学生達が立ち上がる。
「うるせぇよ?誰だよ、従業員じゃないなら口出すなし」
「てか、こんなとこで、デートとかマジにありえないでしょ」
そう言い笑う学生達。
「仕方ないか、少し給金が減るけど我慢できないや、ここは僕の大切な場所なんだ、もう一回言う、今すぐメダルを置いて帰れ」
西東の言葉に苛立った学生の一人が西東に殴り掛かる。
西東はそれを交わし、学生の腕を掴むと掴んだ手を後ろに移動させる。
「今の僕は、楽しい時間と思い出を邪魔されて、すごく怒ってるんだ、今すぐ帰れ、いいな!」
今にも腕を折りそうな勢いの西東をみて学生の一人が逃げるようにその場から離れると次々に学生達はその場から立ち去る。
最後に西東に捕まった学生をデパートの警備員に引き渡し全てが終了した。
事情を話したりと時間を食ったが最後は西東が学生の学校には電話をしないであげて欲しいと警備員に願い出た。
理由は、学生が怯え泣いていたからだ、軽い気持ちと集団だからと言う心理が人を間違った方に導く事はよくある。
西東の言葉に警備員は渋渋頷き、出入り禁止の処分で事なきを得た。
帰り道、アコが西東に質問をした。
「何で、学生を助けたの?あんなやつ庇わなくても」
「何でだろ?神様目指すなら、人を正しい方向に導きたいからかな、今の世界が荒んでるのは、わかるから」
「ふーん、西東、なんからしくない」
アコが笑うと西東も笑った。
「確かに、らしくないね。あはは」
そんな西東の手にはお揃いのグラスが、アコの手にはエプロンの入った包み紙が、そんな二人の手は、真ん中で確りと繋がれているのであった。




