作製者!神官ダンバル
テーブルが隅に片付けられた会場内に天鬼達により結界が何重にも掛けられる。そんな中でダンバルと西東が向かい合っていた。
「本当に遣るかなのかい?西東。言っとくが私は神官だ。どう転んでも君に勝ち目はない!」
そう言い放つダンバルを無視してアコと話をする西東。
「西東?大丈夫、勝てるの?」
「分からないけど?遣るだけやるよ、心配ありがとうね。アコ」
「私を無視するな。まったく、さて試合は一般的な戦闘タイプでどちらかが降参もしくは、戦闘不能になったらおしまいだ!いいな」
「わかりました。審判はどうしますか」
ダンバルは審判にケルルロッテを選ぶと直ぐに西東とダンバルの試合が開始された。
ダンバルは作製者つまりは物を造る能力を神官に成り与えられていた。
「今回は前回みたいには、いかないぞ西東オォォォ」
ダンバルが結界内に次々に石の壁を作り出すとあっと言う間に結界内が迷路に変わる。
西東は直ぐにその場から移動を開始する。
全体を把握そんなに広くないと言っても体育館程の広さ中に造られた迷路である、一ヵ所に止まればダンバルが次の手を直ぐに打つと予想し、急ぎ先に進むその際に曲がり角にアコのナイフで印を刻み道が止まれば直ぐに戻る。
「さあ!いくぞ西東」そう言うとダンバルが迷路内にゴーレムを次々に作製していく。
ゴーレム達は1列になり、迷路の中を西東目掛けて移動していく。
西東をゴーレムが見つけると無言のまま西東に岩で造られた拳を使い攻撃を開始する。
次々に姿を現すゴーレムの攻撃を交わしながら西東はある物を探していた。
それはある文字であった。
Schem-hamphorasch( シェム・ハメフォラシュ)ヘブライ語で「正確な名前」、神の名前である神聖4文字を意味する言葉であり、ゴーレムを造る際に用いられる言葉である。
そして、emethの文字を西東はゴーレムの首元に見つけるとナイフを使い最初の一文字「e」にあたるように攻撃をしていく。
文字が削れ、methに変わるとゴーレムの動きが止まり砕けていく。ヘブライ語で「死」を意味する単語だ。
西東は以前のダンバルの作った試験で珍しい記号を見つけていた。
直ぐに調べる。
それは、ヘブライ語であることは歴史好きの父の書斎にあった本で直ぐにわかった。
更に最近アコの観ていた『ガチコワ』にゴーレムを造る話があったことも西東は即座にゴーレムを倒す事ができたのだ。
ゴーレムを次々に倒していく西東。
ゴーレムは真っ直ぐにダンバルの元へと続いており、ダンバルはゴーレムを作製するのに集中しており、西東があっさりとゴーレムを倒してきて側まで来ているなど想像もしていない様子であった。
壁の角からダンバルが次のゴーレムを作製するのを確認した西東はダンバルの頭上に静かに結界を大量に作成する。
そして、10枚ほど作り上げた結界を一気にダンバルの頭上から落下させたのだ。
「ギャアァァァ……何故……」
まるで、やられ役としか思えない台詞を残しダンバルが気絶する。
「そこまで!」ケルルロッテが試合終了を告げる。
結界内の迷路が消え去ると気絶するダンバルとその目の前にナイフを片手に無傷で立っている西東の姿があり、天鬼達の眼がその光景に釘付けになる。
「西東。やったね!勝ったんだよ?ダンバル様に勝つなんて凄いよ!」
アコが西東に抱きつくと西東も笑いかける。
その後、ダンバルは神父のお仕置き部屋に連れていかれ三日三晩のお仕置きをされた後に天鬼の中に降格が決まった。




