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昇格式にて

西東とアコはその日、タキシードとドレスに身を包み昇格式に出席していた。


「なんだか、似合わないわね西東?」


「僕も好きでこんな格好してる訳じゃないよ」


そう言いながら西東はアコのドレス姿に見とれていた。

アコの白いドレスは、とても大人っぽくアコをきらびやかに彩っており、普段見せる姿とは違うアコがそこにはあった。


「来ましたわね。アコ、西東さん。今回は昇格おめでとう。心から天鬼昇格を御祝い申し上げますわ」


ケルルロッテが二人を見つけて声をかけてきたのだ。


「ありがとうございます。ケルルロッテさん」

「ケルケル?やけに私にも親切ね、熱でもあるんじゃない、大丈夫?」


「…… アコ、いえ、私はまだ遣ることが有りますので失礼致します。それでは」


いつもになくあっさりとした態度のケルルロッテに二人は首を傾げた。

そんな西東とアコであったが式が始まるとケルルロッテがどういうポジションに要るのかを理解した。


ケルルロッテは司会のサポートをする係りであった。

そして、式の司会はダンバルであった。

式といっても西東とアコを含めて、全員合わせても15人程度であり、100人前後は余裕で入れそうな式場は寂しく見える。


「なんだか、寂しい式だね?」

「し、西東、始まるよ」


寂しい雰囲気の中始まる挨拶。

その寸前に式場の扉が開く。


「すみません、いやあ、よかった間に合った」っと神父が入ってくると次々に後ろから天鬼の中や上、つまりは西東達より前に昇格した先輩天鬼達が姿を現したのだ。

その中には閻魔天とコガノエ、更にクルノの姿まであった。

試験官として活躍した彼等も式に呼ばれていたのだ。


「ダンバルさん。遅くなりました。いやあ、場所を間違えまして面目無い、あはは」


場の空気を一気に掻き乱した神父がダンバルに笑いかけると「ゴホン」っとダンバルが仕切り直しをして式が再開する。

その間、西東に対して向けられる天鬼達の目線は冷たく鋭いものばかりであり、西東はその目線に晒され生きた心地がしなかった。

更にダンバルの挨拶が西東に追い討ちをかける。

「今回の試験は過去最悪の結果になりました。それも規格外の方法で試験をクリアした一人の男が原因です」

その途端更に西東に突き刺さす様な目線が強く向けられる。


「アコ…… あれって」

「うん…… 多分西東の事だよね?」


更に続くダンバルの当て付けの様な挨拶、流石の西東もダンバルの「空気を読まない行動と女の為に試験を冒涜する様な男など嘆かわしい」っと言われて我慢できずに立ち上がった。


「すみませんが、帰らせてもらいます。無駄な時間になりました」


ダンバルの話している最中にそう言い放つ西東にダンバルが激怒した。


「まて!誰が帰っていいって言った!座れ西東 大輝」


その瞬間、西東が怒りを露にした。

「僕に文句が言いたいなら直接言ってください!あとアコを傷つける様な真似をしないで欲しい」


「今帰れば!西東、お前の昇格は取り消しだぞ!いいのか」


西東はにっこりと笑った。

「構いません、それにそうなる前に僕なりにケジメをつけますから」


そう言うと西東が指を動かした。その途端にダンバルの周囲を結界が囲む。

「バカな真似はやめろ!お前は天界を追放されたいのか」


「あはは、愉快じゃのぉ!良いではないか」そう言い扇子せんすを西東に向けて笑っていたのは閻魔天であった。


「西東よ、もし天界を追放されたなら妾が地獄に其なりの役職をくれてやろう!思う存分遣るがよいぞ!」


閻魔天の思わぬ発言にダンバルは絶句した。既に引っ込みがつかなくなり、神父の顔を見るダンバル。神父は其れを見て手を“パンパン”っと叩く。


「はい、っと言うことで今回の唯一の結界師合格者の西東 大輝さんです。皆さんよく覚えといて下さい」っと全てを仕切りあっさりと問題を揉み消した。当たり前の様に皆が静まり再度、西東を見つめる。

立ち上がったままの西東に対して神父が笑いかけると西東も渋渋ではあるが、席についた。そこからは、神父が会場を取り仕切り、全ての天鬼達が西東とアコの周りに集まり次々に挨拶をしていく。

式が無事に終わると、神父がダンバルの耳を掴み西東の前に引っ張ってきた。


「私が立会人になりますので、二人とも本気でやりあった方がいいでしょう、後々になって揉めるのも考えものですからね」


そして、西東とダンバルが神父の提案に乗る。

試合は次の日の午後に決まったのだった。


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