雨をやませたい。
西東が地獄に訪れて直ぐに向かったのは閻魔寮であった。
受付で閻魔天への面会を申し込むと直ぐにコガノエとクルノが西東の前にやって来た。
「どうも、西東様、アコさんの御退院おめでとうございます」
「あ、どうも御丁寧に」
「なんだ?西東は世間話する為にわざわざ地獄まで来たのか?」
クルノの言葉に直ぐに西東が本題をコガノエに話す。
「実はコガノエさんの力を御借りしたいんです。その為に、ゆづちゃんに御願いに来たんだけど?忙しい見たいですね」
「忙しいと言うか…… 閻魔様が遣る気が無くてこの有り様なのです」
「しゃあないよ?下界は雨が土砂降りでその雨が地獄にも流れ込んでるし」
地獄にも雨の被害が広がっていた。
そんな時、西東を呼び出すアナウンスが流れると直ぐにコガノエが西東を閻魔天の元へと案内した。
「待たせてすまんのぉ、死者の裁き以外にこの大雨のせいで、色々とこたついていてるのでなぁ」
何時もより遥かに憂鬱そうな閻魔天の姿に西東が本題を切り出した。
「ゆづちゃん、実はコガノエさんを少し借りたいんだ。この雨を止ませる為にどうしてもコガノエさんの力がいるんだ」
「よくわからぬが、西東の頼みなら無下にする事は出来ぬのぉ、コガノエよ。西東と共にこの鬱陶しい雨を何とかしてくるのじゃ!よいな」
西東は其れを聞き直ぐにコガノエを天候管理事務所に連れていく。
中に入ったコガノエが仕事のやり方を見て眉をぴくぴくと動かす。
「此れが大雨の原因ですか?」
「はい、何故か管理者の雷公鳴神様が居ないんです。更にこの子達の仕事の仕方がメチャクチャで」
「わかりました。全員止まれい!」
いきなり大声を出したコガノエに皆が驚き手を止める。
「仕事の割り振りとやり方を説明します!よく聞きなさい」
そう言うコガノエに一人の坊主が文句を言う。
「いきなり来て!偉そうにお前は誰だ!」
その言葉に周囲が同調する。
「そうだ!そうだ!誰だ」
コガノエの表情がゆっくりと変わっていく。
そして「頭に角があるぞ!閻魔の手先だ!」その一言にコガノエは、発言した坊主を一瞬で捕まえる。
「そうです、私は地獄の門鬼をしていた鬼です、訳あって貴方達の仕事に文句を言いに来ました…… バラバラにされて喰われたくないなら!黙って従え!」
全員がコガノエの言葉に凍り付いた。
其処からは書類整理を西東の指示で行い。
全体の管理と雨を降らすバランスをコガノエが考え指示を出す。
西東は書類の整理を始めて驚いた。
あ行はあの付く物なら何でもしまわれていたからだ。『アメリカ』『アラスカ』『アイスランド』と季節や気候は全て無視されている。
「先ずは、雨が必要な国の選別から始めるよ。あと温暖な気候の国とそうじゃない国も分けてから、並び替えるよ」
元々言われた仕事をこなすのは得意と見えて、雨降らしと雨坊主は西東とコガノエの指示をスムーズにこなしていく。
夕方には、何とか雨を止ませることに成功した。
其処からの仕事の流れを表にして雨坊主達に渡し帰ろうとした西東とコガノエが着た時には書類で隠れていた扉の存在を見つけた。
扉には『所長室』と書かれていた。
取り合えず扉を開く。
中には衰弱した女が一人倒れていた。
直ぐに雷公鳴神だと判断した西東が病院に連れていく。
病院に着くと直ぐに点滴と精密検査が始まる。
何故か身元引き受け人にされた西東は病院の待合室で結果待ちをする事になってしまっていた。
「はぁ…… アコ怒ってるよなぁ……」
夕方には帰る予定だったが既に日は落ち夜になっていた。
検査結果は酷い脱水と軽い栄養不足と診断された。
そして、1日入院になったので明日着替えを持ってきて欲しいと言われ、西東の話は全てスルーされた。
西東は仕方なく承諾してその日は家に帰る事にした。
家の扉を開くと電気が全て消えており、リビングのテレビがつけっぱに成っている。
「ただいま?アコ」
返事がない。
「アコ居ないのか?」
テレビの前に布団を被り耳を塞ぐアコの姿があった。
「おーい!アコただいま」
振り向いたアコは眼に涙を浮かべていた。
そして被っていた布団から飛び出すと西東に抱き付いてきた。
「遅くなってごめんね」
アコの涙に動揺する西東。
「西東、『ガチコワ』が怖すぎるの……私、夜にトイレに行けなくなるかもしれないの、どうしよう」
アコの涙は、夏終わりの『ガチコワ』特番によるものであった。
「アハハ、ならその度に起こしてついてってあげるよ」
「でも!それって、は!西東のエッチ何て事言うのよ、そんな事口走る西東が一番危険人物よ」
「はいはい、雨も止んだしコンビニ一緒に行こっか?」
「いく!久々のお出掛けね。何着てこうかな」
「夜のコンビニに行くだけだよ?」
そんな事お構いなしに楽しそうに服を選びに行くアコ。
西東は今日が無駄じゃなかったと素直に感じた。
因みにアコの服選びは一時間程かかった。




