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3体1の戦い、最後の勝者

中庭に移動した西東と3人。


カラマ=クレメリオ、サザナミ=ソウヤ、ヒサギ=ミヤコの三名と試合をして西東に勝てた時点で合格になる。


審判の閻魔天からしたら祭りの出し物の様なものなのだろうと西東は考えていた。


「西東さん!いきなり天鬼になったみたいだが俺達も天鬼だ!経験なら負けない」

ソウヤがそう言うと二人も頷く。


しかし、ここに来て問題が発覚する。

西東の結界には使用回数があり、後半になればなるほど挑戦者の勝率が上がる。

逆に言えば最初の対戦者は不利と言う事実が浮かび上がったのだ。


ジャンケンで順番を決めようとする男性二人に対して、紅一点ヒサギ=ミヤコが前に出た。


「私は戦力の西東殿と試合を所望いたします!」


ミヤコの手に刀が握られる。

神経を刀に集中させるミヤコから漂う気迫は現代に忘れられた侍の放つ闘気といっても過言ではなかった。


しかし、閻魔天は其れを良しとしなかった。


「ミヤコ一人では、西東に傷ひとつ付ける事すら叶わぬだろうのぉ?どうじゃ西東、3人をまとめて相手してみぬか?」


「え、3人いっぺんにですか?幾らなんでも買い被りすぎですよ。僕はあくまでも結界師なんですよ?」


「よくもそんな台詞を吐くのぉ?西東よ御主ならば、地獄の鬼神にだってなれると思うがのぉ?取り合えずならば、ミヤコと軽く勝負してみぃ、ミヤコには特別に最初の1試合とその後の3人合わせての試合を許可しよう」


閻魔天に最初から負ける事を前提に話を進められたミヤコ。

侍としてのプライドを傷つけられたミヤコからは更に強い殺気までもが滲み出ていた。


「西東殿…… 某から参ります!我が名はヒサギ=ミヤコ!いざぁぁぁ!」


踏み込んだ足を軸に前に足が一気に西東へと目掛けて踏み出される。

刀を自身の一部として鍛練を続けてきたミヤコの切っ先は西東の前髪を掠める。


閻魔天も予想外のミヤコから飛び出した駿足に笑みを浮かべる。


西東はミヤコの足元の動きと刀の刃の長さとつかの位置、の長さを眼件で判断しギリギリを交わしていく。

天使の頃の西東ならば最初の一撃で勝負は着いていただろう。

天鬼になり上がった身体能力の中でも西東に一番の変化を与えたのは動体視力であった。


閻魔天の攻撃すら見きった事のある西東の前では、ミヤコの駿足から繰り出される斬撃すら紙一重で交わすことは容易かったのだ。


「く!何故、反撃をしないのです。私は真剣勝負を望みました。武士であり侍として西東殿に挑んで要るのです!ハァァァ!」


「わかった。なら、僕も確り反撃するよ」

西東の指が僅かに動かされる。

ミヤコの踏み込んだ足が結界に包まれ、バランスを崩した瞬間に西東がミヤコを結界で取り囲む。

その瞬間、ミヤコに対して西東がナイフを突き付ける。


「勝負ありかな?」

西東の言葉に頷くミヤコの心臓部にはナイフの先端が触れる寸前迄迫っていた。


西東があえてミヤコの全身を結界で身動きを封じたのは下手に動かれてナイフを刺さない為であった。


「感服いたしました、某はまだまだ未熟である事実を確りと受け止め、再戦を何時か所望致します」


ミヤコは頭を下げると3人で行う試合を辞退した。


残されたソウヤとカラマはクーウェンを無理矢理試合に呼び込んだ。


「御主らプライドはないのかぇ?」


「御言葉ですが!閻魔様、勝負には、時にプライドを捨てることも必要なのです!」とソウヤが言うとカラマが頷き、それを見たクーウェンが頭を抱える。


「なんだか、カオスな雰囲気じゃが、まぁ試合を開始するがよいのじゃあ!」


最初に動いたのはカラマであった。

カラマの武器は鎖鎌くさりがまである。

西東に対して距離を取りながら攻撃をする。

其れを確認したソウヤが大斧を握り特攻してくる。

更に反対側からクーウェンが剣を手に走り込む。


「やっぱりなれてますね?複数での連携は確かに厄介だな」

冷静に鎖鎌を交わす西東しかし、鎖鎌を引っ張るカラマ。

鎖鎌の返しが西東を後ろから襲う。


そして、西東の背中に突き刺さる鎖鎌、それに合わせての片方に付いた分銅ふんどうが西東の顔面に目掛け炸裂する。

ギリギリで交わしたが西東の額からは血が流れ、背中にはまだ鎌が突き刺さっている。


クーウェンは一瞬躊躇ったがソウヤはチャンスと判断すると両手で大斧の掴むと西東に飛び掛かる。

「オリャアァァァ!西東召し取ったり」

西東の頭部目掛け全力で大斧を振りおろす。


しかし、振りおろした筈の大斧の刃の部分は無惨に地面に突き刺さり、ソウヤの両手に凄まじい痛みが走る。


「くそ、なんだ!」


それを見たカラマが鎖を引っ張るとやけに軽い事に気付く。


西東は結界を使い鎖鎌を切断すると同時に三枚結界を頭上に造り、ソウヤの一撃を防いだのであった。

西東の異変に気づき直ぐにクーウェンが二人のサポートに走ろうとした瞬間、クーウェンの周りに結界が造られていることに気づかされる。


クーウェンが身動きを取れないことを確認すると西東は直ぐにカラマに対して反撃を開始する。

カラマは直ぐに距離を取ろうと後退するが西東の結界がカラマの頭上から鉄板の用になり降り注ぐ。


「ギャアァァァなんだ!」

カラマの体が徐々に地面にめり込んでいく。

そして、まだ手が痺れて斧を握れないソウヤの前に移動する西東。

ソウヤは周りの光景に既に涙眼になっている。


「すみませんでした!」

ソウヤの言葉に西東が優しく微笑む。


「ダメだよ!自分だけ助かろうなんて、確りとお仕置きさせてもらうよ!」

そう言うと西東はソウヤの周りに結界を造り逃げ場が無くなった事を確認すると威力を抑えた不安定結界を中に造り出した。


「僕の勝ちだね」

その瞬間、結界の中で爆発が起きる。


その爆発音を聞いて直ぐによつ葉さんとオノ君が中庭にかけて蹴る。


「え!西東さん、それに御見舞いに来てた皆さん!よく分かりませんがオノ君が相手します。さあ!オノ君頑張って」


「えぇぇぇ!俺?」


オノ君が西東に向かって走っていく。

しかし、オノ君が西東を捕まえようとした瞬間に結界の壁に激突する。

オノ君がそのまま地面にある石に頭を打って気絶してしまうと、西東は直ぐにオノ君に駆け寄る。


「大丈夫ですか!オノサン」


次の瞬間、西東の首に“チクり”と痛みが走る。

そして、西東は意識を失っていく。


「ごめんなさい。西東さん、でも遣りすぎです!よつ葉の前で怪我人を出すのは赦しません。そして、オノ君、貴方の事は忘れないからね」


閻魔天が予想外の展開に腹を抱えて笑う。

そんな閻魔天も、よつ葉さんの御説教を受ける事になるのだった。


結果は全員不合格。

そんな西東達の戦いをドキドキしながら見つめるアコ。

その表情は久々に見る元気な西東の姿に笑顔を浮かべていたのであった。


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