約束、遅刻、天界のナース
ひたすらに天界の中にある建物の廊下を走る西東。
西東が建物の一室の扉を開く。
「ハァハァ、ごめん遅刻した」
息を切らせながら西東が謝りながら見つめる先にはベットに横になるアコの姿があった。
「遅いよ!一時間も遅刻とか、西東は私が心配じゃないの」
「ごめん、神父様とダンバルさんに呼ばれて中々抜けられなくて」
西東がいるのはアコの入院している天界の病院である。
本来、直ぐに復活する筈の天界人であるアコが何故入院しているかと言うと、閻魔天の一撃がアコの心臓部に与えた損傷が複雑な物であったためである。
初め傷を見た天界医はその凄まじい損傷に自然復活は厳しいと判断した。
そして、下界と同じ方法でアコの心臓部を開き、出血部分の吸引、血管縫合、心臓にバイパスを繋ぎ更にサブに人工心肺をつけ心臓の補助をさせながら次々に血管をクランプしては縫合を繰り返す、普通の人間なら耐えられない程の抗凝固薬を投与され、凝固確認後に 動脈遮断・心静止の確認、心筋保護液注入カニューレ挿入する。
全てが繋ぎ終わると 大動脈遮断解除し心拍動再開を確認する。
そのあと ヘパリンを中和する為にプロタミンを投与する。
このプロタミンはタンパク質の主成分であり、耐熱性芽胞菌に対して増殖抑制効果を持つ。このペプチドは、細胞膜の溶解または透過性亢進を引き起こすことなく、その抗菌効果を発揮する。
その後に送脱血管、ベントをする。
ベントとは、心臓の過伸展防止であり、その後にカニューレ抜去する。
アコは心臓の大手術を受けたのである。
手術が成功しても目覚めなかったかもしれないと言われた時に西東は初めて本当の絶望を感じた。
パートナーである西東に直ぐに同意書が渡され西東は今までの人生で一番辛いサインをすることになった。
そして、西東がアコの手術成功を知ったのは閻魔寮から天界に帰った時であった。
更にその二日後に意識を取り戻した。
しかしアコは少しの間、入院が必要と言われ西東はそれに同意した。
アコは「毎日西東が来るなら我慢する」と言ってくれた。
そして、約束初日に、神父とダンバルに拐われて無理矢理再試験をさせられたのだ。
室内で頬を膨らませて怒るアコ、その横には、担当の天界ナースのよつ葉さんが笑いながら西東とアコを見ていた。
「アコちゃん、ずっと時計と睨めっこしてたんですよ。西東さんがこないから泣きそうになったりも、ふふふ、仲良しですね」
よつ葉さんがそう言い笑うとアコは赤面して枕をよつ葉さんに向かって投げる。
其れをすんなり交わしたよつ葉さん。
枕は別のナースマンのオノ君に直撃した。
「「あ!」」
西東とアコが声をあげるが、よつ葉さんは其れを見て「天罰ね、日々の行いが悪いから」と微笑んだ。
アコの入院の間は、よつ葉さんとオノ君が交代でアコの面倒を見てくれる事になり西東はひと安心していた。
「また、明日来るからね。いい子にしてるんだよアコ」
寂しそうに西東を見るアコ。
手を降ろうとしてその手を引っ込めた。
「遅刻したら次は許してあげないからね」
「うん、ちゃんとくるよ」
西東がそう言い病室をあとにする。
病室を出て歩いていると西東の眼から自然と涙が溢れだしていた。
「はは、両親が死んだときだってこんなに涙なんか出なかったのに、本当、調子狂うな……ハァ、良かった、本当に良かった」
西東はそう言いながら涙を拭った。
西東は直ぐにお仕置きリストを開くと一人でお仕置きを開始する。
アコの治療費は通常の蘇生の数十倍であり、西東の貯金だけでは足りなかったのだ。
西東の手にはアコのナイフが握られ、町中にリストの反応があれば即座に天界送りにしていく。
天鬼の上になった西東の身体能力を持ってすれば、街を幾つも移動する事も容易くなっていた。
西東の類い稀な結界操作は更にお仕置きを効率よく執行する結果になった。
天界の中には西東を危険視する者が現れるほどに見境無くお仕置きをする西東の姿は、まさに鬼神と言う他なかった。
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