閻魔天玉砕?
西東が目を覚ます。
視界が暗い…… むしろ真っ暗だった。
全ての音も光もない世界……
そして西東は声すら出せない事に気がつく、まるで自分の口が無くなってしまったかのように動かすことが出来ないもどかしさ。
ここは何処なんだ?僕は確か…… !アコや、ゆずちゃん達はどうしたんだ、何より此処は何処なんだーー!
西東の頭と体はアコのキャリーバックの中に詰められていた。
アコが西東が居なくなった日からずっと考えていた方法だ。
西東の再生時に先に頭と体をくっつける。
それから手足の再生部分にスポンジとカバーをかける。
そうする事により西東の細胞がスポンジに組織を張り巡らせ、手足が体にくっついたと脳に錯覚させる。
そしてアコは意識のない西東の口を針で縫い、耳に蜂蜜を詰め込んだ。
そして西東をキャリーバックに押し込んだのだ。
「ふぅ、いい仕事したわ」
額にきらびやかな汗を流しやり遂げた表情を浮かべるアコを見てコガノエ達はドン引きしていた。
特に閻魔天はいきなり西東をバラしてから口をニコニコしながら縫い出したアコに恐怖しか感じていなかった。
「コガノエ…… アヤツは悪魔かぇ?」
え!……
「閻魔様、残念ながらあれは……天使です」
ガーーン!
「な、本当かぇ!どう見ても悪魔か黒魔術師の仕事にしか見えないではないか!」
「アハハ、そうですね、むしろ悪魔の方が少し優しい気がします」
そんな会話は、アコの耳には入っていない。
アコは西東の口を縫い終わると真っ暗なキャリーバックに詰め込んだ。
全てが終わり無邪気な笑みを閻魔天達に向ける。
「はい、西東のお仕置き終了。さて、次はアンタよ!閻魔様…… 」
凄まじい殺気と眼に見えない黒いオーラを醸し出すようなアコの笑顔。
それを見て閻魔天は、まだ獄六の方が優しかったと本気で感じていた。
「まぁまぁ、アコさん落ち着いてください!西東殿に地獄に来ていただいたのは、神父様も了承済みの話なのですから」
コガノエが必死にアコを止めようとする。
アコも取りあえずは西東を回収したので話を聞く為にその場に腰掛けた。
「話を聞こうじゃないの」
コガノエとクルノが閻魔天の横に座りアコとの会話が始まる。
「本来ならば、極秘の内容にして欲しいと神父から頼まれておるが仕方無いのぅ、今回、西東を地獄に呼んだのは獄六に参加して貰うためだったのじゃ」
閻魔天はアコに対して神父からの依頼を包み隠さず話始める。
神父は、天界と地獄の交流を深めたいと考えて獄六と地獄のバカンスツアーを採用した。
獄六に関しては、更なる追加要素を加える事で地獄の獄ソースや神父の愛するグラブジャムン等を楽しめるよう改良された。
其れを正直者の西東に吟味して貰うのが今回の計画であった。
本来より、かなりハードに設定されたバージョンアップは天界と地獄の予想を遥かに超える物であり、閻魔天ですら驚いた程である。
「つまり、全ては事故じゃ!」
「アンタ、事故で焼き鳥になる気だったわけ?」
アコが閻魔天の言葉をコンマ数秒で粉砕する。
今にも泣きそうな閻魔天はコガノエの顔を見る。
「ハァ、今回の一件は地獄の落ち度は確かにあります。本気に申し訳御座いません。西東殿にも心から御詫び致します」
「そうじゃ!妾もそれがいいたかったのじゃ!」
「アンタは、黙るなさいよ……刻むわよ?」
「ヒィ!妾は、閻魔なんじゃぞ……閻魔……うわぁぁぁ、コガノエ、クルノ……なんなのじゃ!なんなのじゃ!この扱いは、悲しすぎるのじゃ」
「あんまり閻魔を泣かすなよ、アコ?これでも地獄の代表なんだからな」
「穏便に御願いします。アコさん、まだ子供ですから」
「これでも……!子供!」
コガノエとクルノの何気無い一言が閻魔天の心にクリティカルを与えた瞬間であった。
「妾は、妾は、閻魔なんなのじゃ!」
「だから黙りなさい!ちび閻魔!」
アコの一言が閻魔の心を打ち砕いた。
「取りあえず!西東は持って帰るわ」
そう言うとアコは地獄をあとにした。
コガノエとクルノはその後、いじける閻魔天を説得するのに3時間程かかり、次の日の裁きは午後から開始になるのであった。




