第8話
これで、自分のせいで、5人の人間がロードによって殺されたことになる。谷本先生も今日の人たちも、数日後には事故で亡くなる予定だったらしいが……。
自分の部屋に戻った輝夜は引き裂かれた服を脱ぎ捨て、別の服に着替えた。
誰もいない自宅に一人でいても、自分が死なせた5人のことを思うばかりだ。思い切って再び外に出てみた。だがさすがに先ほど男達に襲われたことを思い出すと怖い。今度は、人通りの多い街へ向かった。
華やかな大通りを歩いていると、少し気が紛れてくるのが分かった。
「お嬢ちゃん、占っていかないかい?」
交差点を少し過ぎたところで、かなり年配と思われる女性が丸い大きな水晶を前に座っていた。
「占い……?」
普段、輝夜は自分の星座や血液型占いくらいしか興味はなかったが、今の状況だと占いも何かの助けになる気がした。
「おや、お嬢ちゃん、死神の婚約指輪をはめているね」
「…………!」
「死神と結婚するのかい? ……それとも無理やりはめられたのなら、私が外してあげようか」
「外せるんですか!?」
「もちろん。だてに長年占い師をやっているわけじゃないからね」
輝夜は占い師の正面の椅子に座った。
「じゃあ、外してあげよう」
自分ではどうやっても外せなかった指輪を、その占い師の女性はいとも簡単にスルリと外した。
「ありがとうございます!」
「……こちらこそ、ありがとう」
年配の女性のはずだった占い師の声が若い男性の口調に変わり、輝夜がハッと顔を上げると、そこには占い師ではなく、全身黒いマントで覆われた人物がいた。
「ロード!?」
「そうか、この指輪はロードのものだったのか。それはいい獲物を見つけた」
その黒マントの人物は、突如、大きな刀を輝夜に振りかざした。
輝夜は逃げようとするものの、ふと気づくと、そこは人通りの多い交差点ではなく、霧に包まれた何もない空間になっていた。