第6話
家に帰り、自分の部屋に戻ると、谷本先生のことが次々に思い出されてきた。
谷本先生のホームルームや英語の授業を思い出すと涙が出てきた。面白くもないギャグを連発する先生だったが、今思えばそれも懐かしい。
私が…私がいなければ谷本先生が亡くなることはなかったのに…。
止まらない涙をハンカチでそっと押さえ、輝夜は言ってみた。
「……死神さん」
その瞬間、輝夜の部屋にマント姿の死神が現れた。
「お呼びかな? ――我が婚約者殿?」
顔の見えないマント姿で、死神はうやうやしくお辞儀をした。
「聞きたいことがあるの」
「何だ?」
「あなた、名前はあるんですか?」
一瞬死神は面食らった様子だった。
「まあ、死神もたくさんいるから、それぞれ名前はある。俺はロードだ」
「ロード……」
「L-o-r-d. Roadじゃないぞ?」
英語教師らしく、ロードは答えた。
「もう一つ…。私があなたの花嫁になったとしたら、私はどうすればいいんですか?」
「死神族の一員となるから、基本は俺たちと同じように、生きている人間を死に導くのが仕事だ。……だが、慣れるまでは何もしなくていい。俺のそばにいてくれればそれでいい」
「何も……しなくてもいいんですか?」
「まあ、当分はな」
「じゃあ、私……」
そう言って覚悟を決め、輝夜は大きく息を吸った。
「あなたの、花嫁になります!」
「まだダメだ」
あっさり却下されてしまった。
「どうして!? まだ17歳になってないから!?」
それには答えずに、ロードは言った。
「花嫁になんて絶対ならない、とさっき言ったばかりなのに、なぜ考えが変わった?」
「それは…私のせいでこれ以上人を殺したくないから……」
言いながら、谷本先生のことを思い出し、再び涙が出てくる。
「お前が誰かのためではなく、お前自身が俺を愛し俺との結婚を望むようになるまでは花嫁にはしない」
「そんな……っ!」
「猶予は2ヶ月ある。それまで、死者が増えるか、お前が俺を愛し、俺との結婚を望むようになるか、見ものだな」
そう言ってロードは笑い、姿を消した。




