第5話:天才技師ニルスの召喚と、魔導通信革命
皆様、第4話での「代官への精神的買収」への反響、ありがとうございます。
一瞬にして領地の支配権を掌握したリリアーヌ。
「……次は、情報の『回線』を通しましょうか」
カイルの「完全記憶」に眠る現代の通信プロトコルと、異世界の魔導技術の融合。
そして、その鍵を握るのが、かつてのビジネスパートナーであり、偏屈な天才技術者――ニルス(零)。
「……僕のコードを動かせるのは、世界で一人だけだ。……行くよ、リリアーヌ」
異世界に「魔導通信」の種が撒かれる、変革の第5話です。
代官を追放し、没収した資金でリリアーヌが最初に行ったのは、領都の中心にある古びた塔の買収だった。
「……カイル、準備は?」
「……ああ。この世界の『魔力波』を、特定の周波数で同期させる。……現代の無線通信理論を、魔法回路に置換したよ」
カイルが石畳に描いたのは、見たこともないほど緻密な、幾何学模様の魔法陣。
彼が指先で空間を叩くと、空気が「0」と「1」のノイズを孕んで震え始めた。
「……リリアーヌ。……信号、キャッチした。……北西300キロ。王都の地下スラムだ」
「……ふふ。やっぱりね。あの方は、日の当たる場所より、湿り気のある『バックドア』がお好きですもの」
私は、カイルが構築した即席の「魔導通話機」を手に取り、回線を開いた。
数秒のノイズの後、スピーカーから、酷く不機嫌そうで、けれど懐かしい声が響く。
『……誰だ。……僕のプライベート・アドレスに、現代の暗号化プロトコルで割り込んできたバカは』
「……お久しぶりですわ、ニルス。……いえ、零。……相変わらず、性格の悪いコードを書くのね?」
『……ッ!? ……蓮……か? ……一条、蓮なのか!?』
「……今は、リリアーヌ。……あなたを買い叩き(スカウトし)に来ましたわ。……軍資金は1000万、環境は私の領地。……あなたの『わがまま』な開発、ここでなら誰にも邪魔させませんわよ?」
『……ふん。……1000万じゃ足りない。……最低でも1億、それと……最高の魔導触媒を用意しろ』
「……お安い御用ですわ。……カイル、彼に『天下』の地図を送ってあげて」
カイルが端末を叩くと、ニルスの元へ、完全記憶から抽出された「未発見の資源マップ」と「新魔法の設計図」が転送される。
通信の向こうで、天才の息を呑む音が聞こえた。
『……わかった。……3日で行く。……馬車は遅いから、僕の作った「魔導バイク」を飛ばす』
「……お待ちしておりますわ」
回線を切ると、カイルが不敵に笑った。
「……これで、ハード、ソフト、そして『実務』が揃ったね。……リリアーヌ。君が掲げる『月商1000万』……いや、この領地の『GDP(国内総生産)』を10倍にする計画、始めようか」
「……ええ。……まずは、この世界の人々に教えてあげましょう。……情報の速さが、そのまま『富』の重さになるということを」
アステリア領に、異世界初の「魔導情報網」のアンテナが立つ。
それは、古い貴族社会の終焉を告げる、静かな宣戦布告だった。
第5話、いかがでしたでしょうか。
ついに主要メンバーが合流!
カイルの「完全記憶」、リリアーヌの「知略」、ニルスの「技術」、ハンスの「実務」。
最強のカルテットが、辺境の領地から世界を震撼させ始めます。




