第19話:真・王立国家の建国と、最後の手紙
皆様、第18話での「聖遺物ハッキング」への反響、ありがとうございます。
世界の消滅(強制終了)を阻止し、地上へと降下した浮遊要塞アステリア。
「……さて。散らかったおもちゃを片付けて、新しい『ルール』を配りましょうか」
王太子が自滅し、権力が真空となった地上。
カイルの「完全記憶」が導き出す無駄のない行政システムと、リリアーヌが人々の心に植え付ける「未来への希望」という名の洗脳。
それはもはや「支配」ではなく、人類というシステムの「大型アップデート」でした。
真・王立国家が産声を上げる第19話です。
アステリアの巨体が地上の「王都」のすぐ隣に着陸した時、そこにいたのは敵意を持った軍勢ではなく、救いを求める数万の民衆だった。
王権は失墜し、経済は破綻。世界は「リセット」を待つだけのフリーズ状態に陥っていた。
「……カイル様。……この混沌としたログ(状況)、どう整理されますこと?」
私は、泥にまみれた大地に降り立ち、扇子を広げた。
カイルは、魔導端末を通じて王国の全インフラをジャックし、瞬時に新しい「配給システム」と「治安維持プロトコル」を配信していく。
「……簡単だよ、リリアーヌ。……古い法律をすべて廃止し、僕の『完全記憶』にある『最も効率的な都市計画』をインストールするだけだ。……反対する者は、僕の論理が自動的に沈黙させる」
カイルが空に指を描くと、ホログラムの「新憲法」が王都の空に浮かび上がった。
それは身分制度の廃止、そして「能力(貢献度)」が通貨となる、全く新しい社会構造の宣言だった。
「……皆様、聞きなさい!」
私は、心理学における『威光暗示』を最大限に活用し、民衆の前に立った。
「……昨日までのあなたは、誰かに『奪われる側』でした。……ですが今日から、あなたは私の『知略』というシステムの一部です。……私に従いなさい。そうすれば、あなたの『価値』を、私が最大限に買い叩いて(活かして)差し上げますわ!」
民衆は、絶望の淵で現れた「美しき怪物」に、熱狂的な歓声で応えた。
心理学的な『メサイア・コンプレックス』の充足。
人々は支配されることに、これ以上ない安らぎを感じていた。
その日の夜、私は執務室で一通の手紙を書いていた。
宛先は、前世で私を突き落とし、この世界で「聖女」として散ったサキ(マリア)……の墓前でも、失脚した王太子でもない。
「……ハンス、これを」
「……これは? 社長」
ハンスが怪訝な顔で受け取る。
「……ニルスやカイル様にも内緒の、私の『遺言』よ。……もしもいつか、私がこの世界そのものを『バグ』だと感じてデリートしようとしたら……その手紙を読んで、私を殺しなさい」
ハンスの瞳が揺れる。
「……冗談でしょう?」
「……いいえ。……完全な知略は、時として『自分自身』さえもデバッグの対象にしてしまう。……そのための、最後のリミッターよ。……頼みましたわよ、私の『一番有能なマネージャー』さん?」
私は、窓の外に広がる、カイルが作り上げた「完璧な夜景」を見つめた。
全てが手に入った。富も、権力も、そして自分を理解するライバルさえも。
「……さあ、カイル様。……この物語の『エンディング・ロール』、どう書き換えますこと?」
第19話、いかがでしたでしょうか。
「影の女王」として世界を掌握したリリアーヌ。
しかし、彼女は自らの強大すぎる力を危惧し、ハンスに最後のリミッターを託しました。
カイルの「完全記憶」が導き出す未来は、果たしてハッピーエンドなのでしょうか。
次話、ついに最終回。




