第17話:アステリア防衛戦と、ハンスの限界突破
皆様、第16話での「感情マーケットの崩壊」への反響、ありがとうございます。
仮想世界の混乱を鎮めたのも束の間、地上の「旧人類」たちが、アステリアの技術を恐れ、巨大な艦隊で空を埋め尽くしました。
「……私の睡眠時間を妨げるとは、無能な働き者ほど厄介なバグはおりませんわ」
カイルが構築した「因果律演算」と、ニルスの「物理破壊兵器」。
そして、ボスの安眠を守るために、元・暗殺者ハンスが「一騎当千」の暴風となって戦場へダイブします。
アステリア防衛戦、開戦です。
浮遊要塞アステリアを包囲したのは、隣国と王国が手を組んだ「連合艦隊」。
その数、五百隻。放たれる魔導砲の光が、夜の空を昼間のように白く染める。
「……リリアーヌ。敵の砲撃アルゴリズム、あまりに単純だ。……僕の『完全記憶』に照らせば、次の弾道はすべて3秒前に予測できるよ」
カイルが指揮を執る要塞の防壁は、敵の攻撃が着弾する直前に、最小限の魔力で「無効化」を繰り返していた。
まるで、世界そのものがカイルの指先に同期しているかのような光景。
「……カイル様、防御だけでは退屈ですわ。……ハンス、準備は良くて?」
「……ええ。……社長に『月商1000万』以上の価値があること、証明してこなきゃなりませんからね」
ハンスの背中には、ニルスが開発した超高機動型・魔導翼『イカロス』が装着されていた。
彼は私の足元に跪き、不敵に笑う。
「……死神の弟子、行ってまいります」
ハンスが要塞の縁からダイブした。
落下速度を殺さず、流星となって敵艦隊の中央へ突っ込む。
心理学における『恐怖の飽和』。
たった一人の侵入者が、数千の兵士が守る戦艦を次々と沈めていく様を見せつけることで、敵の士気を「ゼロ」へと叩き落とす。
「……無駄だよ。君たちの動きは、すべて『記録済み』だ」
カイルが要塞から放つ「妨害電波」が、敵の連携を完全に引き裂く。
ハンスの剣が、敵兵の思考よりも速く振るわれ、戦艦の動力源だけを正確にデバッグ(破壊)していく。
「……さて。……指揮官の方には、私から特別な『ギフト』を送りましょうか」
私は魔導端末を通じて、連合艦隊の総旗艦へ直接、心理的な「バグ」を送信した。
それは、彼らがひた隠しにしてきた「愛する家族への遺言」や「裏切りを画策した証拠」。
カイルが完全記憶で暴き、私が最も残酷なタイミングで開示する「真実」という名の暴力。
「……あ、ああっ……! なぜそれを知っている……!?」
通信越しに聞こえる悲鳴。
物理的な砲火よりも、精神的な「崩壊」が艦隊を包み込んでいく。
「……これが私たちの『防衛』ですわ。……さあ、ハンス。最後の一隻……王太子の座る椅子を、物理的にデリートしてきなさい!」
空に上がる火柱。
沈みゆく艦隊を背に、リリアーヌは冷たく、そして美しく微笑んだ。
第17話、いかがでしたでしょうか。
カイルの予読とハンスの武力、そしてリリアーヌの精神攻撃。
物理的な軍勢を、三人の完璧な連携で圧倒しました。
しかし、沈みゆく旗艦の中で、王太子エドワードが「禁忌の魔導具」を起動させようとしています……。




