【第1話:断罪の宴、デバッグの始まり】
皆様、初めまして。
本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。
世に溢れる「悪役令嬢」の物語。
非道な仕打ちに耐え、あるいは魔法や聖女の力で逆転する……そんな王道も素敵ですが、本作のヒロイン、リリアーヌは少し毛色が違います。
彼女の前世は、日本最大のIT企業を率いた冷徹な実業家、一条蓮。
武器は魔法でも聖剣でもなく、「現代心理学」と「経営戦略」。
「暴力は野蛮ですわ。……精神を壊して(愛して)跪かせる方が、ずっと効率的ではなくて?」
そんな彼女の前に現れる、10歳の天才転生王子、カイル。
知略と完全記憶が交差する時、異世界の古い秩序は「デバッグ」の対象へと成り下がります。
一味違う、圧倒的な「知略によるざまぁ」。
それでは、第1話「断罪の宴」から、彼女たちの快進撃をお楽しみください。
「リリアーヌ・フォン・アステリア! 貴様のような冷酷な女、もはやこの国の王太子妃には相応しくない。……よって、今この場をもって婚約を破棄し、国外追放を命ずる!」
豪華絢爛な夜会の中心。王太子エドワードの罵声が響き渡る。
隣には、か弱いふりをして震える「ヒロイン」の男爵令嬢。
周囲の貴族たちは、勝ち誇ったような薄笑いを浮かべて私を見ている。
(……やれやれ。バグだらけのシナリオね)
私は、床に投げ捨てられた手袋を、扇子で静かに指し示した。
私の脳内には、前世――日本最大のIT企業を率いた「一条蓮」としての膨大な心理学データと、経営戦略が渦巻いている。
「……殿下。追放、結構ですわ。ですが、その前に一つだけ……『査定』をさせていただいてもよろしいかしら?」
「査定だと? 何を言っている!」
「あなたのその『正義感』、市場価値で言えば……0ギルですわ。むしろ、背後に控えている隣国の密偵への情報漏洩リスクを考えれば、マイナス10億といったところかしら?」
「なっ……!?」
私は、ニヤリと笑った。
心理学における『攪乱』。
相手が最も隠したい「弱み」を、最も華やかな場所で、最も残酷に曝け出す。
「暴力は野蛮ですわ。……でも、あなたのプライドを粉々に砕いて、私の足元に跪かせるのは……最高にエコロジーな娯楽だと思いませんこと?」
冷徹な知略の女王が、異世界の夜に産声を上げた瞬間だった。
第1話、いかがでしたでしょうか!
ここから、カイル(完全記憶の王子)との運命の出会いへと物語は加速していきます。




