12話 依頼を受けに行こう
モレントを出発するまであと11日もあることがわかった。イムタが朝一にバス停留所まで行って確認してきてくれたのだ。
その11日間、私は予定がなくて困っていた。そこで、イムタは何をする予定なのか訊いてみることにした。
「イムタはバスの出発日まで何をする予定なの?私、することが無くて困ってて」
「そうだねぇ、・・・僕は冒険者向けの依頼探しかな。酒場あたりの掲示板に出てるから、それをね」
「冒険者向けの依頼かぁ・・・」
冒険者、依頼、・・・今までの私には縁の無かった言葉だ。
「イムタは冒険者登録してるんだね、私は無いや」
”冒険者登録”。それはギルドで誰でも行うことができ、登録すれば様々なサービスや権利が貰えるのだ。
例えば、”一般の依頼を受けることができる”。指名依頼と限定条件付き依頼を除く全ての依頼が受けられるようになるということだ。
他にも、”宿屋や武器屋で料金割引をしてもらえる”、”素材買い取りが楽になる”といったものもある。色々と優遇されるようになるのだ。
つまり私は依頼を受けることができなく、登録したくてもギルドは王都、それまで何もすることがなくなってしまった。
「あちゃー、それだと依頼は受けられないね」
「もう完全にすることがなくなったわー・・・暇ー・・・」
「いや、それよりお金は大丈夫なの?ここの宿は安いといっても、カナは一泊で5スマするんだからね?」
「・・・言わないでよ、実はそれすっごく悩んでたんだから」
私は家を出るとき、今まで使ってこなかったお小遣いを全て持ち出してきたのだ。
しかし、たかがお小遣いがそんなに多いわけはなく、そろそろ尽きようとしていたのだった。
「・・・ちなみに今いくらか訊いても?」
「な、75520・・・」
「・・・単位は?」
お金には単位が2つあり、「スマ」と「ポミノ」である。1スマは10000ポミノという計算だ。
そして私の出す答えは・・・
「ポミノよ!75520ポミノ!」
「・・・」
イムタは絶句していた。なにせ、私はあと一泊できるお金しか無いのだから。
私は半泣きで蹲る。
しかしイムタはすぐに切り替え、私に提案をしてきた。
「・・・カナ、ひとつ提案がある」
「何よ・・・もう野宿先は目処がたってるから今更紹介してくれなくてもいいわよ?」
「違う、そうじゃなくて。・・・えっとねカナ、僕に雇われてくれないかい?報酬は、僕が受ける依頼の報酬の半分で」
「・・・2人で依頼を受けて、山分けするってこと?ほ、ホントにいいの?」
「いいよ、僕1人じゃ難しい依頼もこなせそうだし、それにその分報酬額が上がるからね」
もしかしたら足を引っ張ってしまうような私を雇うと言ってくれるイムタに、私は感謝と感激をこめて飛び込むのであった。
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私達はさっそく掲示板を見るため酒場に来ている。
「そ、それじゃあ、どの依頼を受けようか」
「そうねぇ・・・」
イムタの顔が赤い。そういえばさっき、抱きついたときに私の双丘があたっていたような・・・。イムタにはちょっと悪いことをしちゃったみたい、反省しなきゃ。
「あ、この”低級魔獣数種素材集め”ってどう?」
「そうだね、こっちの中級魔獣の方でもいけるとは思うけど、先にそっちで肩慣らししておくべきだね。お互いの実力も把握しておきたいし」
「じゃあ決まり。あとは依頼主さんのとこまでいけばいいのかな?」
「依頼差出人の住所は・・・っと、あった。よし、行こうか」
私達は酒場をあとにし、依頼主さんの所に向かって行った。
依頼主さんの名前はバラッド・シルバ。魔獣の素材を加工してバッグやアクセサリーを作る仕事をしている人だ。そのため、よくこういった依頼を出すらしい。
そのバラッドさんの家に到着した私達は、さっそく扉をたたく。
「すみませーん、バラッドさんはいらっしゃいますか?依頼を受けに来た者です」
イムタがそう言うと、すぐにドアが開いて中から人が出てきた。
「やあ、依頼を受けに来てくれたんだね。俺が依頼差出人のバラッドだ。ささ、あがってあがって」
出てきたのは、背の高く髪と目が黒い厳ついおじさんだった。
喋り方が優しいから見た目とのギャップがすごい・・・!
私達はバラッドのお言葉に甘えて、そのままリビングまで案内されていった。
「君達が今回依頼を受けてくれるんだね。名前を訊いてもいいかね?」
「はい。はじめまして、イムタ・シュトルスです。それでこっちが」
「は、はじめまして!・・・カナ・チェミストです」
「イムタさんと・・・カナさんね・・・はいはい。いくつか依頼を出していたんだが、どの依頼かね?」
「低級魔獣数種素材集めというのを受けに参りました」
「おお、そうかいそうかい。じゃあさっそく説明をさせてもらうよ」
「お願いします」
「お、お願い・・・します」
「まずは依頼目的だね。俺は魔獣の素材を使ったアクセサリーとかを作っていてな、その素材が欲しいんだ。そこで、こうやって依頼を出して素材を仕入れているってわけさ」
確かに、このリビングを見渡すだけでもたくさんのアクセサリーやブレスレットが飾られている。バッグやおきものもあって、どれも本当に巧妙で綺麗だ。とても見入ってしまう。
「おや、お嬢ちゃんも気に入ってくれたかい?」
「えっ、あぁ・・・はい」
見ていたら声をかけられてしまった。集中して話を聞かなきゃ。
「次に対象の魔獣だが、これを見てくれ」
そう言ってバラッドは、一枚の紙を広げた。そこには、この町周辺の地図と魔獣の説明が記載されていた。
「各魔獣の取るべき素材を書いてあるから、これを持って確認しながら依頼をこなしてくれ」
「これは分かりやすくていい、とても助かります」
「それで最後に、報酬についてだ。基本的には、ギルドでの買い取り価格+人数×価格の10%の計算だけど、大丈夫かい?」
「ええ、計算はできますから」
「それはよかった」
世の中には、まともな教育を受けられず字が読めなかったり計算ができなかったりする人もいる。イムタと私はちゃんとできたが、できない人もよく依頼を受けるため、バラッドはそれを懸念していたのだ。
「じゃあ今回は2人だから・・・」
「あ、待ってください。今回は1人の扱いでお願いします、彼女は僕が雇っているだけで冒険者登録をしていないんです」
「おや、そうかい。手伝うだけなら構わんが、確かに冒険者登録してるやつにしか報酬は払えんからなぁ。それでもいいって言うならそうさせてもらうよ」
「ありがとうございます」
さすがに私は報酬を貰えないと思い、イムタは気付いて確認をしてくれたのだ。
・・・なんか私、いろいろイムタに頼りすぎだなぁ、ちょっと悪い気もしてきた。
「依頼についての説明はこんなところかな。他に質問はいいかね?」
「いいえ、特にはありません」
「それなら依頼の方、よろしくお願いします」
「はい、しっかりと依頼を受けさせていただきます。よろしくお願いします」
「お、おねがいします!」
こうして私達は素材を集めるべく、魔獣のもとへと向かうのであった。




