表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した腐女子は恋をさせる  作者: 山下久美
2/3

02

 私は一二歳にして立つ。


 今の私は王立魔術学院で学ぶ学生だ。

 魔術はけっこう面白い。

 でも、絵や漫画を描くのはもっと面白い。


 私には何人かの学友がいる。

 腐教だ。

 大いなる腐教をするのだ。


 私は美少年のイラストを次々と描いて、親しい友人に見せていった。

 もちろん、全員がくいつくわけではない。

 しかし、何人かは本気でほめてくれた。


 次の作品があれば、是非見せて欲しい、と。


 それで、次は漫画を投入する。

 この世界に漫画はない。

 イラストにちょこっとした言葉がついている作品ならある。


 しかし、完全な漫画形式の作品はなかった。

 ならば、私が始祖となればいい。


 だが、いきなりBLはまずいと思わざるを得なかった。

 そこで、私は建国王にして勇者であるアキラの伝記を漫画化した。


 これが学内で大ヒットする。

 カードゲーム、ボードゲームなどはいくつかある。

 しかし、現代日本と比べたら、娯楽には乏しい世界だ。


 ククク、子供には堅苦しい本よりは、やはり漫画が面白いものよ。

 まずは漫画を読む楽しさを知らしめよう。


 気分は子供を洗脳していく大魔王だ。

 とはいっても、平和なものだと私は思う。

 最後は女子を腐女子に変えたいとは思っているが、問題ないだろう。


 私は一五歳にして惑わず、漫画普及にまい進していた。

 小遣いを利用して、私の漫画を木版画で大量生産し始める。


 白黒だが、漫画なら十分だ。

 私の漫画は爆発的に売れた。

 刷って刷って刷りまくる。

 漫画が新たな財を産む。


 私には何人もの弟子入り志願者がやってきた。

 寛容な私はほぼ全てを受け入れる。

 漫画を普及させるには人手が必要だからだ。


 競争相手もちらほら出てきたが、それも望ましい。

 漫画市場は開拓されたばかり。

 パイを大きくするためにも、書き手が増えるのは私にとって悪くない話だ。


 私は一八歳にして、ついに天命を果たす。

 BL漫画の出版だ。

 ボーイズラブを世界へ羽ばたかせるのだ。


 両親は結婚をすすめるが、私は聞く耳をもたなかった。

 すでに財政基盤は確立してある。

 公爵家からたたき出されても問題はない。

 とはいっても、本気で怒らせたら、権力でつぶされるだろうが。


 しかし、両親は優しく、私のわがままを許してくれた。

 ありがとうございます、父上、母上。

 これで私はボーイズラブの普及にとりかかれます。


 この世界において、同性愛は禁忌ではない。

 しかし、推奨もされていないし、嫌悪する人間も数多い。

 なので、私は漫画の名声が確立されるまで、待ってきたのだ。

 漫画の美少年に読者の目を惹きつけてきたのだ。


 漫画→美少年→ボーイズラブ。

 この順序で読者をこの世界に引きずり込む。


 BL本第一号はなんとカラー印刷だ。

 今まで蓄えた財を使って、多色刷りを挑戦させていた。

 その技法がついに確立できていたのだ。


 採算は度外視。

 クォリティを高めて、女子の心をわしづかみにする。

 そう、ぎゅっと。

 首を絞めるかのように。


 モデルは少年の頃のお兄様と第二王子だ。

 ばれるとやばいから、髪や瞳の色を変えて、多少、顔立ちも変化させる。

 立場ある二人の美少年が禁断の恋に陥る、という王道で勝負する。


 今では、私は出版社をたちあげている。

 私だけではなく、多くの弟子が漫画本を出していた。


 ペンネームはさすがに変えておこう。

 背景をアシスタントに書かせて、タッチでばれにくいように手を打つ。

 私のタッチをまねる弟子も大勢いるので、わかりにくいだろう。


 ついに、ペンネーム「アンドレ」の新作BL漫画「愛は全てを駆逐する」を出版した。

 しかし、売れ行きは思わしくなかった。


 書店で何人もの女子がこの本をちらちら見つめる。

 しかし、購入にまで踏み切れる猛者が実に少なかった。


 書店の様子を見に来た私は失敗を悟る。

 チッ、かわいこぶらずに、欲望のまま振舞えばよいものを。


 このままではまずい。

 そうだ。

 ならば、通販だ。


 人の目を気にせず、読めるようにしてやろう。

 書名をカムフラージュして包装し、届けてやればいい。

 私は特別サービスつきの配送業を始めた。


 ついでに、学院でチェックしていた染まりそうな女子に無料で配布していく。

 金はかかるが、BL文化を布教するためだ。

 仕方ない出費だろう。


 普及活動が実を結び、「愛は全てを駆逐する」の売り上げは上がっていった。

 そもそも、カラー印刷でクォリティは極めて高いのだ。

 売れないわけがなかった。


 私の魂が込められた渾身の一作なのだから。


 しかし、私の下へ不幸が訪れる。

 アトリエにお兄様がやってきたのだ。


 優しいお兄様の背後に鬼が見える。

 怖かった。

 身にまとう冷気が私に襲い掛かってきていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ