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最終話 曇り一時嵐、のち・・・

いよいよ最終話です。

短めです。

 雪原にそびえ立つ、煙突の様な高い塔の天辺(てっぺん)にあるハッチが開き、中年男性が顔を出した。


「今日は何か眩しいな。晴天日かなにかか?」


 頭に付けていたサングラスを目にやり、中年男性は天を仰いだ。


「すみませんね、先輩。相方が盲腸らしくて」

「予備要員も例の排水作業に回ってる様で、こうして卒業したOBに出動願ってるって訳です」


 雪掻きをしながら答えたのは、二十代の男性二人だ。


「話は聞いてるよ。でも、こんな軽装で大丈夫なのか?いつ吹雪に戻るか分からないだろう?」


 軽装と言っても、防寒コートと手袋はしてある。

 彼が【軽装】と言ったのは、以前はフルフェイスマスクと電熱ヒーター、呼吸補助具を付けていたからだ。


「先輩の時は、そうでしたよね。ただ、日ごとに気温は上がり吹雪も減ってるんですよ」

「話には聞いていたが、あの異常気象からか?」

「はい。そうみたいです」


 中年男性は、作業していた一人からスコップを受けとると、雪掻きを交代した。

 既に交代時間を少し遅れており、交代要員の彼が手を休める訳にはいかないのだ。

 スコップを手渡した男性は、手荷物をまとめて、中年男性が出てきたハッチへと向かっている。


「じゃあ、上がります」

「はい、気を付けて」


 日本ならば『お疲れ様』と交わす挨拶だが、ここはアメリカの避難シェルターだ。

 この塔は、シェルターの吸排気口を兼ねた監視塔なのだ。


 監視業務は八時間労働で、四時間おきに交代要員がやって来る。

 中年男性は、病欠の為に急遽呼び出された元監視要員だ。


 【異常気象】とは一年程前、急に空気まで凍る様な日が数日間続き、ハッチが開かず、監視要員が凍死した事件が有ったのだ。

 最初は気温計の異常かと思われたが、やっと数日のハッチ加熱が効果を出しはじめて開いた先は、雪ではなく完全に氷の壁だったらしい。


 恐らくは広域ダウンバーストの様なものが起きて、宇宙が地表近くまで迫ったのではないかと考えられたが、本当の事はシェルターでは分からなかった。


「それにしても、本当に様変わりしたな。俺が登っていた十年前より雪が少ないんじゃないか?」

「十年も前じゃ無いでしょ?でも、雪は年々溶けて川が出来てますよ。本では読んでましたが、実物を見た時はビックリしましたよ」

「あれがソウか?俺も初めて見るよ。でも【川】って土の上を流れるんじゃなかったっけ?」

「流石に、まだ雪が積もっていますからね」


 塔の上から見ると雪のクレパスの間から、異様に光を反射する煌めきが見えている。


 時間が来て雪掻きの手を止めると、電熱ヒーターで暖めなおされた珈琲を口にして、二人は腰をおろした。

 交代時間に雪掻きをするのは、積雪量によっては残業アリの三人掛かりとなるからだ。

 しかし、最近は三人掛かりも無く、以前より早く雪掻きが完了する。


 とは言え、降雪時でなくとも細部までやるとキリが無いので、必要最低限以外は時間で作業を区切ってはいる。


「そう言えば、何か仕事が増えたって聞いたけど?」


 珈琲を飲み終えた中年男性が、思い出した様に後輩を見た。

 詳しくは、現地で聞けと言われていたのだ。


「先輩の時から増えたと言えば、太陽光量の測定と地表の撮影ですね。天気と気温観測、監視は、そのままです」

「増えたな!でも、雪掻きが減ったって言うから暇潰しには良いか?」


 仕事の種類が増えたのは、以前よりも晴天日が増えて太陽が輝きを増したからだ。


 だが、監視員にしてみれば太陽の輝きより、吹雪が減った分だけ周囲監視も楽になったし、外気温が氷点下と言えども一桁になった方が有難い。

 増えた業務も、三時間おきに数分で終わるので苦ではないだろう。


「このまま暖かくなれば、地上生活に戻れるんじゃ無いのか?」

「管理部の方じゃ、一時的な温暖化かも知れないので用心してる見たいですよ」


 西暦二千年代では、間氷期に少し暑くなって水位が上がったのを【地球温暖化】と言って、今回の様な氷河期状態に対する準備を怠っていた。

 その経験が伝え受け継がれてきたので、彼等は慎重になっているのだ。


 そもそも、【氷河期】対象で無くとも、下らぬ勢力争いで物資や時間を無駄にしていなければ今の彼等は、もう少しマシな未来が来ていただろう。


 日本以外の海外先進国の一部では、災害だけでなく戦争も視野に入れてシェルターを作っていた。


 そのお陰で、かなりの人数がシェルターに避難できたが、百年近い避難を想定していた所は少なく、既に人類の数は最盛期の一割を切っていた。


「仮に、このまま暖かくなっても、人間が生き残れるかどうかは怪しいらしいけどな」


 生き残れたシェルターでも、物資の不足による人口削減をしなければ、崩壊してしまうからだ。

 そして、人間という弱い種は、ある程度の数が居ないと文明だけでなく、近親結婚による遺伝子異常で【(しゅ)】自体が滅んでしまうのだ。


「でも、この天気みたいに希望も有る訳でしょう?」

「確かにな。このまま晴れてくれれば、何とかなるかも知れないよな」


 先の事は分からないが、こんな時代に希望を持つのは悪い事どはない。




 地球を悩ませていた宇宙雲は、飛来したブラックホールが引っ張って行った様な状態だ。

 希薄になった星間物質は、太陽風の影響で外宇宙へと吹き飛ばされつつある。

 木星など、幾つかの惑星が犠牲になったが、幸いにも地球と月には影響が少なかった。



 地上の彼等には届かないが、空の上では今日も【宇宙天気予報】が流れていた。


『今期の太陽系の天気は、曇り一時嵐、のちに晴れるでしょう』



ーーーーー END ーーーーー

久々に、バッドエンド以外を描きました(笑)

実際に超新星爆発による雲より、月が人工天体で百年日食を続けた方が地球凍結すると、ChatGPTでは言っています(笑)

どこまでがSFで、どこまでが真実か?

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