第12話 槍の威力
「おう、アレグリア。お前とハヤトを疑うわけじゃないが、本当に槍の才能があるのか、試させてもらうぞ。裏庭にちょっとした試し斬りができるスペースがある。ついてこい!!」
俺たちはブロディさんについていき、裏庭に行く。
もちろんアレグリアは氷属性が付与された槍を大切に握り締めている。
裏庭まで行くと、藁でできた等身大の人形が置いてあった。
「この人形を思いっきり突いて見せろ」
ブロディさんが人形の胸の辺りを叩いて言う。
「は、はい。やってみます!!」
ブロディさんから言われ、槍を構えるアレグリア。なかなか様になっている。
腰を落とし、重心を下に持っていく。すり足で『ジリジリ』と人形に近づいていき『やあぁぁぁ~~~!!』と、気合の入った大声を出しながら、人形の胸のあたりを一突きする。
突きは見事なまでに人形を貫き、その勢いで人形の後の壁まで、大きな穴が開いてしまった。
「……………」
「……………」
「……………」
俺とブロディさんはその光景を見て絶句してしまう。おまけに突きを放った本人のアレグリアさえもが絶句して固まってしまっている。
「ま、まさか…ここまで凄いとは…まだ修練を積んでない状態で…この威力」
俺はようやく落ち着きを取り戻して呟いた。
ブロディさんが人形に近づき『この人形の中には分厚い鉄板が仕込まれていたんだがな…規格外の威力だぞ』と言って、人形の表面の藁を取って見せた。分厚い鉄板が姿を現し、真ん中に見事な穴が開いていた。
「………ちょっと待て。この鉄板…凍ってないか?」
ブロディさんがそう言って、穴が開いた鉄板を叩いて見せる。
「コン、コン、コン」
甲高い音が鳴り響くと『わっははは!!キンキンに冷えてるぞ!!』と、ブロディさんが大笑いして言った。
このブロディさんの大きな笑い声で正気を取り戻したアレグリアが『す、凄い!!ハヤト…凄いよ、凄い!!本当に凄い!!私にこんな力が…信じられない…信じられない』と言い、目に涙を溜めて喜ぶ。
俺はそんなアレグリアに近づき、頭を『ポンポン』と叩きながら『良かったな』と、一言、声をかけた。
「ハヤト…全部ハヤトのおかげだよ」
「アレグリア、まだ早すぎるぞ。俺はただ助言をしただけ…これから自分自身の努力でS級冒険者まで駆け上がっていけよ」
「う、うん。わかったわ。でも…改めて一言、言わせてほしいの。ありがとう。心から感謝しています」
深々と頭を下げて、俺に対してお礼を言うアレグリア。そんな彼女の姿を見て、心の底から『この世界に来て良かった』と思えたのだった。
「よっしゃ!!アレグリア、防具や穂鞘も必要だろう。応接室で待ってろ。今用意してやる」
ブロディさんはそう言って、工房の中に戻っていった。俺達も一旦、応接室に戻る。
応接室ではアレグリアが槍を見つめながら『ニコニコ』と笑っている。今の試し斬りの事や、これからの事を心の中で思い描いて、自然と笑顔が溢れてくるようだ。
「アレグリア、良い笑顔だね。見ていると俺まで笑顔になってしまうよ」
「えへへっ、これからの事を思うと『ワクワク』してしまって、自然と笑顔になってしまうの」
少し顔を赤くして、照れながら話すアレグリアが可愛い。
「やっぱりアレグリアには笑顔が似合うね。でも可愛さと美しさが同居して、それに強さまで加わったら…俺の手の届かないところに行ってしまわないか、少し心配だけどね」
「………ハヤト。私はハヤトとずっと一緒にいたい。恩人として、いいえ。男性としてハヤトの事が…」
俺とアレグリアは見つめ合う…が『おい!!アレグリア。防具を用意したからこっちへ来い!!』と、ブロディさんの大声がして、俺とアレグリアは慌てて部屋を出て行く。
俺はアレグリアの後姿を見ながら『ごめんな、アレグリア。鑑定スキルを使ったから、君の気持ちはわかっているんだ。ありがとう。俺もずっと君のそばにいたいと思っているよ』と、心の中で呟いた。
部屋の中へ入っていくと、テーブルの上には鎧や籠手、それにすね当てなどが所狭しと並べられていた。
「…凄いね。質の良い物ばかりだ」
俺が思わず呟くと、ブロディさんが『ニカッ』と笑い『がはははっ、わかるか!!ここにあるのは、わしの傑作ばかりだ。気に入った物を持っていけ!!」
「いいんですか!?でも…お高いんでしょ?」
アレグリアが心配そうにブロディさんに聞いた。
「がはははっ!!2500万入れば釣りがくるわ!!金はいらん。好きなやつを持っていけ!!」
ブロディさんは、そんなアレグリアの心配を豪快に笑い飛ばし、気前の良いところを見せつけたのだった。
【アレグリア視点】
(こ、これがSランクの槍の力…)
藁の中に仕込んであった分厚い鉄板に大きな穴が開いて、おまけに鉄板が凍っている。目の前にある無残な人形や後ろの壁を見て私は絶句し、正気に戻るまで時間がかかってしまった。
(剣ではどんなに努力してもダメだった私が…)
「す、凄い!!ハヤト…凄いよ、凄い!!本当に凄い!!私にこんな力が…信じられない…信じられない」
興奮して早口でまくし立ててしまうが、そんな私の事を笑顔で見つめているハヤトに気づいて、語彙力の乏しさを恥じてしまう。
でも、ブロディさんがいなければ私はハヤトに抱き着いていただろう。嬉しすぎてもう泣きそうだ。
そんな私にハヤトが『良かったな』と言って、頭を撫でてくれた。
私は可能な限り心を込めて『ありがとう、感謝しています』と、ハヤトに素直な気持ちを伝えた。
そして心の中で『大好きだよ。いつまでも一緒にいたい』と、願ったのだった。




