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24 出会ってしまった 【セシルsaid】
そう思っていると、彼女と目があった。
なぜか、彼女はひどく驚いた顔した。
「君、名前は?」
そんな言葉が、自然と出てきた。
その問いに、彼女は一瞬悩んだ素振りを見せ、それから微笑んで答えた。
「ルアリナと申します。平民なので姓はありません」
俺はその名を心の中で繰り返した。
その名前が、どこかで聞いたことがあるような気がした。
しかし、それが何かはわからなかった。
「ルアリナ、か…」
その言葉を聞いて、俺の心に強く響いたものがあった。
それは、彼女を見たとき、まるで長い間探し続けていた“何か”がようやく見つかったような気がした。
なぜかわからないのがもどかしい。
「ルアリナ、君は…本当に平民なのか?」
俺はその質問を、疑問というよりも、何か確かめるように問いかけた。
失礼に聞こえるのはわかっている。
ルアリナは少し困惑したように俺を見つめ、軽く頷いた。
「はい」
俺の中では、もう一つの問いが渦巻いていた。
——どうして、この女性にこんなに惹かれるんだ?
その理由を理解できずに、俺は心の中で自問自答を繰り返した。




