ep29 1つの変貌
『やめろぉぉぉおお!!』
叫びつつ、エイドは敵のもとへと歩を進める。その後を追うように、リリとアリスも急行する。
そして近づいたことにより、ドラゴンが血を流していることに気がついた。
『血が……。許せませんわ!』
リリも憤慨している。そうだろう。ドラゴンの鱗は硬く、傷つきにくい。なのにウロコを貫き、流血するほどの攻撃をしたということなのだから。
『絶対に許せねぇ!』
「待って! エイド、そのままじゃドラゴンにあた……」
エイドはアリスの制止も聞かず、敵に殴りかかる。いや、殴りかかろうとした。が、何者かに止められたかのようにエイドの青龍は静止した。
『なっ!?』
―我、血族を見つけたり
「な…… 何あれ……」
青龍が光に包まれている。そして、みんなの脳裏に響いた声。何かが起ころうとしているのは、一目瞭然だった。
『エイド! 応答しなさい、エイド!!』
通信機からはリリの声は響くものの、本人からの返信はない。
『応答……しなさいよ……』
しばらくしてリリの声が弱弱しくなり始めたとき、その光も弱まっていった。そして青龍の姿が目視できるようになり、みんなが異変に気づいた。
青龍の色が変わっていた。綺麗な青から、どこか毒々しく感じる緑へと。見覚えのある緑だと思い、ハタと気づいた――ここに来たときに一瞬だけ見えた光の色だと。
『……何のまねですか……?』
男の声が響いた。前にアリスが戦った近衛兵の声だ。「分からない」と答えようとしたやさき、男の声が響いた。
『オレも知るかよ……。だがな、声が聞こえたんだ! 仲間を見殺しにできねぇって言う、青龍のな!』