ep30 2つの憤怒
『そいつを放せ! ……悪ぃけど、こいつがどう動くかはオレにも予測がつかねぇんだ』
変わった駆動音があたりに響いている。ひどく重い、うなるような低音。まるで、青龍の怒りを代弁しているかのような駆動音だった。
『こいつの怒りが爆発する前に、放したほうがいいと思うぜ?』
『……ふむ』
エイドの警告を受け入れたのか、親衛隊はドラゴンを放した。
『これでいいですか?』
ドラゴンが去っていくのを見届け、親衛隊がこちらに向きを変えた。
『これで全力で戦っていただけますか? ……進化を遂げた、あなたの機体には興味がありますね』
親衛隊機がファイティングポーズよろしく、機体の重心を低く構えた。
『戦い、その機体を奪えば、こちらも進化できる機械を作れるかもしれませんからね』
丁寧な敬語の裏に、親衛隊の興奮が伝わってくる。
金属音が響き、敵機のパーツが地面へと落ちた。プロテクターを外したままのポーズで指先を動かし、「かかってこい」を言わんばかりの挑発をしてきた。
『すみません。興味があるものができると、饒舌になっちゃうみたいで。……お先にどうぞ』
「エイド、どうする? ……エイド?」
アリスは、聞こえてきた挑戦に対するエイドの回答を聞いた。
……が返事はなく、答える代わりに青龍は敵機の前へと進み出た。
『我、挑戦受けたり。汝ら粛清す』
スピーカーから聞こえた返答は、エイドの声ではなかった。――脳裏に響いた声のようだった。……いや、やはり声色の変わったエイドの声だ。
『エイド……ですわよね?』
リリの震える声の質問に返ってきたのは、こんな返答だった。
『否。我、汝ら曰く“東方の守護神”なり。名を――』




