第74話 強化訓練
昨日選んだフレイヤさんのスキルは、ファイターのアタック。効果は、攻撃力とスピードを一定時間2倍にするので、接近戦も得意なフレイヤさんには最適だ。その他のスキルも接近戦に有利な物から取得した。
俺と浩史が悩んだのは武器。俺か浩史のコレクションを渡そうかと思ったが、俺達が持っている武器はアイテムレベルⅷ。フレイヤさんはレベルが90以上になっているので、レベルⅸのアイテムが購入出来る。
接近戦の武器は、魔法効果のある剣を使うので、4つの武器スロットルは全て銃にする事にした。
端末ショップで購入出来る銃しか選べないので、ハンドガンはベレッタM92、接近戦用のショットガンはM97、狙撃用のスナイパーライフルはドラグノフ、4つ目は攻撃力の高いRPG-7を選んだ。
スペシャルアイテムは、俺と浩史で余っている物を、コンバットアーマーと銃にセットしたが、スキル1.5倍はオフラインシナリオのクリア特典なので、1つしか持ってない。
逆に銃にセット出来るスペシャルアイテムは、死亡ペナルティーの関係で多く持っていた。死亡すると4つの武器はその場に落ちて5レベル下がり、ホームかゲート施設の医療カプセルで目覚める。
死んだ場所に戻れば、武器を回収する事も可能だが、所有権が解除され他のプレーヤーに拾われたり、消滅したりする。
フレイヤさんの装備の話に戻して、4つの武器スロットルは、1つ目がベレッタM92で威力1.5倍、弾数1.5倍。2つ目がM97で有効射程1.5倍、弾数1.5倍。3つ目がドラグノフで威力1.5倍、弾数1.5倍。4つ目がRPG-7で威力1.5倍、弾速1.5倍となった。
コンバットアーマーのスペシャルアイテムは重複した手持ちがない為、ジャンプ力強化だけを装備して貰って追々考える。
訓練1日目は、コンバットアーマーや網膜システム、通信の練習をした。
レーダー表示を大きくしたり小さくしたり、自分の使いやすい様に、コンバットアーマーの機能を調整しながら体験して貰った。ゲームならチュートリアルで体験出来るが、今は、そんな都合のいい機能はないので、俺と浩史で思い出しながら実施している。
夜は就寝まで銃の射撃練習。練習はホームの射撃練習場で行い、使い方を覚えて貰って、弾の種類と威力を体験して貰った。
2日目は、昨日の復習とドローン操作、メイン端末の使い方を覚えて貰って、夜は射撃の練習。
3日目は、昨日の復習と支援機の特性説明と操作。昼と夜に屋外での射撃練習。
4日目は、昨日の復習と工作室や整備場の説明。屋外での射撃練習。
5日目からは、的を魔物に変更して実戦形式での射撃練習。
5日目の訓練で判った事がある。フレイヤさんが魔法を使う時には、コンバットアーマーの手の部分を解除する必要がある。コンバットアーマーを全て展開させていると、体内の魔力が外に出ないので、魔法が不発に終わってしまう。
浩史がコンバットアーマーの素材を変更出来ないか色々試していたが、変更は無理だった。手の部分の素材をミスリスに変更出来れば、密閉状態のままでも魔法を撃てると考えていた様だが、現実は甘くなかった。
結局、コンバットアーマーの密閉性を放棄して、カスタイマイズで手の平だけは生身のままにして対処した。毒ガスなどの攻撃は、フレイヤさん本来の能力で対応して貰うしかない。
8日目になると、フレイヤさんの戦闘スタイルも段々と確立されて行き、魔物を見付けると、最初はショットガンや魔法で対応して、近接戦闘に入ると剣と魔法で対処。時々、牽制などでハンドガンも使用する。
最後の2日間で連携の練習に入った。
通常の隊列は俺が先頭で、次が浩史、フレイヤさんが最後。最初に遠距離から俺と浩史で攻撃して、フレイヤさんは俺達への指示をするかスナイパーライフルで攻撃して、距離が150mを切ったらフレイヤさんが近接攻撃に移り、俺達のどちらかは援護に回る。
他にも、射線に重ならない位置取りやリロード時の役割分担も覚えて貰って、ガーディアン戦で役立てたい。
フレイヤさんの銃に対する考え方は、俺達と違い使い切りに近い。戦闘中にリロードはしない。
確かに、ショットガンのリロードは少し時間が掛かるので、一応、納得出来るが、ハンドガンまでもリロードをしない。弾が無くなったらホルスターに戻すか、アイテムBOXへ戻して、剣と魔法で戦う。
戦闘が終わると、リロードして次の戦闘に使用する。銃を使っていると、1番無防備になるリロードを嫌う気持ちは理解出来るし、フレイヤさんの魔法が強力なので、この戦闘スタイルになったのは理解出来る。
ゲームでは次の追加シナリオで、武器の追加機能も噂されていた。この機能は、マガジンが空になると自動的にマガジンを排出するイジェクト機能が追加されるとネットで噂に上がっていた。
是非、欲しい機能だったが、無い物強請りをしてもしょうがない。
フレイヤさんには10日間で、一通りの事を覚えて貰ったが、普段のフレイヤさんからは考えられない位に、俺達の言う事を素直に聞いてくれた。
「フレイヤさん、これで基本的な事は全てです。どうでしたか?」
「そうだな、お金、いや、Gだったな。どの様にして稼ぐのが良いのか…」
フレイヤさんの手持ちGは、浩史から譲られたGなので、今後は自分で稼ぐ事になるので、効率がいい稼ぎ方を教える事にする。
「一応、俺達は宝石を端末ショップで売却してGを稼いでいます。ミスリルなどの鉱石も売却できますが、この世界の鉱石が減る可能性もあるので、今の所、売却は宝石のみにしています」
端末ショップで売った物が、どうなるのか不明なので、無くても困らない宝石を売っている。
「宝石か…、暫くダンジョンに潜るか…、手持ちの宝石は売りたくないし…」
「じゃあ、明日はガーディアンと戦いますので、朝食を済ませて多目的ルームに集合でお願いします」
「分かった」
フレイヤさんが返事をして、浩史も頷いているが、考え事でもしているのか、ここ数日、何か悩んでいる様だ。
「それにしても、基本的な事は面白味に欠けるので『もっと別の事をやらせろ』と言われると思っていました」
フレイヤさんが、素直に俺達の指示に従ってくれたので、順序良く説明する事が出来た。
「私は、それ程、我儘じゃない。
教えを乞う時には普通だと思うが?それに、このコンバットアーマーなどは、お前達の利点だったのだろう?
予想以上に優れた物だ。十分に感謝している表れだな」
「フレイヤさんには、色々して貰っているので、気に入って貰えて何よりです」
元々、俺は仲間に入れる事を考えてなかったが、仲間になった今はフレイヤさんが喜んでくれるなら、それでいいと思っている。もう取り消せないし。
「それと射撃の練習は、全ての武器で定期的に行って下さい」
「了解した」
3人共、明日の準備をする為に、ホームに戻った。
ホームに戻ると、浩史が俺とフレイヤさんを呼び止めて、話があると言ったので多目的ルームに移った。
「俺も、いざって時の為に、対人戦闘を経験した方がいいと思うんだけど?」
浩史から対人戦闘の事を言われたが、俺もフレイヤさんも頭に?が浮かぶ。
「対人戦闘なら散々やって来ただろ。今更、何を言ってる?」
「マサキ少し待て、ヒロシもう少し詳しく説明してみろ」
行き成りの話だったので、フレイヤさんが詳しい説明を浩史に要求すると、浩史が考えながら話し始めた。
「この前、マツオカチームと一緒にファンドラ国で盗賊退治の依頼を受けたんだ。
最初は盗賊達の腕や足を撃って無力化したんだけど、盗賊を縛る時にアネットが人質になりそうになって、ロンが気付いてそいつを殺したんだけど、俺だったら殺せるのか心配になって。
人を殺す経験をしておいた方が、いざって時に慌てなくて済むと思うんだけど?」
そんな事あった何て知らなかったが、人を殺す経験か、必要なのか?
「ヒロシは、それ程の戦闘能力があるのに、人を殺した事が無いのか?」
俺達の戦闘経験がゲームだと言っても、この世界の人には理解出来ないと思うし、説明しても納得して貰えるか自信が無いので、別の答えを用意する。
「俺達の世界には警察という大変優秀な組織があります。どの程度、優秀かと言うと、罪を犯せば大抵捕まります。
人を殺せば、それこそ警察が血眼になって捜査しますので、逃げ切れるのは極僅かです。特に日本は治安もいいですし、襲われる事も無いので、人を殺す必要が全くありません。
因みに、俺も日本では人を殺した事はありませんよ」
この説明で納得して貰えたかな?この世界の人に信用して貰えるか疑問だが、本当の事だからしょうがない。
「二ホンの事は知らないが、この世界では、人を殺す必要がある時もあるぞ」
「フレイヤさんが言っているのは、自分や周囲の人を守りたい時だと思うのですが、逃げればいいのでは?」
フレイヤさんの言いたい事は理解出来るが、今までの事を思い返して、1人も殺さずにやって来れたかと聞かれれば、可能だったと思う。
殺した方が単純で効率的だと思ったから殺したけど、時間を掛けたり相手に譲歩したりすれば、殺す必要はないと思うけど?まあ、多少の脅しは必要になると思うが。
「逃げれば追って来るぞ?」
「フレイヤさんや俺達が本気で逃げたら、追って来れるのはエキドナ位では?」
「…確かに、それでは、子供達が人質に取られていたら、それでも逃げるのか?」
「浩史、さっきの話だけど、もしアネットが人質に取られても、もう一度、盗賊を無力化する事は出来るだろ?」
アネットが人質になりそうになってロンが殺した。と聞いたけど、単純に盗賊の無力化を失敗しただけで、もう一度、無力化する為に、両肩などを撃ち抜けばいいだけだと思うのだが?
「光学迷彩もあるから、盗賊程度を無力化するのは問題ないよ」
当然だな。
「じゃあ、逃げればいい。相手に合わせて、浩史がしたくない事をする必要はない。それこそ相手の思う壺だぞ」
「マサキの言う事にも一理あるな。私達の強さなら確かに殺す必要はないかもな」
フレイヤさんも俺の意見に同意してくれたが、浩史は考え込んでいる。もう一押しか?
「浩史、もう一度、言うけど。殺す必要はない。必要なら俺が指示するから、何かあったら時間を稼いで俺を呼べ。この世界で嫌な事をする必要はない!」
「分かった」
浩史も納得したので、この話はこれでお仕舞い。
俺の目的は浩史を無事に元の世界に連れ帰る事。PTSDになられても困るので、ストレスには注意して好きな様に行動させてきたが、もう少し注意しておく必要がある。
明日の準備をする為に、各自の部屋に戻ろうとすると、また浩史に止められた。
「ちょっと待って、フレイヤさんには、まだ、聞きたい事があるんだけど」
フレイヤさんと俺は椅子から立ち上がる途中で、もう一度、座り直して、俺は2人のやり取りを眺める。
「何が聞きたい?」
「結界魔法って、全ての攻撃を遮断出来ますか?」
「こちらが指定した攻撃は遮断出来るぞ」
「それなら、核弾頭ランチャーって武器があるけど、使えますか?」
「浩史!そんなリスクを負う必要はない!」
フレイヤさんと浩史の話を聞いていたが、お遊び武器の中でも1番ダメな武器の名前が出たので、慌てて止めに入る。
この核弾頭ランチャーとは2種類の核弾頭が存在して、1つはリトルボーイで攻撃範囲は半径3km、2つ目はファットマンで攻撃範囲半径5kmを一瞬で破壊する。
射程は1kmあるが、衝撃信管と時限信管の2種類を備えていて、発射後3秒の1kmで必ず爆発する仕組みとなっていて、装備すると転送不可となり、装備変更後も3分は転送出来ない、撃てば必ず自爆する事になるユニーク武器で、使用するとゲーム内でのペナルティーも凄い。
核爆弾の効果は4つで、衝撃波・熱放射・放射線・放射能物質から身を守れるなら、数値上どんな強敵でも一撃で倒す事が出来る。
「兄貴!核弾頭ランチャーだよ!この世界なら罰則無しで撃てるんだよ!!しかもフレイヤさんなら結界魔法があるから自爆はしない!」
「浩史、冗談だろ。結界魔法で防げなければ、フレイヤさんでも消滅するぞ」
ゲームでは攻撃範囲内にしか影響を及ぼさなかったが、この世界では?気軽に実験する事も出来ないので、確証が得られる事はないだろう。
「フレイヤさんが指定した攻撃は防げるって。
それに、ゲーム設定通りなら、核弾頭の影響も攻撃範囲内で収まると思うけど?」
「そんな保障も無いし、流石にやり過ぎだ」
好きな様に行動させてやりたいが、他の人への影響も考えると、流石に核弾頭ランチャーは使用禁止だ。
明日はガーディアン戦なので、各自で準備して早めに就寝する。
ファイター:スキルは『アタック』で攻撃力+スピードが2倍になる。
ベレッタM92:オートマチック式のハンドガンで9×19mmパラベラム弾を使用。端末ショップで購入出来る。
M97:5発弾倉で口径が12ゲージのポンプアクション式のショットガン。端末ショップで購入出来る。
ドラグノフ:ソビエト製のセミオート式スナイパーライフル、口径は7.62×54mmR弾。端末ショップで購入出来る。
RPG-7:40mmの形成炸薬弾を発射して戦車を破壊する。誘導装置は無く横風の影響を受けやすい。端末ショップで購入出来る。
核弾頭ランチャー:リトルボーイは半径3km、ファットマンは半径5kmを一瞬で破壊する。射程は1kmだが、衝撃信管と時限信管の2種類を備えていて、発射後3秒の1kmで爆発する仕組みとなっている。装備しても発射するには街から10km離れる必要があり、装備すると転送不可となり装備変更後も3分は転送出来ない。他にも支援機禁止などの決まりはあるが、撃てば必ず自爆するユニーク武器。ゲーム内で使用すると除染費用5000億G+1ヵ月敵指定。




