第47話 ウィルの救出
今日から遅れていた子供達のレベル上げを行う。やり方は今まで通り、ダンジョンで2体までなら子供達で弱らせてレベルの低い者が止めを刺す。3体以上なら俺か浩史が弱らせてレベルの低い者が止めを刺す。
今の所、最低レベルが盗賊のソニアでレベルが21、次がレオンで23、イリアはレベル26、他の子は30以上なので50階からスタートして全員が30以上を目指す。
子供達に説明しながらダンジョンに向かうとグラツィア達が疲れた顔でダンジョンから帰る所に出くわした。
「マサキ!ウィルの捜索を手伝ってくれ!!」
しばらく前にも同じ事を言われたが?20日前だったか?
「まだ見つからないのか?」
「ああ、知り合いの冒険者に頼んで捜索は行っているが…」
「もう…、無理じゃないのか?」
「まだ22日だ。食料は5日分を持って行ったから、まだ見込みはある!それにウィルの荷物やギルドカードは見つかっていない!」
「じゃあ何階を探索してはぐれたの?」
「32階で宝箱を開けようとした時に失敗して逃げ遅れたウィルが転移の罠で飛ばされた。転移で飛ばされる階数は多くても5階だから、27~37階を捜索したいのだが…。今日までに27~33階の捜索は終わっているが34階からは今街に居るチームでは…」
「グラツィア達は行けるのか?」
「ああ大丈夫だ、頼む!」
「皆はどうする?」
「私達も行きます!」と代表でデボラが返事をして他は真剣な顔で頷いている。そんなに助けに行きたいのか?
「では一度街に戻って準備を整える。ダンジョンで泊まる準備と5日分の水と食料を準備して3時間後にここに集合。でいいか?」
「ああそれで頼む!それと、すまないが俺達の水や食料も頼んでいいか?ここで少し仮眠をしたい」
「いいよ」
余り寝てないのか?疲れ切っている状態でダンジョンに潜れるのか?時間がないのは理解出来るが、下手をすると全滅だぞ?
ハンヴィーで鳳龍店からホームに戻って準備を済ませてミーティングを始める。
「ではミーティングを始めます。30階から捜索を行う班と40階から捜索を班の2班に分ける。班分けは俺とグラツィア達、浩史とドラグーンチーム」
「まあ妥当だけど、グラツィア達は大丈夫?最悪兄貴が3人の面倒を見てウィル君が加わったら4人の面倒を見る事になるよ?グラツィア達は置いて行って、こっちで2班に分けた方が早くない?」
確かにその方が早いな。でも…「グラツィア達が納得するかな?」
「説得するしかないね。如何に今のグラツィア達が不要で邪魔になるかを理解させないと。それにグラツィア達が居ない方が転送装置を使えるから楽でしょ」
「それもそうだな、待ち合わせ場所でグラツィア達に話してみる」
「兄貴、班分けはどうする?最近は男女で分けてるけど」
「それでいいよ」
「じゃあ皆も2チームに分かれる時は男女で分かれて、グラツィア達がいなければ夜は転送装置を使ってホームに帰る。ソニアはイリアの部屋、レオンはマールたちの部屋で泊まって、俺と兄貴で転送装置の見張り」
「そうすると一緒の階を捜索した方がいいな、30階に転移して34階から二手に分かれる」
「兄貴、35階に魔物が侵入して来ない部屋があって湧水もあるから、今日はそこでテントを張った方がいいんじゃない?ウィル君も水は必要だから。マップは端末からダウンロードしてあるでしょ」
「してあるから確認する…。ああここか?モニターに映す」
「そう、ここの緑地帯に青〇があるでしょ、そこは半日居ても魔物が来なかった」
「でもウィルが運良く見つけられるか?」
「生き残っている可能性が高いのはそこだと思うけど?」
「じゃあ34階から捜索して今日はここの安全地帯で休む。皆にもマップをプリントアウトして配るからなくさない様に」
「兄貴、皆には60階までのマップを本にして渡してあるよ」
「そうか、他に話は…ないな。ならダンジョンに戻るか」
グラツィア達との待ち合わせ場所、ダンジョン入口に戻って来た。
「グラツィア、浩史と話し合ったんだけど。疲れ切ったお前達は置いて行った方が早く捜索を行えると思う。それでも俺達と一緒に行くか?」
「…少し時間を貰えるか?マックス、クロエどうする?」
「俺はマサキの意見を受け入れる。今の俺達ではマサキ達の足を引っ張る可能性がある。クロエはどう思う?」
「私は…、一緒に行きたいけどリーダーの判断に任せる」
「マックスはマサキ達に任せる、クロエは俺に一任。確かに今の俺達ではマサキ達の足を引っ張る可能性がある…。マサキ!ウィルを頼む!」
「ああ、子供達もやる気だからな、お前達は街に帰って休め。見つけたらギルドに連れて行くから」
「すまないがよろしく頼む」
グラツィア達に見送られてダンジョンの転移室前に集まる。
「それじゃあ、33階までは一緒に行動して、34階からデボラ達は俺と、レオン達は浩史に分かれて進むぞ。通路にウィルの持ち物が落ちている可能性もあるから見落とさない様に注意して」
34階から二手に分かれて捜索を開始した。
34階への階段までは浩史とソニアが先行して魔物を倒して行った。俺は最後尾で警戒を担当していた。
「マサキさんは後ろで周囲の警戒をお願いします」
「???デボラ、別にいいけど前衛でも警戒は出来るぞ?」
「…はい、知っていますが…後衛をお願いします」
「魔物が多い時は攻撃して弱らせるから前衛の方がいいんだけど?」
「そうよデボラ、マサキさんは前衛の方がいいよ」
ソニアは俺の提案に賛成の様だが、他3名は俺が後衛の方がいいと思っている様なので後衛にしておくか。
「後衛でいいよ。後衛でも手伝いは出来るから」
「マサキさん…、援護は35階からお願いします!」
「ちょっと待って、デボラ何かあった?」
「…ヒロシさんから、そうしろと言われています」
「浩史から?…もしかしてこの階の魔物は虫とか爬虫類?」
「ハチュウルイ?は知りませんが、…虫は出ます」
「そうか…、帰る?」
「グラツィアさん達とウィルさんを探すって約束をしたじゃないですか」
「それは虫の魔物が出るなんて知らなかったし、約束は無効だろ」
「そんな事で無効になりませんし、帰りも虫が出ますよ」
「その言い方、浩史みたいだな」
「はい、ヒロシさんから何か言われたら、そう答える様に言われました」
「…帰りたい」
「虫の魔物は私達で倒しますからマサキさんは後衛で待機していて下さい。それでは捜索を開始します」
「…」
デボラに言われた通りに一番後ろで魔物をレーダーに捉えたらデボラ達に警告を出して戦闘には参加しない。虫除けのマジックアイテムも腰にぶら下げているが全く効果がない。
巨大な百足、蜘蛛、蛾などの魔物を倒しても死骸や体液が飛び散っているからダンジョンに吸収されて消えるまで数分待つ。踏みたくない。火炎放射器を持ってこればよかった。
俺はアサルトライフルのMDRを構えていつでも攻撃出来る様にアドオン式のグレネードランチャーにもグレネード弾を装填済みだ。一度も攻撃には参加してないが。
デボラ達は俺に言われた通りに魔物を弱体化してソニアが仕留めている。数が多い時はイリアがそのまま倒しているが。ソニアには丁度いいレベルだがイリアには弱過ぎる。それに俺は気分が悪い。
「マサキさん、宝箱を発見しましたがどうしましょうか?」
「罠がありますが直ぐに解除します!」
デボラが宝箱を発見してソニアが罠を解除する様だ。22日も経過しているので今更焦っても仕方ないので罠の解除を待つ。
「解除できました!」と宝箱から宝石を取り出した。
「それじゃあ捜索を開始しようか」
しばらくは魔物と戦いながら捜索したが全く手掛かりがない。
「浩史」
「何?」
「そっちはどう?」
「ウィル君は見つかってないし、手掛かりもないよ。捜索は割当の半分が終わった。で兄貴の方は?」
「虫が出るから帰りたい」
「兄貴が戦ってるの?」
「デボラ達に任せてる。転送装置で帰る前に装備品や服を洗わせないと」
「35階の安全地帯に行ったら簡易シャワーを用意しておくよ。兄貴達の方が遅いでしょ」
「こっちはやっと1/3?かな」
「ソニアのレベル上げにも丁度いいから、レベル上げも宜しくねー」
「何もこの階でレベル上げしなくていいだろ」
「別にこの階じゃなくてもいいけどウィル君の捜索ついでにレベル上げもした方が効率いいと思うけど?」
「ウィルの捜索はするけど必要以上に虫は倒さない」
「まあ、兄貴の好きにすれば」
「何かあったら連絡くれ」
それからも虫の魔物はデボラ達に任せて俺は後方で待機した。
もう少しで割当の捜索エリアを探し終わる所で浩史から通信は入った。
「兄貴、ウィル君を見つけた。湧水の所に居たよ」
「よし!俺達もそっちに行く!」
目的は達成した!これで2度とこの階に来なくて済む。
「あっ聞き忘れたけど無事?」
「無事だよ。今飯食ってる。この階に転移させられて魔物から逃げ回っていたらこのエリアを見つけたんだって、それからは食料を切り詰めて今まで凌いでいたって言ってた」
「ふーん、こっちは後1時間程度でそっちに到着するから」
「転送装置はどうする?」
「ウィルが居るなら装置は出さないでそこで野営だな」
「レオンとソニアはホームに泊まりたがっていたからガッカリするかな?」
「泊まりたいなら、いつでも泊まればいいのに」
「遠慮してるんじゃない」
「客室でも作っとくか?」
「あと6号室しか余ってないよ。イリア達をデボラやアネットの部屋に移す?」
俺が1号室、浩史が2号室、マールとロンで3号室、デボラとアネットで4号室、イリアと子供達で5号室。
「フレイヤさんの結界が解けたら部屋を寄こせって言うかな?」
「フレイヤさんなら言うでしょ」
「それじゃあ空き部屋がなくなるな。3号室に1部屋追加して4号室には2部屋追加しとくか?」
「いいんじゃない。数年したらコリーナとユルクも1人部屋が欲しいって言いそうだけど」
「そんなにこっちの世界に居るつもりはないけど」
「兄貴、そんなに早く帰れるの?」
「その為に努力はしてるつもりだけど」
「もう少しこっちの世界を楽しんだら?」
「もうそろそろ35階への階段だ。続きは合流してから」
「じゃあ簡易シャワーの準備をしとくよ」
「ああ、頼む」
階段で35階に降りて隊列を変更した。俺が先頭に立って素早く魔物を弱体化してソニアが止めを刺す。
安全地帯に到着した時には、疲れと満腹感でウィルはぐっすり寝ていた。起こす必要もないので、そのまま寝かせておく。
デボラ達にシャワーを浴びて着替える様に話して簡易シャワーを見ると、転送装置にカーテンを付けて簡易シャワー室にしてある。
「これなら転送装置だなんて思わないでしょ。カーテンは完全な遮光だから中に人が居るか居ないか外からじゃ分からない。これで短時間ならホームに帰れるよ」
「確かにいい考えだが、荷物は持って来れないな」
「俺達ならアイテムBOXに入れられるから大丈夫でしょ」
「それもそうか」
「それより兄貴達は飯食ったの?」
「まだだよ。お湯でも沸かすか」
デボラ達の支度が終わるまでに携帯食の準備をして、戻って来たので皆で食事を済ませた。
「でも、マサキさんの虫嫌いも相変わらずですね」
「デボラ、俺は虫が嫌いじゃなくて気持ち悪いものは全部嫌いだけど?蛇とか蛙も」
「…そうですか」
「兄貴、冒険者としては駄目じゃん」
「そうか?嫌なものは嫌だけど」
「ゾンビの方がよっぽど気持ち悪いと思うけど、腐ってるし」
「あれは元が人だし、分類はお化けだろ?しかもゲームだ」
「ゲームでも虫を嫌って絶対やらないシナリオが、あっウィル君が起きたよ」
「じゃあ、少し話しをしないと」
起きたウィルは喉が渇いたのか水場で水を汲んでいる。
「よう、やっと起きたか」
「マサキか…」
おや?助かって喜んでいる顔じゃないけど、どうなっているの?
「グラツィア達に頼まれて助けに来た。今日はここで野営して明日40階を目指して出発するから」
「!40階?なぜ40階なんだ!?」
「虫が嫌いだから?」
「そんな理由あるか!」
「そんな理由だからしょうがない。ウィルは戦闘には参加しなくていいから安心しろ」
「冒険者仲間を見捨てる!虫が苦手!お前本当に冒険者か!?」
「ここは35階、上に行こうが下に行こうが同じだろ?しかも戦闘には参加しなくていい。助けに来てもらって何が不満なの?」
「ストップ!兄貴は黙って、ウィル君は落ち着いて。一応このグループのリーダーは兄貴だから俺達と一緒に行動するならこっちの指示に従って、危険が大きいなら俺も兄貴に反対するけど俺達には30階でも40階でも60階でも大した違いはない、むしろ30階の方が兄貴が戦闘に参加しないので危険だと思うよ」
「…分かった。そっちの指示に従う」
「兄貴はウィル君に話し掛けないで、話が纏まらない」
「そうする」
浩史がウィルに2日分の食料を渡して食べ方を説明している。1食毎に渡すよりは纏めて渡した方がいいと思ったのだろうが、1日あれば帰れると思うけど?なぜ2日分?




