休日の学校にて 4
いくら校舎が綺麗になったとはいえ、やっぱり来客用の履物がスリッパなのは変わらないのですね。
まあ、我が私立ジェニ・ジェニー・ジェーニオ女学院はもっと高級スリッパですけどね!
そう勝ち誇り、スリッパに足を入れるとあら不思議、感じたことの無い履き心地――というか浮遊感ですわ‼ なんなんですの⁉ くっ、見た目で判断してしまうとは、自らの浅慮が恥ずかしいですわ……!
「それ一足四万円だってさ」
「よんまんえん⁉」
学院のは精々一万円ちょっとですわよ⁉
「ね、ヤバいよね」
千春さんに無言で頷きを何度も返して気を引き締めます。
わたくしは堂々と、四万円のスリッパに見合う振る舞いをするまで。
「そういえばそよ風姫ちゃんはこの校舎に変わってから来るの初めてだったよね」
「ええ、驚きましたわ。私物佐藤陽菜の学校という校名に変わっていましたし」
「え?」
「え?」
なんで聞き返しますの? 学校銘板に書いてあるではありませんか。
その旨を千春さんに伝えると、千春は爽やかな笑顔を浮かべました。
「知らない‼」
「なんて方……」
自分の通う学校のことぐらい把握しませんか? 一応千春さんは元生徒会長ですのに。
いいえ、これこそ見た目で判断というやつですわ。さっき学んだではありませんの。校舎が変わろうが、校名が変わろうが、そこに通う生徒はなにも変わらない。
流石千春さん……そのことをわたくしに伝えようとしてくれましたのね。
「流石ですわ……!」
「ふっ、憧れても無駄だぜ」
「流石ですわ!」
「まあまあまあ、そう息巻くんじゃあない。ほら、ここだぜ、生徒会長室」
我をも忘れて詰め寄ってしまったわたくしを手で制して、千春さんに連れてこられたのは見慣れた光景。
校舎自体はわたくしの通う学院と変わらないですから、この生徒会長室という建物自体生徒会長室?
生徒会室ではありませんの?
いけませんわ! また見た目で判断しそうになりましたわ。名前が違うだけで室内は学院の生徒会室と変わりませんわ。
きっとそうですわ!
「邪魔するぜ」
そう言って千春さんは両開きのやたらと豪奢で重厚な木の扉を開きました。
そのボケ、多分陽菜さんは分かりませんわよ。
新しいはずなのに年季の入った音を立てて開いた扉――中をチラリと覗いてみますとうーん、理事長室ですわね。
「ごきげんよう、陽菜さん」
観察は中に入ってからですわ。千春さんに続いて入ったわたくしのお嬢様挨拶。そんなわたくしに陽菜さんは部屋の中央の奥辺りにある、あの理事長が座ってそうなフカフカそうな椅子に、飴色になるまで使い込まれたと言いますか手入れされたと言いますか、高級な執務机のところにいましたわ。
生徒会長室――その名の通り生徒会長の部屋。
…………見た目で判断するかしないかの線引きって難しいですのね。




