大海の向こう側3 <小さな島でこれからも>
時が経つほど嵐は激しくなっていった。
船はどこからともなくギシギシと音を立て、畳まれている帆も括りつけられているマストから外れて落ちてくるのではないかと思うほどである。
「おい!このままじゃもたねえぞ!」
船員の誰かがそう叫ぶが、この嵐では誰にもどうしようがない。そうこうしているうちに船は前後左右に上下と大揺れに揺れ、ついにその時が来る。
ミシミシミシ―――バリバリバリ
さきほどまで軋みながらも嵐に耐えていたマストが大きな音を立てて倒れていく。そして倒れゆくマストは船の甲板を割って船はマストによって真っ二つにされる。
「もうだめだぁ!」
どこからともなくそう声が上がり、俺は荒れ狂う海へと放り出された。そして真っ黒な海は船の残骸もろとも俺のことをかき回し、海の下へと引き込んでいった。
・・・・・
十数日後―――
俺は小さな島の小さな港へと上陸した。そして港から続く道を足早に進み、草原に囲まれた一軒の家の扉を開く。
「おかえりなさい、お父さん」
「ただいま、いま帰った」
俺に抱き着く我が子の頭をなでながら、俺はベッドの上で何事もなく過ごす妻を見て安堵する。日本を目指して出発した俺の船旅はとても大きな問題が起こりながらも、俺が望んでいたその大きな目的を何とか成し遂げたのである。
嵐の後から数日、俺は海を漂いながらもしかしたらそのまま妻の最後を看取ることが最良の選択だったのではないか、時間がかかっても大陸を目指すべきだったのではないか、自分は間違っていたのではないかと自問していた。しかしことを考えながら海に浮く俺の前に現れたのは海上保安庁の測量船だったのである。
それから助け出された俺は病院に入院させられることにはなったものの、島には医師が派遣されて妻は助かり、今回どうにかして退院することができた俺はようやく帰宅を果たしたのである。
「無事でよかった」
「それはこっちの言葉よ。あなたもだいぶ無茶をするから」
確かに妻の言う通り俺も無茶をしたものである。だが、それだけの価値はあった、少なくともそれだけは声を大にして言える。できることならばこれからもこの島で今まで通り暮らしていきたいものである。




