大海の向こう側2 <異世界での生活>
この異世界へと来た俺は、ここに来る前の日本よりもそれなりに幸せな生活を送っていた。妻がいて子供がいて、この異世界の大陸から離れた小さな島で骨を埋める覚悟をしたのだ。だからこそ俺は今まで日本がこの世界へ来たことを知った後も、そんなことは関係なしに生きてきたのである。
だが、突如としてそんな俺のもとにある不幸が訪れた。それは妻が疫病にかかったのである。日ごとに良くなるどころか悪化するばかりであり、この世界の医療技術では無理であることは俺にでもすぐに分かった。
現代日本の医療技術に比べればこの異世界の医療技術なんて無いに等しいものである。だが、この異世界にはその日本があるのだ。それにすがらない手はない。俺がいた島は辺鄙なところにある小さな島であるが、船も来ないような場所ではない。どうにかして日本と連絡を取る必要がある。
しかし日本に連絡を取ろうとしても、どんなに早くても一か月半以上はかかる船旅となるのは間違いない。そんな時、俺の島にとある帆船が来航してきたのだ。そしてその帆船の目的、それは日本への密航・密輸である。
彼らによれば異世界各国と日本の貿易は主に日本の巨大な船舶によって行われ、それを管理して利益を得ているのは貴族連中とのことである。
彼らからしてみれば日本と優れた商品の貿易をすることすら出来ず鬱憤が溜まっており、彼らは日本の田舎でも、どこかの小さな島でもいいから上陸して物々交換でもいいから日本の商品を手に入れたいのだという。
はっきり言って彼らの考えには同意しかねるが、島から直接日本を目指す方法であれば早くて一か月で日本まで行くことができる。それに日本近海ともなれば海上保安庁や日本の漁船だっているはずである。ならば一か月よりも早く日本と連絡をつけることも可能かもしれない。
そこで俺はその帆船に家族の話をして無理やり乗り込み、今に至るのである。




