1・最低の修道女
これは「即興小説トレーニング」というページでお題をもらってこしらえた掌編たちです。
(制限時間30分/正味かかった時間平均16~17分)
しかしログインして書き始めた当日から『ウイルスに感染しています』メッセージが多発。
あんまりうるさいので、早々に全作品を削除してログアウトしました。
(関連は不明/PCのセキュリティソフトでは何の問題も検出されなかったので、おそらくブラフ)
と言う訳で、これはそのページでこしらえた掌編たちのお引越し先です。
前述の通り、16~17分で書き上げたものなので不出来のほどはお許しを……。
あ? あの女のことか?
あいつはホントとんでもないオンナだよ。
男だって喰い放題、万引きだってし放題、あげくに同性だって気に入りゃたぶらかし放題だ。
お前、あいつに惚れたんだって? はは、止めとけよ。
あいつ、あんな清楚な顔をしておいて、さっき言った通り裏じゃあヤリたい放題なんだからな。
「そ、それは……あの修道女のことですか?」
あ? そうだよ。お前何にも知らないんだな。
あの修道女、あの修道院の持ち主の末娘だからって、何してもなんも言われないのさ。
「し、信じられない……彼女がそんな人だったなんて!」
信じようが信じまいが勝手だがね、あの女に惚れたんなら、あきらめた方が身のためだぜ?
ああ、ほらほら、うわさのカノジョがやって来たぜ? どうする? 声でもかけるのか?
* * *
……はは、顔を真っ赤にして行っちまいやがった、何も知らない若者め!
おうお前、いつもみたいに、お祈りの時間までデートしようぜ?
「本当に……あなた、私をあんなに悪しざまに……他に断りの言葉をご存じないのですか?」
あ? だってお前、お前があんまり魅力的だからさ!
素直に「彼女は俺のいいなずけだ」って言ったって、あきらめない奴があんまり多すぎたからさ!
現に今の断り方を始めたら、あっさりあきらめる奴が本当に増えたろう?
「嫌ですわ、本当に……あなたこそ、貴族の一人息子なんて信じられないくらい、お言葉があんまり荒すぎましてよ?」
はは、そう言うな!
それじゃあ出かけようぜ、敬虔で貞淑な修道女さん!
* * *
かくして口の悪い貴族の息子と、清楚可憐な修道女は愛しげに、優しげに手をつないだ。
それから「結婚を悪としない」革新的な修道院を後にして、いつものようにデートに出かけた。
からりと晴れた夏空の下、八重のくちなしがぽってりとした白い香りを放っていた。