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【10/7完結巻発売】誤解された『身代わりの魔女』は、国王から最初の恋と最後の恋を捧げられる  作者: 十夜
国王は魔女に最初の恋と最後の恋を捧げる

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177 『虹の乙女』アナイスの断罪 1

翌日、私はバドに相談した。

テーブルの上に置かれたお皿の前に座り込み、クッキーを食べるバドに向かって、フェリクス様から聞いた話をできるだけ丁寧に説明する。


一通り話し終えると、私は昨夜思ったことを言葉にした。

「『身代わりの魔女』として、この国の土地が痩せるのを防ぐ方法があるかもしれないわ」


私はバドに真剣な眼差しを向けると、質問する。

「バド、私に何ができると思う?」


かつて、バドは『虹の女神』の聖獣だった。

だから、もしかしたら私の知らない答えを持っているかもしれないと期待したけれど、バドはあっさり分からないと答えた。

「ルピアが尋ねているのは、『虹の女神が豊かにしてくれた土地をそのままにしておきたい』と考える人々の気持ちを変える方法だよね?」


「ええ」

「残念だけど、これだけ『虹の女神』への信仰心が強ければ、どうしようもないんじゃないかな。痩せた土地を改良する方法も、その効果も分かっているのに、人々は女神から与えられた土地に手を加えることを拒絶しているんだ。今さら何かしたとしても、人々が気持ちを変えるとは思えないな」


バドのごもっともな意見に、私はむむむと口を尖らせる。

「難しいわよね」


「ルピアが『身代わりの魔女』として何かできることがあるかもしれない、というのも推測でしかないんだよね。僕の知る限り、『身代わりの魔女』は夫を救うための魔女だ。それ以外に何かできると言う話は聞いたことがない」

それはその通りだったので、素直に頷く。

「そうよね」


「フェリクスはルピアを崇拝しているから、君なら国だって救えると、夢を見ちゃったんじゃないかな。いずれにしても、こんなにヒントがない状況で答えが出るはずがない。消極的な方法だけど、このまま放っておくのも一つの手じゃないかな。人間、死ぬわけにはいかないんだから、お腹が空いたら土壌改良策を受け入れるんじゃないの」


それはそうかもしれないけど……と、私は眉尻を下げた。

「できればお腹が空く前に何とかしたいわ」


「うーん、よく分からない時は、色々やってみたら意外と上手くいく時があるよね。例えば人々の気分転換を兼ねて、雨でも降らせてみるのはどう」

「雨ですって?」

思ってもみない提案をされ、私はびっくりして目を丸くする。


一方のバドは、にやりと笑った。

「ルピアは昔、虹をかける練習をしていたけれど、その時、雨を降らせる練習もしていたよね。最近は滅多に雨が降らないことだし、ざあざあと降る雨に打たれたら、人々の渇いている心も少しは潤うんじゃないの」


「そんなものかしら?」

雨を降らせる魔法は、虹をかける魔法の練習として行ったものだ。

つまり、雨を降らせる魔法の方が簡単だから、雨を降らせるだけなら、体に大きな負担はかからないかもしれない……と考えたところで、険しい声が響いた。

「ダメだ」


振り返ると、怖い顔をしたフェリクス様が立っていた。

フェリクス様は座っていた椅子ごと私を抱きしめると、きっぱり言い切る。

「ルピアは妊娠しているんだ。それはもう真綿にくるんで、寝台の上にずっと寝かせておきたいくらいなのだから、魔法を行使するなんてもっての外だ」


フェリクス様は私を抱きしめたまま、咎めるようにバドを見た。

「バド様もルピアをそそのかさないでください。彼女は純粋だから、何だって従ってしまうんですから」


バドはやれやれという表情を浮かべると、テーブルの上に置いてあったクッキーを2枚つかんで、私を見上げた。

「……だそうだから、雨を降らす案は保留だね。僕は静かな場所に行って、クッキーを食べることにするよ。またね、ルピア」


「あ、バド」

私の声は聞こえたはずなのに、バドは聞こえない振りをすると、窓から外にぴょいっと飛び出ていった。


フェリクス様がお説教モードになったのに気付いて、面倒だと逃げ出したわね。私だけ置いていくなんて、何て薄情な聖獣かしら。

逃げようがない私がそろりと見つめると、フェリクス様は困ったような表情を浮かべて私の前に座った。

「ルピア、うるさいことを言ってごめんね。君がこの国のために何だってやろうとしてくれる気持ちはすごく嬉しい。でも、君自身をないがしろにするとしたら話は別だ。君と国は比べるものではないが、どちらか選べと言われたら私は君を選ぶよ」


「そ、そうなのね……」

フェリクス様ったら、比べるものでないと言いながら比べているわ。


「あの、バドは冗談を言ったのよ。私もそう。人々が女神から与えられた土地をそのままにしておきたいという気持ちは分かるわ。だから、どうしたものかしらと考えたものの、いいアイディアが浮かばなかったから、おかしな選択肢が登場しちゃっただけよ」


フェリクス様は疑わしいとばかりに私を見つめたけれど、私が無茶をしないという返事を聞いて満足したようだ。

彼は「もっと飲んだ方がいいよ」と言って、空になった私のカップに紅茶を注いでくれると、私を見て微笑んだ。


「ルピア、心配してくれてありがとう。確かに状況は芳しくないが、これは私の責務だから、私が何とかしなければならないんだ」


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