新たな始まり?
自分の気持ちがわかったからといって、今更どうすればいいんだろう…。
あれからとても授業を受ける気分になれず、シンとした自室に戻りベッドにダイブした。物音一つしない部屋の中にいると、また『あぁ、1人なんだなぁ』と思ってしまう。その思いを振り切るように目を閉じた。
あ、鞄忘れてきた。
「と、言うわけでノート貸して。」
「……。」
次の日、教室にいた絖里に開口1番で頼み込む。絖里の呆気に取られている顔に向かって右手を突き出す。すると状況を理解したのか、絖里の顔がみるみる怒ったものに変わっていく。
「それでも、連絡くらいしなさい!何回電話したと思ってるの!?心配するじゃん。」
「うん、ごめんなさい。」
「…はぁ、いいよ。それより…大丈夫?」
何が?とは聞かない。曖昧に笑うと、なんとも微妙な顔をしてノートを差し出された。
そこで深入りせずにノートを貸してくれるところに優しさを感じるよね。有り難くそれを頂戴し、素早く写していく。流石に授業受けるのにノートぐらいあったほうがいい。
「稔傘ー、客だって。」
人が必死にノート写して、授業をたまにはちゃんと受けようと思っていたのに。もういい。今日は寝る!!
水月が指さしている扉のほうを見てみると、見たことのない人が立っていた。でたー。髪青いよー?めっちゃこっち見て微笑んでるし。先輩かな?同じ学年にいたら目立つだろうし。
じっと見ている訳にもいかず、そこまで歩いて行き声をかける。顔を見るためには軽く見上げなければならない。……うらやましくなんかないぞ。
「何か用ですか?」
はじめましてとはあえて言わない。違ったら失礼だし。髪の青い人の知り合いなんていないけど。
「これ、君のだよね?」
そう言って差し出されたのは俺の鞄。おかえり、俺の鞄!
「ごめんね、鞄の中開けて名前確認したんだ。ホントは昨日の内に返したかったんだけど、部屋がわからなくって…。」
「いや、そんな。わざわざありがとうございます。」
この人見た目は軽そうだけど、意外とちゃんとしてる(失礼)。人は見た目じゃないな。
「よければ連絡先教えてもらってもいい?俺は2-Bの神代要っていうんだけど。」
「あ、稔傘麻鈔です。よろしくお願いします。」
連絡先を交換して、その場はそれで終了。授業が始まり、せっかくノートを写させてもらったのに終始俺は夢の中だった。寝るって宣言したから有言実行だ。隣で水睹が呆れた目で見ていたなんて知らない。
「一緒に食べよー!!」
昼休み、目の前に現れたのは朝に会ったばかりの人。ニコニコしながら俺の返事を待っている。
別に断る理由なんてない。了承の意を告げると『じゃあ、行こっか!!』と手を引かれ拉致られる。教室を出るときに、チラッと後ろを振り向くと絖里はにこやかに手を振っているし、水睹は机に突っ伏したまま寝ている…。
薄情者たちめ!!
神代先輩が食堂じゃないところで食べようと言ったので購買でパンを買い、連れられてきたのは屋上。鍵はかかっていたのだが、神代先輩の神々しい能力で華麗に突破だ。
屋上に出てみると梅雨時期でとても清々しい空気とは言えないが、ひんやりとした風が吹くと頭の中がだんだんスッキリするような気がする。買ってきたカレーパンの袋を開け、特に会話もなく黙々と食べる。半分程食べ進めたところで神代先輩が口を開く。
「本当はねー、見ちゃったんだ。」
何を?と思いつつ顔を上げると神代先輩とバッチリ目が合った。
「君が泣いてるところ。」
持っていたカレーパンの中のカレーがもともと冷たかったのにさらに冷たくなった気がした。
「何でか聞いてもいい?」
心配するように覗きこまれ、この人になら話してもいいかなと思った。なんでかはわかんないけど。絖里に話したときとは違い、話し出すと涙が出てきた。
「……っ。」
冷たくしてきたのは俺なのに。いなくなると寂しいなんて自己中すぎ。それでも、もう一度話しがしたくて。声が聞きたくてたまらない。
うまく言葉にならない。神代先輩は黙って俺の話しを聞いてくれた。全部話し終わると涙が止まらなくなって膝を抱えてうずくまる。そんな俺の頭に大きなものが乗ったと思ったら、ぐちゃぐちゃと掻き回された。
「そんな酷い男やめちゃいなよ。」
妙に真剣な声が聞こえ、肩をギュッと抱き寄せられた。ビックリしたが顔を上げることもできず、そのまま先輩の声に耳を傾ける。酷いのは俺なのに。拒絶ばかりで、全然兎廩先輩と向き合っていなかった。
それなのに、兎廩先輩が酷いと神代先輩に言われるとどうしたらいいのかわからなくなる。
「……俺にしない?俺だったら、麻鈔を泣かせたりなんかしないよ?」
時間が止まったかと思った。
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遅れました……
たぶん、またまた亀ですが、頑張って書き上げます!