定まった心
峻岑先輩との話から頭がこんがらがってしまい、結論も何も出ないまま時間だけが過ぎていく。重大なことを忘れたまま。
「プレゼント!?」
「えっ、もしかして何も考えてなかったの!?」
先輩の誕生日まであと3日というこの日、絖里から言われた一言は『そういや麻鈔は会長に何プレゼントするの?』だ。言われた衝撃で俺が食べていたサンドイッチの中身のトマトがベチャッという音をたてて落ちる。
正直何も考えていなかった。だってパーティーするんでしょ、だったらそれで十分じゃん。
「まだ、仲直りしてないんでしょ?だったらなおさら渡したほうがいいよ。」
そう、今だに先輩と話していない。わざとなのかどうなのかは知らないが、生徒会室の中で2人っきりということがまずない。
このままでは本当に、次会うのはパーティーのときになりそうだ。
……そもそも
「俺もパーティー行くの?」
「当たり前じゃん。行かないとか言っても峻岑先輩が引きずって行くって。」
言われてみるとその図が容易に想像できる。
「プレゼントかぁ。」
どんなものがいいんだろうか。先輩はお金持ちらしいから、欲しいものは何でも買えるよな。
となるとお金で買えないもの?何かのCMみたいな言葉だな。
「ねー、海睹は何か欲しいものとかある?」
「言ったら何かくれんの?」
近くにいた海睹に聞いてみたらこの返事。人選ミス!
「…聖来君達は?」
今のはなかったことにして、クラスメイトに聞いてみる。海睹の睨んでるような顔とか視界に入ってないよ、うん。以前より教室の中の雰囲気も和み、過ごしやすい空間ができてきた。今話し掛けた3人は俺が嫌がらせを受けていたときでも普通に話してくれた人達だ。…とは言っても俺から話し掛けないと関わりはなかったが。
「平穏な生活。」
「俺は魔法のランプ。」
「水月も拓司も、どうなんだそれは。ちなみに俺は安眠枕。」
紹介すると最初のが聖来水月。あとはめんどくさいから省略。
まったくもって、どれもこれも参考になりゃしない。
何の収穫も得られないまま部屋に戻ってきてしまったが、…どうしよう。何もすることがない。……勉強?んなのするわけないじゃん。
しょうがない。ある部屋へ向かうため荷物をまとめ部屋をあとにした。
「いらっしゃーい!どーぞー!!」
やってきたのは后乃兄弟の部屋。いつでも来ていいと言っていたので連絡もせずに来たのだが普通に迎え入れられソファーに座らされた。こういうとこアットホームですごくいいと思う。
「麻鈔ちゃん来てくれてすごくうれしい!また、一緒にお風呂入ろうね!!」
俺に弟がいたらこんなかんじだったのだろうか?一様、向こうのほうが年上だが。なんだか暖かくて涙が滲みそうになるがそこは必死に堪える。
「プレゼントは決まった?」
人がせっかく忘れていたのに…。実際なにも決まっていないので黙って下を向く。それを見て察した絖里は俺の隣に座る。
「麻鈔ちゃんは規衣ちゃんと仲直りしなくて平気なの?」
朱里先輩の素朴な疑問が胸に刺さる。実際俺は自分がなにをしたいのかわからない。だけど、このままじゃ嫌なことは確かだ。でも、だからといって何をしたらいいのかわからない。先輩の欲しいものをあげれば丸く仲直りできるのか?
「きっと規衣ちゃんも仲直りしたいと思ってるよ。」
その言葉に顔を上げると朱里先輩とバッチリ目が合い慌てて逸らす。
「絖里から話は聞いたけど、先ずは麻鈔ちゃんが『叩いてごめんね』って言わなきゃ。」
朱里先輩の言う通りだ。弟だなんてとんでもなかった。先輩は俺よりずっと大人で自分が恥ずかしくなる。俺が悪いのは確かだから、俺が謝るのは当たり前だ。
「それでね、『俺をあげる』って抱き着けばいいんだよ!!」
「……。」
絖里に視線だけで助けを求める。
「…お風呂沸いたから入ってきたら?」
「よしっ!麻鈔ちゃんと一緒にお風呂〜。さぁ、じっくりと作戦を練ろうね!!」
絖里っ、これは助けたつもりか!?それとも追い撃ちをかけたのか!?
お風呂でのぼせそうになっても朱里先輩の案に乗らなかった俺は凄い!!見習えよっ、絖里!!
そうは言っても、肝心なことは全く解決しいない。そもそも、なんで俺がこんなにも、たかが誕プレごときに悩まなきゃいけないんだ?
『それは、……だからだよ。』
どこからか、自分の声が聞こえたような気がした。それを振り払うように頭を振り、今だに『俺をあげる』作戦を押してくる朱里先輩を無視して布団を頭まで被った。
次の日、もともと早起きな后乃兄弟よりも早く起き出し、起こさないようにそーっと部屋を出ると、まだ外は薄暗い。学校に行く前に一度部屋に戻り、準備をしてもまだまだ時間はある。……もっと寝とけばよかった。
このままぼーっとしているのも時間の無駄なので、たまには散歩でもしようと思い外に出た。
もうすぐ夏だというのにこの時間はまだひんやりと空気が冷たい。外を歩いていると、いつの間にか初めて兎廩先輩と会った場所に足を進めていた。……何度思い出しても腹がたつな。それに、そうだ。あいつには親衛隊がたくさんいるから、俺がいなくても祝ってくれるやつはいっぱいいるし。
ガサッ
誰かの足音が聞こえ、音が聞こえた方に振り向くと
「あっ……。」
そこには初めてここに来た時と同じように、ここで初めて会った人物がいた。
何か声をかけようと口を開こうとしたが、
「…っ。」
俺の横を表情ひとつ変えずに通り過ぎた先輩に言葉を発することができなかった。無言で小さくなっていく後ろ姿を見つめることしかできず、頬を冷たい雫が流れる。
…どうして、こうなってしまったのだろう。ちょっとしたすれ違いだったはずなのに。
姿が見えなくなった後もその方を見ていることしかできなかった。
…認めざるを得なくなっってしまった。
自分の気持ちを。
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まとっちゃん自覚しました!
心理描写が全体的に酷いのは広い心でスルーしてください。




