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銘光鳳学園  作者: 楓絽
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すれ違った心




次の日の朝、寝室から出て行くと腕を引っ張られ目の前が真っ暗になった。今まで忙しくて久しぶりだったため、不覚にもそれが兎廩先輩の腕の中だと気づくまで時間がかかってしまった。




「なにすんだっ!!」




慌てて振りほどくもニヤニヤと笑う先輩の顔が視界に入ると顔が赤くなるのがわかりとっさに下を向く。




「顔が見えないんですけどー。」




わざとらしく耳元で囁かれ頭の中が真っ白になり、気がつくと手をあげていた。ポカーンとした先輩の顔が目に入ると我に返り、慌てて部屋を飛び出した。




……それから気まずいのなんのって。共同スペースには居づらくて自分の部屋に篭っていると、以前だったらうるさいくらいドアをノックされうるさいと怒鳴っていたのに、今では時計の針の音が大きく響くほど静かだ。

やっぱり怒ったよな…。いきなりビンタしたわけだし。そのままその日は終わってしまった。








朝目覚めると昨日のことは夢だったんじゃないかという気がしてくる。だけど、ドアを開けても何も起こらずシーンとした空間あり、これが現実だと嫌でも実感させられた。置き手紙もなく、この学園に来てから初めて先輩との接触のない日になった。







授業が始まっても上の空で先生の声は耳の中を通り抜けることすら拒否している。いつも授業なんか聞いていないが、いつもの様子ではないと気付いたらしい。絖里が休み時間に話し掛けてくる。




「麻鈔、どうした?なんか元気ないじゃん。」




先輩に連行されているときは微塵も助けてはくれなかったが、やっぱり絖里はいいやつだと思う。お前将来保育士になればいい。

昨日の出来事を話すと、絖里は腕を組んで何か考えている。そんなに酷いことをしたかと思いビクビクしていると、真剣な顔をして話し掛けてくる。




「おかしいと思わないか?」



「そりゃー、いきなりビンタしたなんて言ったらおかしいと思われるかもしれないけど……。」



「麻鈔の今の発言がすでにおかしい。」




失礼なやつだ。




「おかしいっていうのは会長の反応のことだよ。あの会長が1回ビンタしたくらいで大人しくなると思う?」




そう言われてみるとそうだ。あの人ならケロッとしていそうだ。そうなると今のこの反応はなんだ?




「…きっと峻岑先輩だよ。」




ため息と共に出てきた絖里の言葉。…なるほど、峻岑先輩ならこの状況を楽しんでいそうだ。きっといらない入れ知恵を与えたにちがいない。だけど、それならさらに厄介だ。峻岑先輩が絡んでいるならめんどくさいことになりそうだ。




「もう、寮替えだから会長と同じ部屋ってのも最後だしなぁ。ますます話す時間がなくなるぞ。」



「……寮替え?」



「……もしかして、忘れてた?」



完璧に忘れてた。最近忙しかったからな。そうか、そしたらあの部屋に居づらい気持ちを感じずにすむんだな。なんだ、このまま話さなくても……ダメじゃん!!俺生徒会に入ったんだった。嫌でも生徒会室で会うし。そのときにあの空気だったら皆に迷惑かけるよな。

考えようとしても午後の眠さに堪えることができず、机に突っ伏し夢の世界に旅立つことにした。




「…でも、意外。会長と話さなくなっただけで麻鈔がへこむなんて。」













寮替えの日はすぐにやってきた。荷物を運び出すとやっぱり無駄に部屋が広いなぁと感じる。朝起きると先輩の移動はすでに終わっており部屋の中には俺1人だけが残されていた。




新しい部屋は他の1年と同じ階だ。新しい寮では2年から1人部屋になるのだが、俺はやっぱりペアになる人がおらず1人部屋だ。

同室者がいてくれたほうがよかった。そうすれば、この静まり返った空間は存在しなかっただろうに。テレビをつけてみても得に何があってるわけではなくすぐに消してしまった。




ベッドの端に壁にもたれて座る。



膝を抱き寄せ、あの時どうすればよかったのか考える。そんなこと考えても無意味だってわかっているのに。




「どうすればいいんだろ。」



「悩むとこだよねぇ。」



「考えても何も浮かばないし…。」



「じゃあ、当たって砕けてみたらいいんじゃない?」



「それができたらこんなことになってな…………って、峻岑先輩!?」




どこから入ってきたのか、いつのまにかベッドの上で向かい合うように正座している峻岑先輩が。




「先輩っ、どうやって入ってきたんですか!?」



「えー、そこは企業秘密っ。俺魔法使いだし〜。で、まとっちゃんは何に悩んでいたのかなぁ?」




完璧に不法侵入だが、そんなこと言ったって無駄だろう。痛いところを突かれ、話題を逸らそうかとも思ったけど、まぁ、無理だわな。口を開いたら流されそうだから口を閉じ下を向く。




「規衣がね、言ってきたの。『どうしよう、嫌われちゃった。』って。笑っちゃうよね。だって今までまとっちゃんに対して思いは伝えても、好かれるような行動なんかしてこなかったのに。」




誰に聞かせるでもなく、独り言を言うように呟いている。俺は何も言わないまま俯いている。




「ねぇ、まとっちゃんは規衣のことをどう思ってるの?もし、その答えが見つかったら規衣本人に言ってあげて。たとえどんな内容でもね。」




そのまま普通にドアから峻岑先輩は出て行った。




1人ポツンと残され嫌でも今の言葉のことを考えてしまう。



(先輩のことをどう思っているのか……?)



……どうなんだろう。先輩と話さなくなって、悲しい?淋しい?どちらにしても、嫌だと思う感情ばかりが浮かんでくる。

いや、そんなわけない。だってこっちは迷惑していたのだ。勝手に部屋につれていかれ、干渉してきて振り回されたのだ。そのせいで嫌がらせも受けたし、最近では無理矢理コンテストにも出場させられた。その延長で生徒会にも入れられたし。

思い返してみても、峻岑先輩の言う通りいいことなどカケラもない。だけど、今までべったりだったくせに、いきなり離れられるのもいい気はしない。



(結局俺は先輩のことをどう思っているんだ?)



この疑問の答えはなかなか出てきそうになかった。




.

詰まってます、詰まってます。

文才の無さがわかります…。

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