表裏とオモテウラ
走って戸小谷さんを公園に連れ出す。
完全にラブコメで言う告白するシーンの様に見えるがそんなことは一切ない。
第一に公園というのはすぐ近くにあったからだ。
戸小谷さんがストラップの如く風に靡いて目を回している。
流石に無茶をしたと反省しつつ公園のベンチに腰掛ける。
「戸小谷さん急にごめんね。どうしても戸小谷さんに頼みたい事があって」
戸小谷さんはフラフラして今にも倒れそうだった。
「あ……はい……」
「それにしても久しぶりだね」
「あっ、ええ。おっ、お久しぶりです」
「ごめんね本当に」
「あっ……いえ別にそんな」
戸小谷さんはいつもオドオドしている。
戸小谷さんとは物静かな20歳の女の子。名前は知らない。職業は美容師。美容師らしからぬボサボサの髪の毛が特徴的で、性格はというとこの通りやや消極的。そんな彼女だが髪をあげるとかなり可愛いというのは確認済み。
美容室で働いてるが指名率は常に最下位。
そして彼女もまた殺し屋労働組合員である。
殺し方は依頼人の髪の毛を切り呪いの髪人形を作り呪い殺す手法。
戸小谷さんは髪を切るまでしか記憶がないらしく、殺しはもう一つの人格がやってると言う。
戸小谷さん曰く黒魔術を使うらしい。
俺は彼女を戸小谷 ”オモテ”と”ウラ”で分けて呼んでいる。
戸小谷ウラ。彼女が殺し担当でなぜか黒魔術が使える。
その理由は誰もその謎を知らない。
戸小谷ウラの性格はドSで攻撃的、口が悪く、気性が荒い。
一度ウラに豹変すると誰も手をつけられなくなるほど暴力的なる。
ウラは本月 愛とウマが合うようで、
よく2人でハチャメチャなことをしでかす。
組合の連中は彼女達を“マッド ラバーズ”と呼んでいて、理事長も世話を焼いているほど。
過去にマッドラバーズは組合の本部を半壊させる騒動を起こしていて、殺し屋労働組合新聞の夕刊の一面を飾ったこともある極めて危険なコンビだ。
「と、ところでなんでしょう? わ、私すぐ戻らないと。また店長に怒られて……」
「そうだ。緊急事態なんだ! 戸小谷さんと本月にしか頼めそうになくて」
「本月さんと私ですか?」
「そうなんだよ」
「私なんか何の役にも立ちませんよ」
「立つんよ!俺ほら”仕事”でミスしちまってさ」
「四つ星さん確かシェフさんでしたよね。なんかあったんですか?」
「いやぁそっちじゃなくてさ。殺しの依頼でターゲットを取り逃がしちまったんだよ」
「えっあっ……四つ星さんがですか?」
流石の戸小谷さんも驚いた様子だ。
「そうなんだよ。正直もう何が何やらで……」
「なるほど、それは大変ですね。死んじゃうんですね。ご愁傷様です」
「勝手に殺さないで。まだ死んでないし」
「す、すいません。ということは余命もあと1カ月以内なのですね。私の”彼女”も死者は生き返せないと思いますよ。もっとも、ゾンビにならできなくもなさそうですが」
「なるほどその手もあったか。それはそれで最終手段に取っておこう。ゾンビレストランも案外流行るかもな」
「冗談ですよ私”彼女”について何も知らないので」
「軽はずみで人の命をもて遊ぶなー!」
「すっすっすいません」
「ああこっちこそごめん。まだ本月のツッコみ後遺症が残ってた」
「ところで私は何をすればいいのですか?」
「そうだった。ターゲットを探すのを手伝って欲しいんだ」
「わかりました……私でよければ」
「本当?」
「はい。私結構暇してますし……」
「心強いよ!ありがとう!」
「それはいつ頃の依頼だったのですか?」
「それが昨日なんだ……」
「ということはあと余命は29日ですね。急がないとですね」
「そうなんだよ。それですごい自己中で申し訳ないだけど今夜0時に沼の底3丁目のファミレス来れる?」
「あ、はい。だっ大丈夫です」
「よかった。ありがとう」
正直、生意気小学生と静かな女の子の2人しか頼める人がいない俺もどうかと思うんだが、それは置いとくとして。
そう思っていると電話が鳴る。
ーープルルルルーー
「あっ店長からです。私もう戻らないと」
「ごめんね急に悪かったね。じゃぁまたあとで」
「はい」
戸小谷さんは以前より少し積極的に感じた。
まあなにはともあれこれでなんとかスタートラインには立てた。
あとはターゲットを捕まえるだけ。
2人が協力してくれたことにより少し肩の力が抜けたそんな感じがした。




