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第二十話 ヨソウガイデス

「クソッ! ここも行き止まりか!」

「これで最後だよね……」

「違う階層へ行けるのは下りの階段のみか」

「誘われてるわね……」

「なんだってまた……」


 だいぶ手の内見せちゃったしね。

 一生このダンジョンから出さないぞっ。

 まぁ後せいぜい一日か二日程度だろうけど。


「進むしか、ないのか」

「ああ、もう様子見とか言わず攻略しちまおうぜ」

「他に手段もなさそうだしねぇ」


 覚悟を決めた四人は階段を降りていった。


「ん、トラップだな。解除するから少し待ってくれ」

「またか、多いな」

「それも殺意が高い」


 上級冒険者の名に恥じず、彼らの実力は本物のようだ。

 ちょくちょくトラップを仕掛てはいるのだが全て解除されてしまった。


「ふんっ!」

「ウィンドアロー!」


 ゴブリンアサシンやオークアーチャーからの不意打ちも効かず、それどころか潜伏しているところを先攻され撃破されてしまう。

 なかなかめんどくさい奴らだな。


「オーガのパーティー以外はそこまででもなかったな」

「もしかしたらボスだったのかもしれないわね」

「あー、フィールドを徘徊しているタイプか」

「それならあの強さも納得だね」


 いえ、彼らは割りと普通のモンスターです。

 普段は最下層で出しているモンスターをちょっと移動させただけで。

 あの感じだと彼らは二十階層あたりが適正なのかね。

 尤も、甘く見てろくに準備もしてないみたいだから二十階層でも苦戦するだろうけど。


「ふぅ……、この階段を降りれば十五階層だよね」

「ああ、流石に少し疲れてきたな。それにモンスターも少し強くなってきた」

「でもその分宝箱は結構いいのがあるね」

「だな、こんな若いダンジョンでミスリルのショートソードが出るとは思わなかったぜ」

「ポーションもそこそこ出てるしねぇ」

「これだけたくさん宝箱が出るのなら、コアを破壊するのは少し惜しいな」

「仕方ないさ、仕事だもの」


 彼らの歩みを早く進めるため、大盤振る舞いとなっているのだが初めてこのダンジョンに来た彼らは気づいていない。

 普通は深層へ進む際は一気に進まず少しずつ慣らしていくものだ。

 その用心深さが冒険者の怖さでもあるのだが、ありがたいことに彼らにはそのようなものはないらしい。

 単純に運がいいと思っているのだろうか。

 それとも後背が絶たれ、少しでも前向きに考えようとした結果なのかね。


「帰れるかな……」

「……、最悪復活の首飾りがある」

「まぁそうだけどね」

「敵のアイテムにすがるってのは癪だけどしゃーねーか……」

「背に腹は代えられないものね」


 ランタンを床において彼らは休憩を始めた。

 そうだね、長期戦となるダンジョン攻略では休憩も大事だもんね。

 じっくり休んでくれたまえ。


◆◆◆

◆◆


「もうムリ、限界だ!」


 なんだかんだ彼らは健闘し、ダンジョンに潜り始めてから半日が経過していた。

 意識を張り詰めた状態で半日行動するなんて、想像以上に消耗するはずなのだが……。

 アイテムや魔法をやりくりしながら彼らは攻略を進め、二十階層まで到着してしまっていた。


 俺も拘束されるから、はやいところギブアップしてほしいんだが。

 と、思っていると願いが通じたのかとうとう彼らは限界を迎えたらしい。

 ブリッツが床に大の字に寝転がってしまった。


「ここまで、か。それじゃアレを装備するとしますかね」

「ああ、首飾りを出してくれ」

「うん? ルーシー?」

「え?」


 慌てて首飾りを探し始めた四人。

 ……、あれ、気がついてない?

 さっきの戦闘中にオーガシーフに首飾り回収してもらったんだけど。

 お陰であっさり退場となってしまったオーガシーフには申し訳ないことをしたな。

 後で差し入れ持っていっとこ。


「「「「……、無い……?」」」」


 その後の罵り合いは見るに耐えないものだったので割愛させてもらう。

 とりあえず愚か者が一人減ったとだけ書かせてもらおう。


 うん、まぁなんかもういいかな。

 十分サンプルは取れたし、竜牙さんが暇してるから送ってあげるとするか。


 そんなわけで落とし穴でとりあえず底層までご案内ーっと。


 ガコンッ


「ん? 何か音が?」

「「「うわあああああ!?」」」


 グシャッ


 一瞬で彼らはダンジョンの染みとなって消えた。

 え、うそ、まじで?

 ……、よく考えなくても二十メートルくらいの高さから紐無しバンジーすれば当たり前か。

 やっちまった感がひどいわ、俺も疲れてたのかね。

 っ……。

 なんかクラクラする、それに少し気持ち悪い……。

 少し風にあたってこよう。


 そう思いながら俺は事務所から表に出たのだった。



「とんでもないやつがいるぞ!!」

「いきなり斬りかかってきやがった!!」


 ……、ダンジョンの入口では先程染みになった連中の話で持ちきりだった。

 そりゃそうだよな。

 モンスターより余程質が悪い。

 まったく、これもヤツの狙いだったのかね。

 考えすぎか。


「お話伺わせてもらってもよろしいですか?」

「あんたは……?」

「ダンジョンの管理をしておりますレオポルト・フォン・ミューゼルと申します」

「っ! お貴族様でしたか、失礼しました……」

「いえ、お構いなく。それで何があったか話を伺いたいのですが」

「……、何がも何もねーですよ。見覚えのない冒険者がダンジョン内でいきなり斬りかかってきたんでさ」

「それは、ひどいですね……」

「静止も聞かず一方的にやられちまったんですよ」

「わかりました、特徴を教えて下さい。犯罪者として指名手配しますので」


 まぁもう死んでるんだけどね。


 しばらくの間、冒険者狩りをする冒険者が居ると話題になっていたがそれもすぐに消えていった。

 被害者も痛い思いをしたとはいえ、失ったアイテムはモンスターが拾ってきてくれていたのですぐに忘れたようだった。



「あの、レオ君。ちょっと驚かすにしても趣味が悪いですよ?」

「あ……、ごめんなさい! そんなつもりはなかったんです!」


 俺は竜牙さんに平謝りするのだった。


◆◆◆

◆◆


 上級冒険者達を隔離するためにダンジョンを拡張した訳だが、歓迎会の会場を作った際に思わぬ拾い物があった。

 新しいダンジョンコアである。

 どうやら少し離れたところにもダンジョンがあったらしく、たまたま今回の拡張エリアとかぶっていたのだ。


「棚から牡丹餅とはまさにこの事」

「レオ君は運がいいですね」


 ほんとにな。

 新しいダンジョンコアに触れてマスター登録を行う。

 これで今事務所においているダンジョンコアが破壊されても死ぬことはない。

 残機が一つ増えたのは素直に嬉しい。


 ん?

 頭の中に新しい知識が追加される感じがする。

 これは、おお……。

 すごいな。

 同じダンジョンマスターが持つダンジョンコアの周辺にはそれぞれを繋げるゲートが作れるらしい。

 百万DPと少々お高いのがネックだし、こんな近距離つなげても意味は無いけど。


「いや、まてよ。確かモブキャラクター家も昔ダンジョンを運営していたって話だったよな」


 どこにあるかは分からないがそこと繋げるのはありなんじゃないだろうか。

 一応対外的な説明では同じモンスターがボスをしているダンジョン同士はつなげることができるってことにしておけばいいし。



「ってことでさ、どうもダンジョン同士をつなげるワープゲートが作れるっぽいんだわ」

「ほっほー、そらすごいやん」

「だろ? それでさ、モブキャラクター家のダンジョンと繋げたいと思ってるんだけど、どの辺にあるかわかる?」

「んー、確かヒノキノボウの近くと東方辺境伯領へ向かう鉱山の近くにあったはずやで」


 ベル曰く鉱山への道は途中険しく、交通の便がかなり悪いらしい。

 ふむふむ。

 鉱山の近くというのはいいな。

 途中の宿場町に被害が出てしまうとあまりよろしくないが、そういうこともなさそうだし。


「ちょっとヒザヤ閣下に相談してみるか」

「多分喜ぶんちゃう? 道が険しすぎて直接鉱物を運べないって前愚痴ってた気がするし」


 竜牙さんを連れてヒザヤ閣下の元を訪れた俺はワープゲートのことを説明した。


「レオ君! それは本当ですか!?」

「え、ええ。尤も、ダンジョンを突破する必要がありますけど」

「当家も全力で支援しましょう!」

「え、あ、はい……?」


 想定外の食いつきっぷりに少し引いてしまう。


「これであの豚野郎げふんげふん、ラーダス男爵の領地を経由しなくても鉱物が運べます!」

「なるほど……。ただダンジョンの管理はお願いしたいのですが」

「任せてください。誰にも邪魔はさせません!」


 閣下の全力の支援もあり、俺達はあっさりと二つのダンジョンを攻略に成功した。

 といっても、モンスター達は竜牙さんを恐れて全く手を出してこなかったので散歩に近いものだったのだが。


 本当はコアを移動させて安全な場所に隠したいが、位置が完全に割れているから出来ないのが痛い。

 コアは実は移動できますなんてバレたら大変だしね。


 ともあれ、これで俺の残機は一応四つとなったし、遠くから冒険者を呼ぶことも可能になった。

 DPはすっからかんになったけどな!


「これで冒険者が増えればすぐに取り戻せますよ」

「だといいんですけど」


 もうすぐ春だし、冒険者減るだろうしなぁ。


◆◆◆

◆◆


 なんて考えていた俺は甘かったのだろう。

 一応冒険者カードか許可書がなければ通れない様にして通行制限はかけていたのだが、予想を遥かに超えて冒険者が爆増したのだ。


「すごいね……」

「です……」


 ワープゲート開通後、春になっても冒険者の数は減らなかった。

 慌てて周囲の森を開墾して宿屋を増設しているが全く追いつかない。


「冒険者だけで千人近く居るね、これ」

「だなぁ」


 アル達と外を眺めると活気に溢れた通りが目に入る。

 ダンジョンの前は既に村どころかちょっとした町になっていた。

 お陰でDPがガッポガッポだ。

 ワープゲートの通行料も入ってくるしもうこれ放置でもいいんじゃないかな。

 これだけ盛況なら両親もダンジョンの運営に失敗したとはいえないし、この調子なら後十年もしない内に元の世界へのゲートが開けるのではなかろうか。


「これからも頼むよ、ボス?」

「ん、ああ、そうだな」


 ……、正直もうそこまで戻りたいって気分もなくなってきてはいるんだよね。

 なんせうまい飯、可愛い婚約者、そして仲間。

 これらを捨ててまで戻るというのもなぁと少し感じてきている。

 ま、取らぬ狸の皮算用もあれだし、DPが溜まってから考えるとするかな。


 とりあえずの急務はダンジョンの拡張とバックアップ体制の強化だ。

 入った傍からDPが消えていくことに思うことがないでもないが、これも必要なことだと割り切る。


 事務所も当初より大幅に拡張し猛スピードで冒険者達を捌いているのだがそれでも午前中は常に行列ができていた。

 レベルごとで受付を変えたのだが、それによりさらに競争が過熱。

 日を追うごとに行列は長くなっていった。


 商店も商品を置いた傍から無くなっていき品切れが状態化している。

 ゲバーの悲鳴が時折聞こえるが、きっと嬉しい悲鳴に違いない。

 たぶん、きっと。

お読みいただきありがとうございます。

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