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第52章 霊者の姉妹

剣の気勢 は一転 し、凄まじく なった。

九幽の寒気 がどこから来た のか考える 暇もなく、俺の体 は真力 を纏い、彩色 の蛍光 を放った。

暗闇 の中 でひときわ 目立ち、谷の上 の彩陽 は剣 を握り、石柱 に掴まって 注視して いた。


もし 俺 に異変 があれば、即座 に号令 をかけ、乱れ矢 で獣人 を殲滅 するつもり だった。

彼女 はこのスケベ将軍 があの嫌な狐女 に約束 したこと を知って いたが、ただ 彼 の安全 を願って いた。

あるいは この時、彼女自身 も気づいて いなかった――真心 の種 が芽吹き つつあった ことを。


冷気 が周囲 で渦巻き、寒気 の斬刀 が骨 を刺す ような 狂気 で振るわれ、俺 を馬 から叩き落とそう として いた。

不悦 が募り、手 を空 に伸ばせ ば、五大元素 の玄力 が水晶 のように 透き通った 月の球 の気体 を形作り、半空 に浮かんだ。

その気勢 は凛然 として いた。


眼前 の獣人 だけでなく、常 に近く にいる女性衛兵 でさえ も圧倒 された――

普段 はスケベ な大将軍 が、今 は戦神 のように 威風堂々 と夜空 に立ち、大地 を支配する神 のように 見えた。


猛虎兵団 の男性兵士 は興奮 と感動 で震えた――この力、この無敵 の気勢 が彼ら の神聖 な崇拝 の的 だった。

特に 石涯 と氷川山頂し は一般 の兵士 ではなく、俺の身 に感じる 天地 にも 匹敵するエネルギー を感じ取り、愚直 なほど の忠誠 を誓った――未来 の歳月 に彼ら は最も 信頼 する部下 になった。


「カチン、カチン」 と数度 の音 が響く と、俺の心 に激しい高揚 が生まれた。

靈柔い狐(れいやわいこ) の神秘 な気 を取り込んで から練り上げた創神 の力 は発散 の場 を失って いたが、今 こそ 完全 に解放 する機会 が来た。

手 に込める力 を徐々 に強め、雪のように冷たい長刀 を左右 に追い詰めた。


「副将――霊者 を護って 突破 せよ! 私 がこの男 を引き受ける 」


もちろん 獣語 で言って いたので、意味 はよく分からなかった。

しかしその言葉 の後、獣人 の隊列 が変わり、突破 の気配 がある ことが 分かった。

まずい――もし獣人 が死 を選べ ば、靈柔い狐 に対する 約束 が果たせない。


動き を速め、遊び心 を捨て、鋭い一撃 を獣人首領 の胸 に叩き込んだ。

「バキッ」 という音 と共に、黒い血 が口 から溢れ、胸骨 が何本 か折れた ことが 分かった。


しかし獣人 の凶暴さ は伊達 ではなかった――幽かな寒気 を帯びた斬刀 は少し も鈍らず、命 を顧みない 打ち方 で俺 を斬ろう とした。

これ に俺 は本気 で腹 が立った。


身形 を三丈 も上げ、獣人 に向かって 叫んだ。


「言われたとおりにしろ! 」


十八の龍撃掌 が再び 雷鳴 の如く 轟いた。

獣人 はあまりに 空気 を読めなさすぎる。

舞い上がる土煙 とともに、悲惨 な叫び声 が響き、獣人首領 は馬上 から叩き落とされた。

あの大きな黒い馬 も手の力 で裂け、血塊 になった。


彼女 は数人 の護衛 に担がれ、獣人軍 の中 に消えた。

俺 は彩陽 のそば に戻り、高い場所 から谷全体 を見下ろした。

退却 しようとする獣人 は谷 の出口 で猛虎兵団 と激しく 戦っていた。

このまま では 血祭り になる ことは 避けられない。


「全員 やめなさい! 」


彩陽 が心配 そうに 俺の背後 に寄り添った とき、谷間 に柔らかい声 が響いた。

夜の精霊 のよう に美しく、優しい魅力 に満ちて いた――今まで聞いた 中で 最も 上品 な声 かもしれない。


声 は大きくはなかった が、遠く まで届いた。

振り返る と、数人 の女衛 に守られた可憐な影 がゆっくり と歩み寄ってきた――

俺 に奪われ、疲れ果てて 眠っていたはずの 靈柔い狐 だった。

彼女 は光る小布靴 を履き、小さく 歩いて 近づいてきた。


その一声 で、獣人軍 は子供 のように 怒り を収め、天湖市 の女性兵士 と対峙 しながら 集まった。

靈柔い狐 には 彼女たち の心 を鎮める 不思議 な力 がある ようだった。


俺 も感じた――今 の靈柔い狐 はさっき まで愛し合って いた彼女 とは 違って いた。

しかし俺 に対する 深い愛情 は変わらず、そば に来る と静かに 言った。


「主人――靈柔い狐(れいやわいこ) は遅くなりました。妹 を説得 してみます 」


すぐに、密集 した獣人軍 の中 から淡い青い影 が現れ、数十 の凶暴 な獣人 に守られて 前に出てきた。

今 まで靈嬌狐 が見えなかった のは、薄い青 の鎧 を着て 大柄 な獣人 の中 に隠れて いたから だった。


「お姉さん――いる のだね! 怖がらないで! 私 が助けに 来た よ! 」


血の繋がり がこの姉妹花 に最も 親しい温もり をもたらし、靈嬌狐(れいきょうこ) は危機 を忘れ、駆け寄ろう とした。

しかし獣人将 に止められた。


靈柔い狐 は崖端 に立ち、聖なる 妖艶 な微笑み を浮かべ て妹 を見つめた。

その血 を分けた妹 に慈愛 を注ぎ、強大 な神力 で霊者 の九世 の記憶 が開かれた とき、彼女 は知った――かつて の世界 は別 の姿 だった ことを。


彼女 は理解 していた――これ は時空 の逆転 の兆し であり、豊豊ちゃり大陸 が彼 のために、主人 のために 根本的 に変わる ことを。

九世 の霊祖 は予言 した――博愛 の男 が豊豊ちゃり大陸 に生まれた とき、万人 が帰属 する王者 が現れた ことになる と。

霊者 も彼 の帰属 の一員 となり、後世 の子孫 は必ず 肝に銘じよ、と。


すべて は因縁 だった。

彼女 は無意識 のうち に生命 の神秘 を悟り、自分の霊力 の再生 はこの主人 に対する愛 から生まれた ことを 知った。

彼 が誰 であろう と、どこ へ向かおう と、彼 の足跡 を追えば、本当 の人生 を見つけられる と。


「各部隊 に命じる――即座 に死 の攻撃 を開始 せよ!

靈柔姫様 を救出 せよ! 止まるな! 」


目の前 の敵 に怒り を燃やし、靈嬌狐 は大馬 に飛び乗り、大声 で命じた。

その時、俺 は初めて 知った――靈柔い狐 が獣人部落 の最も 尊貴 な公主 だった ことを。


靈柔い狐 は驚いた――妹 の性格 は知って いた。いつも 大胆不敵 で、彼女 と同じ 天生 の霊者 である が武芸 も並々ならず、獣人部落 では 珍しい 剣士の達人 だった。

もし 命知らず の攻撃 を仕掛ければ、生存 の可能性 はない。

この主人 に対し ては、この世 で彼 の関 を越えられる者 はいない と信じて いた。


靈柔い狐 は手 を振り、妹 の叫び を制した。

その声 は月光 のように 清らか で、四季 の艶 を融合 したよう に妖艶 であり、誰 も抵抗 できなかった。


「妹よ――私 は真主 を見つけた。私たち の帰属 と使命 を。

兵士たち の剣 を下ろし、主人 のもと に来なさい。それが お前 の選ぶべき未来 だ 」


その目 は火光 の中 で日月 のよう に輝き、靈嬌狐 は震えた――姉 が敵 に呪文 をかけられた と思った。


しかし姉 の目 を見つめる と、九世 の霊者 の記憶 が一気 に脳裏 に流れ込んだ。

靈柔い狐 が見たもの はすべて 見えた――これ が霊者 の心 の通い だった。

まして この二人 は双子 であり、二体一心、思 いが 通じ合う。


獣人 の保護 を離れ、靈嬌狐 は一歩一歩 前に進み、靈柔い狐 も一歩一歩 下りていった。

誰も 動かず、俺 でさえ この小女 が何 を企んで いるのか 分からなかった。

しかし獣人部隊 はすべて 包囲されて おり逃げる ことは できない。

俺 は彩陽 に合図 し、成り行き を見守る ことにした。


「お姉さん――あれ は本当 なの? 」


その目 には 殺戮と は異なる 強い興奮と渇望 が浮かんで いた――それが 霊者 の天命 であり、霊者 の生涯 の追い求め だった。

九百年 が過ぎ、九世 の記憶 が一代 に封じられ てきた が、この二人 の身 に至って、すべて が明らか になった――生命 の意味 はこんなに 単純 だった。


「そう よ――これ が私 の運命。主人 はここ にいる。

お前 は天命 に逆らう のか? 何千 もの民 に逆らう のか? 」


靈柔い狐 は信じて いた――どんな霊者 も主人 の正体 を知れば、真心 を捧げ、命 を捧げ、彼 のために 尽くし、すべて を捨てる と。


俺の姿 は夜風 の中 で神聖 な彫像 のよう に動かず、靈嬌狐 がその姿 を見た とき、抵抗 の勇気 を失った。

これ が天命 であり、霊者 の使命――この男 が彼女たち が生涯 をかけて 追う 聖主 だった。


「全員 武器 を捨てよ! 聖主 と共に あらん ことを! 聖主 に万歳 あれ! 」


意味 はよく分からなかった が、靈嬌狐 が振り返って 獣人 に向かって 叫ぶ と、姉妹 は手 を取り合い、獣人 は感動 して 何か を叫び始めた。


獣人 が武器 を捨てる のを見て、俺 は彩陽 に捕虜 の収容 を命じた。

霊者姉妹 は獣人 の公主 なのだから、彼女たち に従わせる ことができる。

姉妹 は手 を取り 合い、崖上 の俺 に向かって 歩いて きた――靈柔い狐 が先導 し、衛兵 は誰 も止めなかった。


「妹よ――これ が主人 だ。早く 拝謁 しなさい 」


靈柔い狐 が言う と、靈嬌狐 は本当 に恭しく 跪き、うつむいて 静かに 言った。


「靈嬌狐、主人 に拝謁 いたします。靈嬌狐 の無礼 をお許し ください 」


これは どういうこと だった のか――俺 は理解 できなかった。

獣人首領 を打ちのめし、大いに 威風 を示した が、彼女たち は降伏 しなかった。

しかし靈柔い狐 がよく分からないこと を言って、彼女 と同じ くらい美しい小女 を俺の女奴隷 にしてしまった。


俺 が口 を開く よりも 早く、彩陽 が口 を尖らせ て尋ねた。


「お前 は誰 だ? 私たち の狼将軍 がいつ お前の主人 になった のか?

狐っぽい 媚び を売って、将軍 に美人計 を使う つもりか? 」


汗 が出た――この小女 はあまりに 直接的 だった。

靈柔い狐 が使った のは 正に 美人計 だった が、雲国帝国 や俺の女 を傷つけなければ、誘惑 されても 構わない。

しかし彩陽 がこのスケベ将軍 にますます 関心 を持つ のは嬉しい ことだ。

彼女 が越権 しても、俺 は一切 責める つもりはなかった。



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