第21章 結婚の条件
「女皇陛下、御到着——!」
外間 から女官 の高らかな声 が響いた。
俺 と三女 はその 濃厚な情愛 に満ちた 雰囲気 に浸っていた ところだった。
その声 に驚かされ、素早春香 ははっと 我に返った。
――そうだ、どうして 私も あの 耐え難い情海 に落ちてしまった のだろう?
この男 は本当に 私の人生 で待ち望んでいた 唯一の男 なのだろうか?
だが今、どうすればいい のだ?
何と言っても 高貴で 傲慢な 花月都統 が彼に 深い愛 を注ぎ、小姫君 も彼に 刻骨銘心 の想い を抱いている。
私 がここで 自分の居場所 を確保できる だろうか?
そう思うと、素早春香 は心の中で ため息した――もういい。
もし天が 私に 愛する男と 一緒に生きる ことを許さない のなら、潔く 諦めよう。
この時、彼女自身 も知らなかった――いつ の間に 私 が彼女の 最も愛する男 になっていた かを。
ただ 俺 はすでに 決心 していた。
どんな 障害 が立ちはだかろうと、それを 必ず 打ち砕く と。
俺の女たち にはこの一生 幸せに 生きてもらう。
彼女たちが 望むなら、後は 俺 がやる。
好戦的な性格 は変わらず、前世 の戦狼の伝説 を今生 で再び 燃え上がらせる つもりだ。
三人の 緊張した女 を見て、俺 は心の底 から湧き上がる 愛 を感じた。
その時、尋ねた。
「お前たち――教えてくれ。
俺と 一生 添い遂げる 覚悟 はあるか?
もし 嫌なら、無理には しない 」
愛する者 には自分で 選ばせる。
無理やり もぎ取った果実 は甘くない。
俺を愛さない女 をそばに置いても 俺 は幸せになれない。
だから 今、彼女たちに 自分の未来 を選ばせよう と思った。
「岡見旦那! 愛してる! 愛してるよ! ううう……! 」
小姫君・柔伊 は焦って 泣きそう になり、声 は嗚咽 し、絶えず 首を振った。
耐え難く、悲しげ だった。
「岡見――花月は この人生 あなたのために 生きる。
もし いつか 誰かの腕の中 に倒れる なら、その人は あなた だ。
一生 を共にするか などと聞かないでくれ――その期限 は足りない。
私は あなたと 生生世世 を共にしたい 」
花月 は情に動かされ、女皇 が来た後 にすべて が決まる と知っていた。
彼女の希望 は生死 の間 で揺れていた が、心の感覚 を最も 真摯に 表した。
「美しい妖精――あなたは? 」
その 美しく 羞恥に 染まる美人 を見て、俺 はもちろん 逃さなかった。
その 清らかな瞳 を見るだけで、俺 は魅了されずに はいられない。
天 がこう 計らった のなら、その好意 を無駄にする わけにはいかない。
俺・戦狼 の心 には、美人 は絶対に 逃がさない と決めている。
「私……私……
もし あなたが 本当に 私を愛してくれるなら、私も…… 喜んで 」
素早春香 はかつて 思ったこと もなかった――
堂堂たる宮廷御医 が、一人の男 にこんな 情話 を語る とは。
彼女は 彼の女 になりたい と言った――本当に 恥ずかしく、淫ら なこと だ。
「ガチャン」
扉 が開け放たれ、女皇・雲ここ が非常に 焦った様子 で入ってきた。
三女 はそれを見て、ひざまずいた。
「女皇陛下に拝謁いたします。陛下のご聖安を 」
「母上…… 」
柔伊 も礼 をした。
しかし 参拝される 雲ここ はそれに 構う余裕 はなかった。
その 澄んだ鳳目 はきつく そばに立つ 邪悪に笑う男 に注がれていた――それが 俺 だ。
俺 も女皇の 熱い視線 を感じ、見返した。
心の底 から湧き上がる 感謝の気持ち がその視線 を通じて 伝わった。
彼女の心配 も俺 は深く 感じ取っていた。
「女皇陛下――ご心配 ありがとうございます。
もう 大丈夫です 」
その瞳 の意味深な問い を俺 は見逃さなかった。
その心配 に報いる ためにも、敬意 を払う のは当然 だ。
何しろ この美しい女皇 は俺の 姑 だ。
くそっ、この年齢差 はおかしい だろう――こんなに 若い姑 がいる か?
俺 が無事 だと分かると、女皇 の灼熱の目 が次第に 静まり、深く冷たく なり、
その顔 の焦り も消え去った。
彼女 は振り返り、三女 に向かって 言った。
「立て。堅苦しくするな 」
素早春香 と柔伊 が立ち上がった。
柔伊 は跳ね上がり、雲ここ の胸 に飛び込んだ。
「母上! やっと来たね!
昨夜は どうして 手伝いに 来なかったの?
すごく 痛かったんだから! 」
小姫君・柔伊 は幸福そうに、昨夜の春情 を女皇の前 で平然と 口にした。
俺 は心の中で 肝を冷やした。
この 馬鹿な小娘――バカすぎる。
こんなこと を人の前 で話す なんて!
女皇 も心を動かされた が、大きな表情 は見せなかった。
ただその目尻 に浮かぶ 羞恥と厳しさ が混ざった光 を俺 ははっきりと 見た。
彼女は もう 知っている ようだった――この小娘・柔伊 が本当に 俺の女 になった と。
地面 にひざまずいたまま の花月 は幸福 であった が、
それと同時に 引き裂かれるような 心痛 を感じていた。
幸福と傷 が混ざり合い、彼女の心 は揺れ動いていた。
だが今 の彼女 は大きな勇気 を持っていた。
今回こそ 自分の心 に向き合い、誰にも 屈しない と決めていた。
「陛下――花月は 自らの罪 を重く 感じております。
この男を愛したこと は確かに 罪 です。
しかし 今 この瞬間、もし陛下が もう一度 問われても、
臣は 同じ答え を申し上げます――
花月は この男を 愛しています。この一生 他の男を 好きになることは ありません 」
この 情熱の言葉 を言い終えると、彼女の心 はいくぶんか 解放された。
振り返って 俺 を見つめ、後悔 はなかった。
その瞬間、大厅 は静まり返った。
女皇 も口を開かず、どう言葉 をかければいい のか分からなかった。
ただ小姫君 が女皇の耳元 でささやいた。
「母上――今 私たち三人 はみんな この男のもの なんだよ。
素早おばさん も昨夜 そうなったんだ 」
女皇・雲ここ の心 はさらに 大きく 揺れた。
彼女 はその 呆然とした表情 の素早医生 に目を向けた。
この いつも 世俗を避けて 暮らす 医仙子 でさえ、あの見知らぬ男の情網 に落ちた とは。
彼は いったい 何者 なのか?
どうして 私の心 の動揺 もかき立てる のか?
私も 常に 彼に 魅了されて いるではないか。
「女皇陛下――素早春香は かつて 陛下に 何かを乞うたこと はありません。
ただ 今回だけは お願いします――花月妹さん をお許しください。
この男を愛したこと は彼女の過ち ではありません。
それは どの女にも 抗えない こと です 」
素早春香 はついに 口を開いた。
いつもは 名利に淡泊 で、宮中に こもり、医术の研究 に没頭 し、世事 に関わらなかった が、
今回 は特別に 口を開いた。
「そうか? では 素早医生自身 もその中 に墜ちた というのか? 」
女皇 は奇妙な口調 で尋ねた。
それが 人に 受け入れがたい ことだと は分かっていながら、
それが 事実 だった。
その瞬間、素早春香 もいくぶんか 耐え難さ を感じ、声 が震えた。
「はい、女皇――香春も 昨夜 その男を 愛してしまいました。
もう 抜け出せません 」
情愛の絡み合い がこの仙子 をも 耐え難く させたが、
彼女も その渇望 を超えられなかった。
今、女皇の問い に答え、最も真実の心 を俺 の前に 示した。
「ははは……よし、よし! 実に 結構だ!
一晩で、三日で、この男が お前たちの魂 を奪い去った!
その無上の権勢 も無駄 になった――
一人の男の誘惑 に抗えず、堂堂たる雲国の国体 が一人の男 より重要ではない というのか? 」
それは 狂気の笑い に近かった。
女皇・雲ここ も非常に 耐え難かった。
彼女の心 にも 一つの夢 があった が、それは 決して 叶わない夢 だった。
なぜなら彼女は女皇 であり、目の前の女将や神医 のように 自分の愛する人 を勝ち取る ことはできなかった。
「陛下――臣は 過ちを 認めます。
もし陛下が 戒め のために 罰せられる のなら、
臣 がすべて を背負います。決して 怨みは 持ちません 」
女皇 の耐え難さ を見て、花月 は女皇の心 が激しい怒り の前兆 だと知った。
すぐに 言った――自分に何があっても、愛する人が 無事なら それでいい と。
「陛下――どうか 私を 罰してください。
香春は ずっと 潜修 し、医术 を研鑽 してまいりました。
それなのに 情関を 超えられず、愛しては いけない男 を愛して しまいました。
本当に 罪は 重い です。
どうか 陛下の怒り を私が 受け止めます――陛下 どうか ご自分を愛して ください 」
素早春香 もそれが 激怒の前兆 だと分かり、一度爆発すれば 極刑 が下される と知っていた。
彼女も あの男 に何か あってはならない と思った。
「母上――そんな風に しないで。
柔伊も この男を 心から 愛してる の。
どうか お許しを――二人のおばちゃんを責めないで。
柔伊は 二人のおばちゃんと この男を 分かち合っても 構わない から 」
柔伊 はさらに 耐え難そう に、最後に 「分かち合う」 という言葉 まで口にした。
「分かち合う? 柔伊、お前……! 」
女皇 は本当に 驚いた。娘の言葉 は彼女の理解 を超えていた。
男 というもの は何なのか――彼女たちは それを 分かち合おう としている のか?
「陛下――私たちも 喜んで 」
素早春香 と花月 も同意 した。
彼女たちは この男を愛し、一緒にいられれば それで十分 だった。
他のこと はどうでもよかった。
「女皇陛下――俺・岡見も 誓う。
この一生 必ず 彼女たちを 愛する と。
どうか 責めないで ほしい。
男性が二人の女性と結婚することはできないと決めつけてはいけない。
何事にも 初めて がある。新たな始まり がある。
豊豊ちゃり大陸 の変革 は俺・岡見 から始める 」
それは 懇願 ではなかった。
俺 は誰かに 懇願 するつもりはない。ただ 女皇・雲ここ と協議 している だけだ。
「お前は――自分に できると 思っているのか? 」
女皇 の怒り はさらに 募った。
「よし――そんな 壮大な目標 を掲げる なら、機会 を与えよう。
雲国 は今、存亡の危機 にある。
四鳳将・清凰 は敗れ、赤電帝国 の何十万の大軍 が清字鳳軍団 を突破 した。
私は すでに 純凰 に兵を率いさせて 迎撃 させた…… 」
女皇 の言葉 が終わらない うちに、俺 は口を挟んだ。
俺 は知っている――純凰 の軍 はせいぜい 五、六万 だ。
急ごしらえ で十万 に増やしても、何十万の大軍 に立ち向かう のは無理 だ。
「女皇は 俺に 赤電帝国の軍 を撃退させよう としているのか? 」
俺 はすぐに 尋ねた。
「赤電軍団 を撃退する ことも 緊急 だが、今 最も 緊急な のは別のこと だ。
昨夜 純凰 が出発 すると同時に、雲音皇姐 が全軍 を動かした。
今 柔城 に向かっている。
お前に 頼みたい のは――その軍 を何とか 食い止める ことだ。
四鳳将 の玉字兵団 と氷之兵団 にも 急使 を出した。一部の兵力 を回してもらう が、一週間 はかかる。
だから 今 は人材が 必要 だ。
もし お前が 雲音を 打ち負かせたら、お前の願い を叶えてやろう――
このクソ男 を豊豊ちゃり大陸 で初めて 複数の妻 を持てる男 にしてやる 」
女皇・雲ここ は今、どうしようもなかった。
これほど多くの女 がこの男を愛している のなら、彼にも いくぶんかの 腕前 がなければならない。
そうでなければ 見かけ倒し に終わる だろう。
俺 は軍旅の生活 を経験したこと はなかった し、兵を率いる 方法も 知らなかった。
だが現代人 の視点と戦略 を持って すれば、この古代の戦い に負ける とは思わなかった。
そうでなければ 戦狼 の称号 が無駄 になる。
「女皇陛下――お引き受けしよう。
柔城を 守ってみせる。
ただし 条件 がある――花月 を助手 にくれ。
そして 全城の兵士と馬 を自由に 動かせる 権限 をくれ 」
二頭の虎は一つの山を共有できない。二人の将軍は一つの軍隊を共有できない。
兵を率いる には 命令は 山の如く でなければならない。
だから その要求 を出さざるを得なかった。
「陛下――お許しください!
このクソ男 が全城の兵士と馬 を掌握 すれば、女皇の命令 を聞かなくなる かもしれません!
そうなれば 柔城 はさらに 危険 になります!
どうか ご賢明な ご判断 を――この男の言葉 を軽信 なさらないで ください 」
そばに侍っていた 一人の女官 がすぐに 前に進み出て、女皇 に進言 した。
彼女は 陰険で 計り知れない 内閣御史・青浮 だった。
禁衛軍副指揮官・荷蓮 の姉 でもある。
年齢 はさほど ではない が、全身 に陰柔な 暗黒の気 が満ち、一目 で不快 にさせる。
「よし――今 柔城 は危機 にある。
私は 人を使う には 疑わず、疑う なら使わない。
岡見――お前の要求 を認める。
お前を あなたを柔城幸将軍に任命します。
お前の幸運によって、柔城がこの危機を乗り越えられることを願っています。
花月 は都統 に復職 させ、幸将軍 を補佐 し、共に柔城 を守れ 」
女皇・雲ここ はその御史 を見向きもせず、手を振って 命じた。
全城の兵士と馬 を一人の見知らぬ男 の手 に委ねる とは――
雲ここ自身 も思わなかった。
彼女は 心の底 でこの男 を信じていた。理由 もなく、根拠 もなく。
まるで そばの娘 のように、彼女の目 には この男だけ が映っていた。
それは おそらく 彼女の心の奥底 に隠された 最も 密かな秘密 になる だろう。




