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青春短歌〜言葉にできない気持ちを、私たちは三十一文字にする〜  作者: 老川
一年生夏休み

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17/26

夏祭りの夜

 集合時間の少し前、私とひより先輩はロビーに来ていた。


「しずくちゃん、浴衣ばっちりだね」


 私が着ている浴衣はひより先輩から借りたものだ。なんでも母親の趣味らしく、着物や浴衣が何着も家にあるらしい。私が着ているのもその中の一つで、水仙の花が描かれたものだ。ひよりは向日葵の花が描かれた夏らしい浴衣を身にまとっている。明るいひよりの雰囲気とよく合っていて、とても似合って見えた。


「待たせたかな?」


 そこへ三上と藤原がやってきた。こちらも浴衣を身につけている。二人とも男性らしい落ち着いた色柄のものだ。


「いえ、時間ちょうどですよ」


「そうか。二人ともよく似合ってるな」


「ありがとうございます!哲平、こういうところ見習いなさいよ」


「うるさいな。…似合ってるよ」


「まあ、ありがと」


「ほら、じゃれあってないで、祭りに行くぞ」


 先頭を切って宿から表に出る三上を三人で追いかける。気のせいかみんな足取りが軽かった。


 浴衣を着ているのでいつもよりゆったりとしたペースだったが、十分も歩くと祭りの明かりが見えてきた。通りに沿って屋台が並んでいるようだ。


「あっ、もう始まってる!」


 そう言って走り出そうとしたひよりの手を藤原が掴んだ。


「浴衣を着てるし、人も多いんだからあんまりはしゃぎすぎるなよ」


「分かってるよ、心配性だなー」


 二人はそんなことを言いながらも仲良く先を歩いて行ってしまう。三上先輩と私は置いてけぼりをくらってしまった。


「まあ、二人で行かせてやるか…朝倉さんは何か見たい屋台はあるかい?俺で悪いけど、付き合うよ」


「…ありがとうございます。じゃあ、わたあめ食べたいです」


 三上にエスコートしてもらいながら、屋台を見て回る。小さな夏祭りだが、出店も色々と出ているし、人出もそれなりにあった。そんな中、無言に耐えきれず、つい気になったことを聞いてしまう。


「あの、三上先輩…」


「なんだ?」


「藤原先輩って、ひより先輩のことが好きなんですか?」


 三上は問いかけに対して一瞬眉をぴくりと動かすと、改めて顔をこちらに向けた。


「いつ気がついたんだ?」


「なんとなくそうかなって…さっきもひより先輩と一緒に行く藤原先輩、楽しそうな顔してましたし…」


 右手で軽く頭をかいてから三上が答えてくれた。


「まあ、そうなんだ。あいつ分かりやすいからな。あっ、でも…」


 そこで、わずかに真面目な表情をして三上が続けた。


「木暮には秘密だぞ。まだ本人にはバレてないらしいからな」


「分かりました。ひより先輩には内緒にしておきます」


 そのまま屋台を見て歩いていると、祭りの締めとなる花火の時間がやってきた。三上と並んで花火を見上げていると、少し離れた場所にひよりと藤原が立っていることに気づいた。


 二人はこちらに気づかずに静かに並んで花火を見上げていた。花火の打ち上がる音が響き、色とりどりの火花が夜空を照らす中、静かな二人の姿は絵になっていた。


 良い歌というものが少し分かった気がした。

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